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複数の事業を兼業する個人事業税|異なる税率の按分・非課税所得の申告

税率が違う事業を兼業するとき、所得をどう分け、事業主控除をどこで差し引き、確定申告書のどこに書くかを、都道府県の公式設例で整理します。

地方税法・個人事業税
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

物品販売業とマッサージ業のように税率が違う事業を同じ人が営む場合、個人事業税は一つの税率でまとめて計算しません。事業ごとの所得をもとに課税標準を按分し、それぞれの税率を適用します。

事業主控除290万円は事業ごとに使うのではなく、全事業を通じて年1回差し引き、その後の課税標準を事業所得の比率で分けます。課税されない事業の所得が混じる場合は、その所得を申告書第二表の「非課税所得など」に分けて記載します。

確認する順番見るもの扱い
1事業の種類第1種・第2種・第3種、または非課税事業に分ける
2事業ごとの所得帳簿で区分し、税率別の所得比率を出す
3全体の課税標準青色申告特別控除を足し戻し、事業主控除などを差し引く
4税率別の税額課税標準を所得比率で按分して3%・4%・5%を適用する
5申告書第二表非課税所得や他都道府県の事務所など、該当欄を記載する

兼業する事業を税率別に分ける

沖縄県の案内では、第1種事業は5%、第2種事業は4%、第3種事業は原則5%です。第3種のうち、あん摩・マッサージ・指圧、はり、きゅう、柔道整復などの医業に類する事業と装蹄師業は3%です。

税率の異なる事業を併せて行うときは、課税対象となる総所得をそれぞれの事業の所得に按分し、各税率を適用します。地方税法72条の49の17第2項も、区分された事業を併営する場合の所得を、各事業の所得金額に按分して算定すると定めています。

最初に、各事業がどの区分に入るかを確かめます。70業種の名称は個人事業税の法定70業種一覧、名称だけでは判別しにくい事業は個人事業税がかからない業種も確認してください。

複数事業の個人事業税はどの順で計算するか

個人事業税の所得は、所得税の確定申告書にある事業所得をそのまま使うとは限りません。青色申告特別控除は個人事業税では適用されないため、控除済みなら足し戻します。

  1. 事業別の所得を分ける
    売上と必要経費を事業ごとに区分し、各事業の所得を確認します。
  2. 個人事業税の所得へ調整する
    青色申告特別控除を足し戻し、非課税所得や個人事業税で認められる控除を調整します。
  3. 全体から事業主控除を引く
    事業主控除は年間290万円です。年の途中で開業・廃業した場合は月割りになります。
  4. 課税標準を事業別に按分する
    控除後の課税標準を、税率が異なる各事業の所得比率で分けます。
  5. 税率を掛けて合計する
    按分した課税標準へ3%・4%・5%の該当税率を掛け、税額を合計します。

所得税との調整項目は個人事業税の所得計算、年途中の事業主控除は事業主控除の月割りに分けて整理しています。

富山県の公式例で按分を確かめる

富山県は、不動産貸付業(第1種・5%)とマッサージ業(第3種・3%)を兼業する例を公開しています。前提は、不動産所得600万円、マッサージ業所得200万円、青色申告特別控除65万円、事業主控除290万円です。

項目公式設例の金額処理
全体の課税標準575万円600万円+200万円+65万円−290万円
不動産貸付業の課税標準442万円575万円×(600万円+65万円)÷865万円(千円未満切り捨て)
不動産貸付業の税額22万1,000円442万円×5%
マッサージ業の課税標準132万9,000円575万円×200万円÷865万円(千円未満切り捨て)
マッサージ業の税額3万9,800円132万9,000円×3%
税額の合計26万800円税率別の税額を合計

この設例で事業主控除290万円を2事業へそれぞれ適用していない点が、兼業時の重要な確認箇所です。また、青色申告特別控除65万円は個人事業税では使えないため、全体の所得へ足し戻されています。

