法人の欠損金の繰越控除|10年の期限と控除できる上限
法人の赤字(欠損金)を翌期以後の黒字と相殺する繰越控除について、繰り越せる期間、青色申告と連続申告の条件、控除できる上限(中小法人等と大法人の違い)、計算例を国税庁の資料で整理します。
国税庁の制度法人が赤字になったとき、その赤字は翌期以後の黒字から差し引けます。法人税の繰越控除は、繰越控除をする事業年度の開始前10年以内に始まった事業年度の赤字が対象で、赤字を出した年度に青色申告書で申告していることが条件です。個人事業の純損失の繰越しが3年なのに対し、法人は10年と長く設定されています。
この記事では、繰越控除が使える条件、控除できる金額の上限、計算例を整理します。前の期の法人税を取り戻す繰戻し還付は欠損金の繰戻しによる還付で扱っています。
繰越控除が使える法人と条件
国税庁のタックスアンサーによると、繰越控除を受けられるのは、次の3つを満たす法人です。
- 欠損金額が生じた事業年度に、青色申告書である確定申告書を提出している。
- その後の各事業年度について、連続して確定申告書を提出している。
- その事業年度に係る一定の帳簿書類を保存している。
欠損金が生じた事業年度に青色申告書で申告していれば、その後の事業年度に出した確定申告書が白色申告書であっても、その欠損金額は繰越控除の対象になります。
青色申告の承認を受ける手続きは法人の青色申告承認申請書で、承認が取り消される場合の基準は法人の青色申告の承認が取り消される4つの場合で整理しています。帳簿書類の保存期間は帳簿・書類の保存期間を参照してください。
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繰り越せる期間は10年
法人税法57条1項は、各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度で生じた欠損金額を、その事業年度の所得の計算上、損金に算入すると定めています。国税庁は、平成30年4月1日前に開始した事業年度で生じた欠損金額の繰越期間は9年と案内しています。
すでに前の期の法人税を戻して還付を受けた欠損金額は、繰越控除の対象から除かれます。同じ欠損金額を繰戻し還付と繰越控除の両方には使えません。
控除できる上限:中小法人等と大法人の違い
損金に算入できる欠損金額には、その事業年度の所得金額(繰越控除を適用する前の金額)を上限とする枠があります。法人の規模で上限の割合が分かれます。
| 法人の区分 | 繰越控除できる上限 |
|---|---|
| 中小法人等(資本金または出資金が1億円以下の普通法人など) | その事業年度の繰越控除前の所得金額まで |
| 中小法人等以外の法人 | 平成30年4月1日以後に開始する事業年度は、繰越控除前の所得金額の50% |
中小法人等には例外があります。資本金1億円以下でも、大法人の100%子法人等などは中小企業向けの特例の対象から外れます。自社がどちらにあたるかは、国税庁のタックスアンサーで確認してください。
更生手続開始の決定があった法人や新設法人の一定の事業年度は、中小法人等以外でも50%の上限が適用されない扱いがあります(国税庁の表で対象が定められています)。個別の判定は、国税庁の案内か税理士に確認してください。
計算例
国税庁の例では、繰越欠損金が150万円で、その事業年度の繰越控除前の所得金額が100万円のとき、150万円のうち100万円が損金に算入され、その事業年度の所得金額は0になります。残りの50万円は、翌期以後に繰り越します。
次の表は、中小法人等で繰越欠損金が300万円ある場合の例です(仮の数字です。ほかの調整は考えていません)。
| 事業年度 | 繰越控除前の所得 | 控除額 | 課税される所得 | 繰越欠損金の残り |
|---|---|---|---|---|
| 翌期 | 200万円 | 200万円 | 0円 | 100万円 |
| 翌々期 | 250万円 | 100万円 | 150万円 | 0円 |
同じ条件で中小法人等以外なら、翌期の控除額は200万円の50%で100万円です。
使えなくなる・使えない場合の注意
- 青色申告の承認を取り消されたとき。取消しの対象となった事業年度の青色申告書は、青色申告書以外の申告書とみなされます。どの事業年度に影響するかは法人の青色申告の承認の取消しの記事を参照してください。
- 申告を連続して出していないとき。欠損金の生じた後の事業年度で確定申告書が途切れると、条件を満たさなくなります(法人税法57条10項)。
- 個人事業のときの赤字。個人事業の純損失は、法人に引き継げません。法人成りの注意は欠損金の繰戻しによる還付の個人事業の節を参照してください。
- 特定支配関係がある場合。他の者が50%を超える株式等を保有する関係(特定支配関係)になった法人が、5年以内に旧事業のすべてを廃止し、旧事業の事業規模のおおむね5倍を超える資金の借入れ等を行うことなどに該当した場合は、その事業年度以後は繰越控除が制限されます。該当しそうなときは税理士にご相談ください。
解散するときの期限切れ欠損金の扱いは解散時の期限切れ欠損金の損金算入で整理しています。社長が貸付金を放棄して債務免除益が出たときの扱いは役員借入金の債務免除で確認できます。
まとめ
- 繰越期間は10年(平成30年4月1日前に開始した事業年度の欠損金は9年)。
- 欠損金が生じた事業年度に青色申告書で申告し、その後も連続して確定申告書を出す。
- 上限は、中小法人等が繰越控除前の所得金額まで、中小法人等以外は50%。
- 繰戻し還付を受けた欠損金額は、繰越控除に使えない。
次に知りたいこと
欠損金の繰戻しによる還付:繰越控除と選ぶ場合の違いを確認する。
法人の青色申告の承認が取り消される場合:繰越控除の前提になる青色申告を守る基準を確認する。
法人の決算・申告の流れ:欠損金を含む決算全体の手順を確認する。
よくある質問
- 法人の赤字は何年繰り越せますか?
- 各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度で生じた欠損金額が対象です。平成30年4月1日前に開始した事業年度で生じた欠損金額は9年です(出典:国税庁)。
- 白色申告に変えた期でも、過去の赤字は使えますか?
- 国税庁は、欠損金額が生じた事業年度に青色申告書で確定申告書を提出していれば、その後の確定申告書が白色申告書であっても繰越控除の対象になるとしています。
- 赤字の全額を黒字から引けますか?
- 中小法人等は、その事業年度の繰越控除前の所得金額まで引けます。中小法人等以外の法人は、平成30年4月1日以後に開始する事業年度では所得金額の50%が上限です(出典:国税庁)。
- 繰戻し還付を受けた赤字も繰り越せますか?
- 還付を受けるべき金額の計算の基礎になった欠損金額は、繰越控除の対象から除かれます(法人税法57条1項)。
災害で被害を受けた法人の扱いは、災害で被害を受けた法人の法人税(損失・修繕費・還付・期限延長)で確認できます。
公式一次情報
- 国税庁 タックスアンサー No.5762「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」(対象法人、10年、上限、150万円と100万円の例)
- e-Gov法令検索「法人税法」(57条)


