災害で被害を受けた法人の法人税|損失・修繕費・還付・期限延長
地震や水害などで建物・設備・商品に被害を受けた法人が、法人税でどう扱われるかを整理します。損失が損金になる根拠、原状回復の費用を修繕費にできる通達、災害損失欠損金の繰戻し還付、申告・納付の期限延長と納税の猶予を、条文と国税庁の資料で確認します。
2026年時点の制度災害で会社の資産に被害が出たときは、損失はその事業年度の損金になり、青色申告の法人なら、赤字になれば前の2年分の法人税の還付を請求できる場合があります。あわせて、申告や納付の期限が延びる仕組みもあります。
この記事は、災害で被害を受けた法人の法人税と期限の手続きに絞っています。損金に入らない赤字の繰越しは欠損金の繰越控除、繰戻し還付の基本は欠損金の繰戻し還付で扱っています。
被害の損失は損金になる
法人税法22条3項3号は、損金の額に入れるものとして、その事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものを挙げています。災害による資産の滅失や毀損は、この損失に当たります。
保険金や共済金、補助金などで補われた分は、損失として扱えません。受け取った保険金は収入側に出ますので、損失と保険金を差し引きした結果で、その事業年度の所得が決まります。
原状回復の費用は修繕費にできる
被害を受けた固定資産の復旧に支出した費用は、本来は資本的支出(資産に加える支出)か修繕費かを区分します。災害の場合は、法人税基本通達7-8-6が特例を定めています。
| 通達の号 | 費用の種類 | 扱い |
|---|---|---|
| (1) | 被災資産の原状を回復するために支出した費用 | 修繕費に該当する |
| (2) | 被災前の効用を維持するための補強工事、排水や土砂崩れの防止などの費用 | 修繕費とする経理をしていれば認められる |
| (3) | (1)(2)以外で、資本的支出か修繕費か明らかでない費用 | 30%相当額を修繕費、残額を資本的支出とする経理をしていれば認められる |
この特例の対象になる被災資産には、被害に基づいて法人税法33条2項の評価損を計上したものは含まれません。
注意したいのは、被災資産の復旧に代えて別の資産を取得したり、被災前の効用維持を超える特別の施設を設けたりする場合です。通達7-8-6の注1は、その資産や施設は新たな資産の取得に当たり、取得のための支出は取得価額に含めると書いています。
災害損失欠損金の繰戻し還付
青色申告書を出す法人は、欠損金が出た事業年度の前1年以内に開始した事業年度に欠損金を繰り戻して、法人税の還付を請求できます。国税庁のNo.5763は、災害損失欠損金額がある場合は、さかのぼれる期間が前1年ではなく、青色申告なら前2年になると説明しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象の事業年度 | 災害のあった日から1年を経過する日までに終了する各事業年度(中間期間は6か月を経過する日まで) |
| さかのぼる期間 | 青色申告なら、欠損事業年度の開始の日前2年以内に開始した事業年度 |
| 還付される額 | 還付所得事業年度の法人税額のうち、災害損失欠損金額に対応する部分 |
中小企業者等以外の法人は、通常の繰戻し還付が令和10年3月31日までに終了する事業年度では使えません。ただし、No.5763は、災害損失欠損金額についてはこの制度を適用できると書いています。
申告・納付の期限延長
国税通則法11条は、災害その他やむを得ない理由で申告や納付などの期限までにできないと認めるとき、その理由のやんだ日から2か月以内に限り、期限を延長できると定めています。
国税庁のNo.8001によると、災害による延長には次の2通りがあります(ほかに、国税庁のシステムが使えないときの対象者指定があります)。
| 種類 | 中身 | 申請 |
|---|---|---|
| 地域指定 | 国税庁長官が地域と期日を指定し、官報に載せる。納税地が指定地域内にある納税者が対象 | 特別な手続きは不要 |
| 個別指定 | 期限までに申告・納付などができないときに、納税地の所轄税務署長が延長する | 納税地の税務署長へ申請 |
事業所が指定地域内にあっても、納税地が指定地域の外にあると、地域指定の延長は受けられません。その場合は、個別指定の申請を使います。
納税の猶予
国税通則法46条1項は、災害で納税者が財産に相当な損失を受けた場合に、納期限から1年以内の期間を限って、国税の全部または一部の納税を猶予できると定めています。申請は、災害のやんだ日から2か月以内にします。
期限の延長が申告や納付の「期限そのもの」を後ろにずらすのに対し、猶予は、納期限が来た税の納付を一定期間待つ仕組みです。猶予は、財産に相当な損失を受けたことが要件です。どちらが使えるかは、被害の程度や納める税の種類で変わるため、税務署へ確認してください。
被害を受けたあとの順番
| 順番 | やること | 期限・時期 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 1 | 被害の状況と復旧の費用を記録する(写真・見積書・請求書) | 被害のあと早めに | 損失額の算定のため |
| 2 | 地域指定があるか、なければ個別指定の申請をするかを確認する | 理由のやんだ日から2か月以内に限り延長 | 国税通則法11条・No.8001 |
| 3 | 復旧費用を修繕費と資本的支出に分ける | 決算 | 法人税基本通達7-8-6 |
| 4 | 欠損金が出たら、青色申告なら前2年への繰戻し還付を検討する | 災害損失欠損金額が生じた事業年度の確定申告書(または仮決算の中間申告書)の提出と同時に、還付請求書を提出 | No.5763 |
| 5 | 財産に相当な損失を受けたときは、納期限から1年以内の期間で納税の猶予を申請する | 災害のやんだ日から2か月以内 | 国税通則法46条1項 |
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