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廃業した後に生じた費用・損失の扱い|所得税法63条と更正の請求の2か月

廃業したあとに、その事業のための費用や損失が出ることがあります。所得税法63条は、その金額を廃業した年分(または前年分)の必要経費に戻す定めです。確定申告を出したあとなら、事実が生じた日の翌日から2か月以内の更正の請求が必要になります。

e-Govと国税庁通達で確認済み
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

廃業した後に生じた事業の費用や損失は、廃業した日の属する年分の必要経費に算入できます(所得税法63条)。その年分の所得で引ききれない分は、前年分に戻せます(所得税法施行令179条)。

廃業した年の確定申告をすでに出していた場合は、申告のやり直しではなく更正の請求を使います。期限は、費用や損失が生じた日の翌日から2か月以内です(所得税法152条)。

63条が戻す先と対象

所得税法63条は、不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき事業を廃止した後に、その事業に係る費用または損失が生じた場合の特例です。対象は「事業を廃止しなかったとしたら、その年分以後の必要経費に算入されるべき金額」です。

戻す先は条文で決まっています。廃止した日の属する年分、その年に総収入金額がなければ総収入金額があった最近の年分、またはその前年分です。

項目条文の内容
対象になる所得不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき事業を廃止した場合
対象になる金額廃止した後に生じた、その事業に係る費用または損失で、事業を続けていれば必要経費になるもの
戻す先の年分廃止した日の属する年分。その年に総収入金額がなければ、総収入金額があった最近の年分。または、その前年分
根拠所得税法63条、所得税法施行令179条

どの費用がこの特例に当たるかは、事業の内容と費用の性質で決まります。個別の判断は、所轄の税務署や税理士に確認してください。廃業時の手続き全体は個人事業主の廃業にまとめています。

戻せる金額の上限と設例

所得税法施行令179条は、戻せる金額に上限を置いています。廃止した年分では、費用が生じた時の直前に確定している総所得金額・山林所得金額・退職所得金額の合計額と、事業所得等の金額のうち、いずれか低い金額が上限です。

上限を超える部分は、前年分について同じ考え方で計算した金額を限度に戻します。いずれも架空の数字を使った設例です。

設例廃止した年分(2026年分)に戻す額前年分(2025年分)に戻す額
2026年分の事業所得400万円(ほかの所得なし)。2027年5月に後始末の費用120万円が生じた120万円(上限400万円の範囲内なので全額)。事業所得は280万円になるなし
同じ状況で、費用が500万円生じた400万円(上限まで)超える100万円を、2025年分の確定している金額を上限に戻す
ポイント:上限の基になる「確定している金額」は、費用が生じた時の直前に確定している申告や更正などの金額です(所得税基本通達63-2)。年分ごとの上限は、この金額で決まります。

申告を出したあとは更正の請求(2か月)

廃止した年分の確定申告をすでに出し、そのあとに費用や損失が生じたときは、所得税法152条の特例を使います。確定申告書を提出した人(決定を受けた人も含む)は、63条に規定する事実が生じたことで更正の請求の事由が生じたとき、その事実が生じた日の翌日から2か月以内に、税務署長へ更正の請求をすることができます。

この場合の更正請求書には、通常の記載事項に加えて、事実が生じた日を書く決まりです(所得税法152条後段)。たとえば費用が5月10日に生じたなら、翌日の5月11日から2か月以内の7月10日までが目安です。通常の更正の請求の期限とは別に数えるため、日付の記録を残しておくと確かめやすくなります。

2か月は、申告期限ではなく「事実が生じた日」から数えます。費用の発生日が分かる書類(請求書・領収書・契約の終了日が分かる書面)は、更正の請求まで手元に残してください。

通常の更正の請求のしくみは更正の請求で確認できます。63条を使う場合は、期限と請求できる事由が152条で別に定められています。

まだ申告していない年分のとき

費用が生じた時までに、その年分の確定申告書の提出も決定もない場合の上限は、通達63-2(1)が定めています。63条を適用しないで計算した総所得金額等が、上限の基礎になります。

税額は、63条で必要経費に算入する金額を各種所得の金額から控除し、その後の金額を基に計算し直します(所得税基本通達63-3)。まだ申告していない年分なら、申告書の計算に費用を含めるのが自然で、更正の請求は要らないと考えられます。個別の扱いは税務署に確認してください。

法人成りで個人事業を引き継いだときの退職給与

所得税基本通達63-1は、法人成りに関係する例を挙げています。個人事業を引き継いで設立された法人が、個人事業当時から引き続き在職する使用人の退職により退職給与を支給した場合です。

支給した金額のうち、個人事業当時の事業主が負担すべきものとして法人の損金に算入されなかった金額は、その事業主が支出した退職給与として63条を適用します。個人事業の廃業と法人設立の流れは個人事業の廃業と法人の解散・清算の比較で確認できます。

状況別の対応

状況戻す先手続き
廃業した年分をまだ申告していない廃業した年分(上限を超えれば前年分)申告書で費用を含めて計算する。更正の請求は不要
廃業した年分を申告したあとに費用が生じた廃業した年分(上限を超えれば前年分)事実が生じた日の翌日から2か月以内に更正の請求。更正請求書に事実が生じた日を書く
廃業した年に総収入金額がなかった総収入金額があった最近の年分、またはその前年分該当年分の申告状況に応じて、上の2行のいずれか

廃業した年の消費税は、所得税とは別の手続きです。廃業した年の消費税で、事業廃止届出書と廃止した課税期間の申告を確認してください。

次に知りたいこと

よくある質問

廃業した後に生じた費用は、いつの年分の必要経費になりますか?
廃止した日の属する年分です。その年に総収入金額がなければ、総収入金額があった最近の年分になります。上限を超える部分は前年分に戻せます(所得税法63条、所得税法施行令179条)。
廃業した年の確定申告を出したあとに費用が出たら、どうしますか?
更正の請求をします。事実が生じた日の翌日から2か月以内に限られ、更正請求書には事実が生じた日を書きます(所得税法152条)。
戻せる金額に上限はありますか?
あります。廃止した年分では、費用が生じた時の直前に確定している総所得金額等の合計額と事業所得等の金額のうち、低い方が上限です。超える部分は前年分について同様に計算します(所得税法施行令179条)。
まだ申告していない年分のときは、更正の請求が必要ですか?
不要です。申告書の計算に含めます。申告前の年分は、63条を適用しないで計算した総所得金額等を上限の基礎にします(所得税基本通達63-2)。
法人成りの退職給与にも63条は使えますか?
通達63-1に例があります。個人事業当時から在職する使用人の退職給与のうち、事業主が負担すべきものとして法人の損金にならなかった金額は、事業主が支出した退職給与として63条を適用します。

廃業のタイミングで手取りを比べる

年内に廃業する場合と年明けにする場合で、申告が1年分で済むか2年分になるか、手取りがどう変わるかを試算できます。

公式情報

本記事について。税理士監修前の一般的な整理です。個別の事情は所轄の税務署や税理士へご確認ください。

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