個人事業の廃業と法人の解散・清算を比較|届出・期間・確定申告・社会保険の違い
個人事業主が事業をやめるときは廃業届、法人が会社を畳むときは解散と清算の手続きが必要です。手続きの段階・かかる期間・確定申告の回数・残った財産の税金・社会保険の抜け方を1つの表にまとめ、詳しい解説へのリンクを付けました。
e-Gov法令検索・日本年金機構・国税庁の記載にもとづく違いが大きいのは、手続きの段階の数、債権者への公告があるかどうか、確定申告の回数、残った財産にかかる税金の4点です。期限や金額は事業の状況で変わるので、この表では仕組みだけを比べています。
このページは、事業のやめ方の「違いの一覧」です。個人事業の廃業のタイミングによる手取りは「廃業タイミング&手取り最大化シミュレーター」で試算できます。
比較表:手続き・期間・申告・社会保険
| 項目 | 個人事業の廃業 | 法人の解散・清算 | 詳しい解説 |
|---|---|---|---|
| 手続きの段階 | 廃業届を税務署へ出す(所得税法第229条)。廃業届の期限は廃業した年分の確定申告期限まで | 株主総会の決議で解散(会社法第471条)→解散登記→清算→清算結了登記の順 | 個人事業主の廃業・法人の解散・清算 |
| 登記 | 不要 | 解散から2週間以内に解散登記(同法第926条)。清算の承認から2週間以内に清算結了登記(同法第929条) | 法人の解散・清算 |
| 債権者への公告 | 法律上の公告の義務はない | 清算人は2箇月を下らない期間を定めて公告し、知れている債権者には個別に催告する(同法第499条) | 法人の解散・清算 |
| 確定申告の回数 | 廃業した年分の1回で終わる | 解散事業年度と清算中の事業年度に分かれ、複数回の申告になる | 解散時の事業年度の区切り |
| 残った財産 | 本人のものなので、受け渡しの手続きはない | 残余財産を株主へ分配する。資本金等の額に対応する部分を超える額は配当所得扱い(所得税法第25条) | 内部留保の出口戦略 |
| やめた後にかかる費用 | 廃業後に生じた事業の費用は、廃業した年分の必要経費にできる(所得税法第63条) | 清算中の期間は別の事業年度になり、その期間の申告が必要。扱いは税理士に確認する | 個人事業主の廃業 |
| 従業員の社会保険 | 従業員を加入させていた場合、事実発生から5日以内に適用事業所全喪届を年金事務所へ | 事業を廃止(解散)する場合も同じ届出。解散登記のある登記簿謄本の写しを添付する | 全喪届の書き方 |
| 雇用保険 | 廃止の翌日から10日以内に雇用保険適用事業所廃止届をハローワークへ | 同じ | 個人事業主の廃業 |
| 本人の健康保険・年金 | もともと国保・国民年金なので、廃業しても切り替えは起きない | 役員として入っていた健康保険・厚生年金の資格がなくなり、国保・国民年金へ切り替える。届出先は市区町村(国民健康保険法第9条、国民年金法第12条) | 国民年金・個人事業と法人の社会保険の比較 |
すぐに畳まず、法人を残したまま事業を止める方法は「会社を休眠させる方法」にまとめています。
手続きの段階と期間の違い
個人事業は、事業をやめた事実を税務署に届け出れば手続きの中心は終わります。法人は、解散しただけでは会社は消えず、清算が終わって清算結了登記をして初めて法人格がなくなります(会社法第475条は、解散した株式会社に清算を義務づけています)。
法人側は債権者への公告の期間が2箇月を下ってはいけないため、解散を決めてから清算結了までは最短でも2箇月超かかります。いつ畳むかを決めるときは、この期間と、その間の申告・社会保険の手続きを見込んでおくと安全です。
確定申告と残った財産の税金
個人事業は、廃業した年の1月1日から廃業までの所得を翌年に申告すれば完結します。廃業を年明けにずらすと2年分の申告になる点は「個人事業主の廃業」で説明しています。
法人は、解散の日で事業年度が区切られ、解散の日までの期間と、その翌日からの清算中の期間が別々の事業年度になります。清算が長引くほど申告の回数も増えます。
残余財産を株主が受け取るときは、資本金等の額に対応する部分を超える金額が配当所得の扱いで総合課税されます。法人に内部留保が多いほど、この課税の対象になる部分が大きくなる可能性があります。金額の試算は個別の資本構成で変わるため、税理士に確認してください。
従業員と本人の社会保険の抜け方
従業員を健康保険・厚生年金に加入させていた事業所は、個人でも法人でも、事業をやめたら事実発生から5日以内に適用事業所全喪届を出します。日本年金機構の案内は、全喪届が必要な場合として「事業を廃止(解散)する場合」を挙げています。
本人の扱いは違います。個人事業主は国保・国民年金のままなので切り替えは不要です。法人の役員として厚生年金・健康保険に入っていた人は、会社の適用がなくなれば国保・国民年金に切り替えます。
国民年金の被保険者の資格は国民年金法第7条、届出は同法第12条に定めがあります。国保の届出は国民健康保険法第9条です。
国保組合の資格や扶養の扱いは、状況で変わります。入る側の違いは「個人事業と法人の社会保険・年金の比較」を参照してください。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「会社法」(第471条・第475条・第499条・第926条・第929条)
- e-Gov法令検索「所得税法」(第229条:事業の廃止の届出)
- e-Gov法令検索「国民年金法」(第7条・第12条)
- e-Gov法令検索「国民健康保険法」(第9条)
- 日本年金機構「適用事業所が廃止等により適用事業所に該当しなくなったときの手続き」(事業を廃止(解散)する場合の全喪届、事実発生から5日以内、解散登記のある登記簿謄本の写しの添付)
- 厚生労働省「雇用保険 手続き一覧」(適用事業所廃止届)
確認日は2026年10月12日です。
よくある質問
- 法人は廃業届を出せば畳めますか?
- 畳めません。会社法の定めで、株主総会の決議などで解散し、清算を経て清算結了登記をして初めて会社が消えます。個人事業の廃業届とは手続きの段階が違います。
- 個人事業と法人で、やめるまでにかかる期間は違いますか?
- 違います。法人は債権者への公告の期間が2箇月を下ってはいけないため(会社法第499条)、清算結了までは最短でも2箇月超かかります。個人事業にはこの公告の義務はありません。
- 従業員がいるときの社会保険の届出は、個人と法人で違いますか?
- 適用事業所全喪届は同じです。事業を廃止(解散)する場合に、事実発生から5日以内に年金事務所へ出します。
- 法人を畳んだあと、本人の健康保険と年金はどうなりますか?
- 会社の健康保険・厚生年金の資格がなくなるため、ほかの勤務先に入らなければ国民健康保険・国民年金に切り替えます。窓口は市区町村です。