解散の年度と清算中に使えない税額控除・特別償却・圧縮記帳
賃上げ促進税制、中小企業者等の設備投資の税額控除、研究開発税制、圧縮記帳は、解散した会社や清算中の会社では使えないものがあります。どの条文が、どの事業年度を外しているかを一覧にします。
租税特別措置法42条の4ほか・法人税法42条〜50条会社を解散する予定があるときは、設備を買う時期や給与を引き上げる時期によって、税額控除や特別償却が使えなくなることがあります。租税特別措置法の多くの規定は、「解散の日を含む事業年度」と「清算中の各事業年度」を適用の対象から外しています。
解散後の事業年度の区切りと申告の流れは法人解散から清算結了までの流れで説明しています。この記事では、解散を挟むと使えなくなる特例に絞って、条文の文言を整理します。
解散の日を含む年度と清算中の年度
内国法人が事業年度の途中で解散すると、その事業年度は解散の日に終了します(法人税法14条1項1号)。たとえば3月決算の会社が9月15日に解散すると、4月1日から9月15日までが解散の日を含む事業年度です。
それに続く、解散の翌日からの事業年度が清算中の事業年度です。清算中の会社が毎年作る貸借対照表と事務の対象も、この年度です。
なお、条文は「解散(合併による解散を除く。)」と書いています。合併で消滅する会社の解散は、ここで説明する除外の対象になりません。
解散の年度も外れる税額控除・特別償却
租税特別措置法の次の規定は、適用できる事業年度から「解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度」を除くと書いています。
| 条文 | 制度 |
|---|---|
| 42条の4 | 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(研究開発税制) |
| 42条の6 | 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除 |
| 42条の12の4 | 中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除 |
| 42条の12の5 | 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(賃上げ促進税制) |
| 42条の12の6 | 生産工程効率化等設備を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除 |
このほかにも、国家戦略特別区域や沖縄の特定地域などの設備投資の特例(42条の9から42条の11の3まで)、海外投資等損失準備金(55条)なども同じ書き方です。
賃上げ促進税制の条文は、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度を対象にしたうえで、設立事業年度、解散の日を含む事業年度、清算中の各事業年度を除くとしています。解散する年度は、給与を増やしても税額控除の対象になりません。
設備投資の税額控除や特別償却は、事業の用に供した日を含む事業年度で見ます。条文はその事業年度から、解散の日を含む事業年度と清算中の各事業年度を除いています。
清算中だけが外れる特例(収用・買換え)
次の規定は、「法人(清算中の法人を除く。)」と書き、解散の日を含む事業年度には触れていません。
| 条文 | 制度 |
|---|---|
| 64条 | 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例 |
| 65条の3 | 区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の所得の特別控除 |
| 65条の7 | 特定の資産の買換えの場合の課税の特例 |
同じ租税特別措置法の中でも、除かれる事業年度の範囲は条文ごとに違います。使いたい特例が解散や清算の前後にかかるときは、その条文の括弧書きを確認します。
法人税法の圧縮記帳と留保金課税
法人税法にも、清算中の法人を適用から外す規定があります。固定資産の圧縮記帳の次の条文は、いずれも「内国法人(清算中のものを除く。)」から始まります。
| 条文 | 制度 |
|---|---|
| 42条 | 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入 |
| 43条 | 国庫補助金等に係る特別勘定の金額の損金算入 |
| 45条 | 工事負担金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入 |
| 47条 | 保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入 |
| 48条 | 保険差益等に係る特別勘定の金額の損金算入 |
| 50条 | 交換により取得した資産の圧縮額の損金算入 |
たとえば、清算中の会社が火災で建物を失い保険金を受け取った場合、保険金で取得した資産の圧縮記帳(47条)は条文の上では対象になりません。圧縮記帳を使えるかどうかで課税される所得が変わるため、保険金や補助金の入金が見込まれるときは、時期を含めて税理士に確認します。
これらの条文は「清算中のもの」とだけ書き、解散の日を含む事業年度を名指ししていません。措置法の書き方とは異なるため、解散の年度に圧縮記帳を使えるかは、税務署か税理士に確認してください。
また、同族会社に課される留保金課税(特定同族会社の特別税率、67条)も、対象の法人から清算中のものが除かれています。法人税の中間申告(71条)は、清算中の会社では通算子法人に限られます。中間申告は清算中の会社に法人税の中間申告が要らない条文上の根拠で説明しています。
解散を予定しているときの時期の考え方
解散の時期が決まっているなら、特例を使いたい取引は解散の日を含む事業年度より前の事業年度に収まるかを確認します。設備の取得、事業の用に供する日、給与の引き上げの時期が、それぞれどの事業年度に入るかを見ます。
- 解散の日はいつか(その日で事業年度が終わる)
- 使いたい特例の条文は、解散の日を含む事業年度を除いているか
- 設備を事業の用に供した日や、給与を支給した日は、どの事業年度に入るか
- 解散後の消費税の課税期間の区切りは法人が解散したときの消費税で確認する
特例の細かい要件は、条文ごとに別にあります。この記事は適用される事業年度の範囲だけを整理したもので、控除額の計算や要件の判定は扱いません。
次に知りたいこと
公式一次情報
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(第42条の4、第42条の6、第42条の12の4〜12の6、第55条、第64条、第65条の3、第65条の7)
- e-Gov法令検索「法人税法」(第14条第1項、第42条、第43条、第45条、第47条、第48条、第50条、第67条、第71条)
まとめ
租税特別措置法の賃上げ促進税制や設備投資の税額控除などは、解散の日を含む事業年度と清算中の各事業年度を除いています。収用や買換えの特例は清算中だけを除き、法人税法の圧縮記帳も清算中を除いています。
除外される事業年度の範囲は条文ごとに違います。解散を予定しているなら、特例を使う取引の時期を、解散の日との前後で確かめてください。