按分の比率は、この設例では不動産貸付業が(600万円+65万円)÷865万円、マッサージ業が200万円÷865万円です。足し戻した青色申告特別控除65万円は、不動産所得の側に加えて比率を出しています。所得だけの600万円:200万円で割った比率とは一致しないため、分母・分子は公式例の式で確かめてください。

各課税標準は千円未満を切り捨て、税額は百円未満を切り捨てます。

この表は富山県の公表例を読みやすく並べ替えたものです。個別の税額は、事業区分、専従者給与、非課税所得、損失控除、営業月数などで変わります。

課税事業と非課税事業を兼業するときはどうするか

税率が違う事業の兼業とは別に、個人事業税が課税される事業と課税されない事業を併営する場合があります。兵庫県の手引きは、林業、鉱物掘採業、社会保険診療に係る所得、法定業種に該当しない事業の所得などを「非課税所得など」の欄へ記載するよう案内しています。

課税事業と非課税事業は、売上と必要経費を帳簿で区分しておくのが基本です。兵庫県の手引きは、区分経理が行われていない場合、所定の特例に準じて計算するとしています。

  • 同じ請求書に複数事業の売上が含まれるのに、事業別の内訳を残していない
  • 共通経費をどの基準で各事業へ分けたか、帳簿やメモに根拠がない
  • 非課税事業の所得があるのに、確定申告書第二表の該当欄を空欄にしている
対処:売上・直接経費は事業別に記帳し、共通経費は使用面積、利用時間、売上など、継続して使える合理的な基準を決めて記録します。実際の区分が難しい場合は、申告前に都道府県税事務所へ確認してください。

確定申告書第二表には何を書くか

所得税の確定申告をすれば、通常は個人事業税の申告もあったものとして扱われます。ただし、個人事業税の計算に必要な情報は、確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」に記載します。

兼業で確認する欄記載する内容
非課税所得など該当する番号と、課税されない事業の所得金額
青色申告特別控除額不動産所得から差し引いた控除額がある場合の金額
前年中の開(廃)業年途中に開始・廃止した事業がある場合の日付
他都道府県の事務所等該当欄への印と、所在地・月末ごとの従業員数を記した添付

兵庫県の手引きは、該当項目がある人にこの欄の記載を求めています。複数の事業のうち非課税所得がある場合は、事業の番号と所得金額を分けて確認します。

どこで間違えやすいか

  • 事業主控除を各事業へ重ねて使う:年290万円の控除は、全事業を通じて一つです。
  • 一番高い税率を全所得へ掛ける:税率が異なる事業は、課税標準を所得比率で按分します。
  • 確定申告の事業所得へそのまま税率を掛ける:青色申告特別控除の足し戻しなど、個人事業税独自の調整があります。
  • 課税されない事業の所得を分けない:申告書第二表の「非課税所得など」と帳簿の区分が必要です。

複数事業の個人事業税で迷いやすいことは何か

二つの事業をしていると、事業主控除290万円も二つ使えますか。
使えません。事業主控除は全事業を通じて年290万円です。控除後の課税標準を、各事業の所得比率で按分します。
税率5%と3%の事業を兼業すると、どちらの税率になりますか。
どちらか一方にはなりません。課税標準を事業ごとの所得に按分し、5%の部分と3%の部分をそれぞれ計算して合計します。
課税されない事業もしている場合、確定申告書に書きますか。
はい。確定申告書第二表の「非課税所得など」に、該当する番号と所得金額を記載します。帳簿でも課税事業と非課税事業を区分しておきます。
兼業の所得を分けて記帳していなかった場合はどうしますか。
都道府県の手引きでは、区分経理がない場合の特例計算があります。事業内容と帳簿を用意し、所管の都道府県税事務所へ確認してください。

次に何を確認するか

どの公式一次情報で確認したか

本記事について。税理士監修前の概説です。2026年11月5日時点の地方税法と都道府県の公式資料にもとづく一般的な整理で、個別の事業区分や税額を判定するものではありません。所管の都道府県税事務所または税理士にご確認ください。