法人の余剰資金で株式・投資信託を運用したときの税務
会社のお金で株式や投資信託を買うと、期末の評価や配当の課税が個人とは違います。売買目的有価証券の時価評価(評価益を益金に入れる)、売却損益の計上時期、配当の益金不算入、投資信託の分配金の扱いを説明します。
法人税法人が持つ株式や投資信託の税務は、取得した目的で分かれます。短期の値動きで稼ぐ目的で、その旨を帳簿に書いたものは売買目的有価証券として期末に時価で評価し、売っていなくても評価益が所得に入ります。
それ以外は期末も取得原価のままで、売ったときに損益が出ます。配当は、持株割合に応じて一部が益金に入りません。
法人の有価証券は、取得した日に「短期売買目的」と帳簿に書くかどうかで、期末の評価益に税金がかかるかが決まります。個人の株式投資のように「売るまで税金は出ない」とは限らない点が、いちばんの違いです。
売買目的有価証券と売買目的外有価証券
法人税法61条の3は、事業年度の終了時に持っている有価証券を、売買目的有価証券と売買目的外有価証券に分けて評価額を決めます。売買目的有価証券は、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した有価証券です。
範囲は施行令119条の12が定めています。余剰資金の運用で当てはまりやすいのは次の2つです。
- 短期売買目的で売買する取引に専ら従事する者が、その目的で取得したもの(専担者売買有価証券)。
- 取得した日に、短期売買目的で取得したものである旨を、財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載したもの。
このため、事業会社が余剰資金で買った株式や投資信託は、取得の日に「短期売買目的」と帳簿に書いていなければ、売買目的有価証券には当たりません。何も書かずに買えば、売買目的外有価証券として扱います。
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売買目的有価証券の期末時価評価
売買目的有価証券は、事業年度の終了時に時価法で評価します。評価益は益金に、評価損は損金に入れます(法人税法61条の3第2項)。売却していなくても、含み益に法人税がかかります。
時価は、銘柄ごとに「期末の価額 × 数量」で計算します(施行令119条の13)。上場株式なら、金融商品取引所が公表した事業年度終了の日の最終の売買価格です。
その日に売買がなければ最終の気配相場の価格を使います。それもなければ、直前で終了日に最も近い日の価格を基礎にした合理的な方法で計算します。
評価益や評価損は、翌事業年度に逆の処理で戻します。前の期に益金に入れた額は、翌期の損金に入れます(施行令119条の15第1項)。
評価損の場合は、翌期の益金に入れます。翌期首の帳簿価額も、この戻しを反映した額になります(同条4項)。このため、翌期以降に売却したときの損益は、元の取得価額との差で計算することになります。
売買目的外有価証券:期末は原価のまま
売買目的有価証券以外の有価証券は、期末も原価法で評価します(法人税法61条の3第1項第2号)。期末の帳簿価額のままで、含み益は所得に入りません。
含み損も、原則として損金には入りません。評価損を損金に入れられるのは、法人税法33条の評価損の要件に当たる場合に限られます。株価が下がっただけでは、決算で損金にできないのが基本です。
売却したときの損益はいつ計上するか
有価証券を譲渡したときの損益は、法人税法61条の2が定めています。譲渡の対価の額から譲渡原価の額を引いた差が、譲渡利益額か譲渡損失額です。計上する時期は、原則として譲渡に係る契約をした日の属する事業年度です。
したがって、決算日の直前に売る契約をして、受渡しが翌期になる場合でも、損益は契約をした日の事業年度に入ります。個人の確定申告のような「受渡日」の考え方とは異なる点に注意してください。
譲渡原価の額は、1単位当たりの帳簿価額の算出方法(移動平均法・総平均法など)で計算します。算出方法は法人が選定でき、選定しなかった場合は政令が定める方法になります。
配当の益金不算入
国内の会社から受ける配当は、持株割合に応じて、一部または全部が益金に入りません(法人税法23条1項)。余剰資金で上場株式を少しだけ買う場合は、持株割合が5%以下になるのが普通で、その場合は非支配目的株式等として、配当等の額の20%が益金不算入、残りの80%が益金です。
4区分の定義、短期保有株式の除外、申告書への明細書添付の要件は、法人の受取配当等の益金不算入にまとめています。配当に対する源泉所得税は、法人の所得税額控除で法人税額から引けます。
