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廃業した年の赤字(純損失)の扱い|前年の赤字を前々年に戻して還付を受ける

青色申告で出た赤字は、ふつう翌年以後3年間に繰り越します。ただし事業を廃止すると繰り越す先がなくなるため、所得税法140条5項に、廃止年の前年の赤字を前々年分の所得に戻して税金の還付を請求できる定めがあります。要件と計算を整理します。

e-Govの条文で確認済み
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

青色申告の赤字(純損失)は、翌年以後3年間の所得から引ける「繰越控除」が基本です(所得税法70条)。事業をやめると繰り越しても引く所得が出ない場合があります。そのため、事業の全部を廃止した年の前年に生じた赤字は、前々年分の所得税から還付を請求できることが、同法140条5項に定められています。

この記事は所得税の話です。通常の繰戻し還付や繰越控除の基本は純損失の繰越控除にまとめています。

廃業の年に使える3つの仕組み

廃業した年とその前年に赤字がある場合、条文上の選択肢は次の3つです。

場面使える仕組み根拠
廃業した年に赤字が出た前年分へ繰り戻して還付を請求する(前年分・当年分とも青色申告書)所得税法140条1項・4項
廃業した年の前年に赤字が出た(廃業年の繰越控除で引かれる分と、すでに還付の基礎にした分は除く)前々年分へ繰り戻して還付を請求する(前年分・前々年分とも青色申告書)所得税法140条5項、施行令272条
赤字を繰り越して、ほかの所得から引く翌年以後3年内の所得から控除する(損失の年の申告書を出し、その後も連続して提出)所得税法70条1項・4項

繰り戻しの対象にした赤字は、繰越控除には使えません。同じ赤字について、条文は繰越控除の対象から繰戻し還付の基礎になった金額を除いています(70条1項のかっこ書き)。

140条5項の要件(青色2年分・申告期限)

140条5項が使えるのは、次の条件がそろう場合です。

  • 事業の全部の譲渡または廃止などの事実が生じたこと。政令では、事業の全部の相当期間の休止、または重要部分の譲渡で、赤字の繰越控除(70条1項)を受けることが困難となると認められるものも含みます(施行令272条1項)。
  • その事実が生じた日の前年に純損失があること。廃止した年の繰越控除(70条1項)で控除される金額や、すでに還付の計算の基礎にした金額は除かれます。
  • 前年分と前々年分の両方で青色申告書を提出していること。
  • 事実が生じた日の属する年分の確定申告期限までに、納税地の税務署長に還付を請求すること。

請求は、還付を受けたい税額と計算の基礎などを書いた還付請求書で行います(所得税法142条1項)。税務署長は基礎となる純損失の金額を調査し、請求の範囲内で還付するか、理由がない旨を書面で通知します(同条2項)。

ポイント:廃業した年に赤字が出たときの140条1項は「前年分」へ戻す仕組みで、前年の赤字を戻す140条5項は「前々年分」へ戻す仕組みです。戻す先の年が違います。

還付額の計算例(前々年に戻す)

施行令272条2項は、5項の還付額を、前々年分の課税総所得金額などと、廃止した年の前年に生じた純損失の金額を基礎にして、140条1項から3項に準じて計算すると定めています。流れは「戻す前の税額」と「純損失を引いたあとの税額」の差です。

数字で見ます(架空の設例。復興特別所得税、住民税、他の年への影響は含みません)。

項目金額・計算
前々年分の課税総所得金額300万円
前々年分の所得税額(300万円×10%−9万7,500円)20万2,500円
廃止年の前年の純損失100万円
純損失を引いた課税総所得金額200万円
引いたあとの所得税額(200万円×10%−9万7,500円)10万2,500円
還付を請求できる金額の目安20万2,500円−10万2,500円=10万円

税率は課税総所得金額が195万円超330万円以下の区分を使っています(国税庁の所得税の税率表で確認できます)。実際の金額は、所得控除や税額控除、平均課税の適用有無によって変わります。前々年分にすでに繰戻し還付を受けているときは、その分を差し引いて計算します(施行令272条2項後段)。

繰越控除を使うなら連続して申告する

繰戻し還付を請求しないで繰越控除を使う場合、70条4項により、赤字が生じた年の確定申告書を提出し、かつその後も連続して確定申告書を提出している場合に限って適用されます。廃業して事業収入がなくなっても、繰越控除を使いたい年までは申告書を提出し続ける必要があります。

赤字は、生じた年の翌年以後3年内の所得から控除できます。廃業後に給与所得などほかの所得がある年は、その所得から引けます。引く所得がない年は、控除する余地がありません。

戻せる税額が見込める場合は、廃業後の繰越を待つより、廃業年の確定申告期限までに140条5項で請求する方法があります。どちらが有利かは、前々年分の所得税額と廃業後の所得の見込みで決まります。

白色申告・事業を法人に引き継ぐ場合

繰戻し還付は、青色申告書を提出している場合の制度です(140条1項・4項・5項)。白色申告の年の純損失は、70条1項の繰越控除の対象になりません。70条2項により繰り越せるのは、変動所得の損失と被災事業用資産の損失に限られます。

法人成りなどで事業を法人に引き継ぐ場合、条文の文言は「事業の全部の譲渡又は廃止」です。個別の取引がこれに当たるかは事実関係で変わるため、所轄の税務署や税理士に確認してください。

次に知りたいこと

よくある質問

廃業すると、前年の赤字は消えてしまいますか?
消えるとは限りません。前年分と前々年分の両方を青色申告している場合、事業の全部を廃止した年の前年の赤字を、前々年分に戻して還付を請求できます(所得税法140条5項)。
140条5項の請求はいつまでにしますか?
事実が生じた日(廃業した日)の属する年分の確定申告期限までです。納税地の税務署長に還付請求書を提出します(所得税法140条5項・142条1項)。
廃業した年に赤字が出た場合は、どの仕組みですか?
その年の赤字は、140条1項により前年分に戻して還付を請求できます。前年分が青色申告書で、その年の青色申告書を期限までに提出していることが要件です(同条4項)。
白色申告の年の赤字も戻せますか?
戻せません。繰戻し還付は青色申告書を提出している場合の制度です。白色申告の年の赤字で繰り越せるのは、変動所得の損失と被災事業用資産の損失に限られます(70条2項)。
廃業後に繰越控除を使うには、申告をやめてはいけませんか?
繰越控除は、赤字が生じた年に確定申告書を提出し、その後も連続して提出している場合に限って適用されます(所得税法70条4項)。使いたい年までは申告書の提出を続けてください。

廃業のタイミングで手取りを比べる

年内に廃業する場合と年明けにする場合で、申告が1年分で済むか2年分になるか、手取りがどう変わるかを試算できます。

公式情報

本記事について。税理士監修前の一般的な整理です。個別の事情は所轄の税務署や税理士へご確認ください。

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