配当の基準日等の1か月以内に取得して2か月以内に売った株式の配当は、益金不算入の対象外になります(法人税法23条2項)。配当取りの短期売買が除かれる点は、時価評価の売買目的とは別の規定なので、両方を確認してください。
投資信託・ETFの分配金
投資信託の分配金は、種類で扱いが分かれます。国税庁の平成27年度改正の解説は、公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配のうち配当等とされる部分を、益金不算入の対象から外し、その全額を益金に入れるとしています。ただし、外国株価指数連動型特定株式投資信託以外の特定株式投資信託(ETF)の分配は、非支配目的株式等として20%を益金に入れない扱いが続いています。
| 受け取るもの | 益金不算入 |
|---|---|
| 上場株式の配当(持株5%以下) | 配当等の額の20% |
| 特定株式投資信託(ETF。外国株価指数連動型を除く)の分配 | 分配の額の20%(非支配目的株式等として) |
| 一般の株式投資信託の収益分配 | 対象外(全額が益金) |
| 証券投資信託の特別分配金 | 受取配当等の額に含めない |
| 公社債投資信託の分配金、REIT(不動産投資信託)の分配 | 受取配当等の額に含めない |
特別分配金や公社債投資信託の分配金などを「受取配当等の額に含めない」とする扱いは、国税庁の別表八(一)の記載要領に載っています。含めないものの税務上の処理(元本の払戻しとして帳簿価額を減らすのか、利子や収益として益金に入れるのか)は、商品の種類と契約内容で変わります。銘柄ごとに、運用会社の交付書面で区分を確かめてから経理してください。
配当を出す側の自己株式取得で、株主に払われたお金が配当とみなされる場合は、自己株式の取得とみなし配当を確認してください。
まとめ
- 取得の日に「短期売買目的」と帳簿に記載した有価証券は売買目的有価証券で、期末に時価評価し、評価益は売っていなくても益金に入る。翌期に逆の処理で戻す。
- それ以外は売買目的外有価証券で、期末は原価のまま。株価が下がっただけでは損金にならないのが基本。
- 売却損益は、売買契約をした日の事業年度に計上する。
- 持株5%以下の株式の配当は20%が益金不算入。特定株式投資信託(ETF)の分配も同じ20%。一般の株式投資信託の分配は全額が益金。
決算の全体の流れは法人の決算と申告を見てください。
公式一次情報
- 法人税法 第61条の2・第61条の3・第23条(譲渡損益の計上時期・売買目的有価証券の時価評価・受取配当等の益金不算入。2026-10-16確認)
- 法人税法施行令 第119条の12・第119条の13・第119条の15(売買目的有価証券の範囲・時価評価金額・翌事業年度の処理。2026-10-16確認)
- 国税庁「平成27年度税制改正における受取配当等の益金不算入制度の見直し」(証券投資信託の分配と特定株式投資信託の扱い。2026-10-16確認)
- 国税庁「法人税のあらましと申告の手引」別表八(一)記載要領(PDF)(ETFの扱い・受取配当等の額に含めないもの。2026-10-16確認)
よくある質問
- 法人で買った株が値上がりしただけで、税金がかかりますか?
- 取得の日に短期売買目的と帳簿に記載した売買目的有価証券なら、期末の評価益が益金になり、売っていなくても課税対象です。そう記載していない株式は期末も原価のままで、売ったときに損益が出ます。
- 期末に株価が下がっていたら、評価損を損金にできますか?
- 売買目的有価証券なら時価評価で評価損が損金に入ります。それ以外は、法人税法33条の評価損の要件に当たる場合に限られ、株価が下がっただけでは原則として損金になりません。
- 株を売った損益は、受渡日と契約日のどちらで計上しますか?
- 法人税法61条の2は、譲渡に係る契約をした日の属する事業年度としています。決算日をまたぐ受渡しでも、契約の日の事業年度に入ります。
- 上場株式の配当は、法人ではどれだけ課税されますか?
- 持株割合が5%以下なら、配当等の額の20%が益金に入らず、80%が益金です。5%を超える場合は区分が変わります。
- 投資信託の分配金も、配当と同じように益金不算入ですか?
- 一般の証券投資信託の分配のうち配当等とされる部分は、国税庁の解説で益金不算入の対象から外されています。特定株式投資信託(ETF。外国株価指数連動型を除く)は20%が益金不算入です。
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