個人事業税の所得計算が所得税と違う点(青色控除・専従者・繰越)
確定申告の事業所得から、青色申告特別控除の加算、専従者の扱い、損失の繰越、290万円の事業主控除までの順序を整理します。
2026年時点の制度個人事業税の課税標準は、前年の個人の事業の所得です。所得税の確定申告書の事業所得を出発点にしますが、青色申告特別控除は使えないなど、所得税と同じ金額にはなりません。
- 出発点:所得税の確定申告書にある事業所得(不動産所得を含む場合あり)。
- 加算:青色申告特別控除額は個人事業税では適用がないため、所得金額に加算します。
- 差し引き:損失の繰越控除、そのあとに年290万円の事業主控除(事業期間が1年未満なら月割り)。
税率は業種の区分で分かれます。業種ごとの区分は個人事業税の法定70業種一覧(第1種・第2種・第3種)にあります。
所得税と個人事業税の所得計算の違い
個人事業税の所得は、事業の総収入金額から必要な経費を引いて求めます。地方税法は、所得税法の不動産所得・事業所得の計算の例によると定めています(地方税法第72条の49の12第1項)。
経費の考え方は所得税とほぼ同じで、違いが出るのは控除と繰越の部分です。主な違いは次の表のとおりです。
| 項目 | 所得税の確定申告 | 個人事業税 |
|---|---|---|
| 対象期間 | その年の1月1日から12月31日 | 前年1月1日から12月31日の所得 |
| 青色申告特別控除 | 受けた場合は所得から差し引く | 適用がないため所得に加算する |
| 青色事業専従者給与 | 届出額の範囲で給与を経費にする | 給与支払額を経費にする(所得税の額を基準にする) |
| 基礎控除などの所得控除 | 社会保険料控除・基礎控除などを引く | これらは引かない。事業主控除290万円だけを引く |
廃業した年の扱いは個人事業税の納付時期と計算例で整理しています。
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青色申告特別控除は加算して戻す
東京都主税局は、個人の事業税には青色申告特別控除の適用がないため、所得金額に加算すると案内しています。所得税の事業所得は青色申告特別控除を引いたあとの金額なので、そのまま使うと個人事業税の所得が小さく見えます。
青色申告特別控除を受けている人は、確定申告書の事業所得に控除額を足し戻してから考えます。この足し戻しを忘れると、納税通知書の金額が想定より大きく感じられます。
青色申告特別控除そのものの仕組みは青色申告特別控除65万円の条件で確認できます。
専従者の給与の扱い
生計を一にする親族が専ら事業に従事している場合、個人事業税でも一定額を必要経費に入れられます。ただし、条文上の要件があり、15歳未満の人は対象外です(地方税法第72条の49の12第2項・第3項)。
- 青色申告の場合:所得税の青色事業専従者給与の届出書に書いた方法・金額の範囲で支払った給与を経費にします。
- 白色申告の場合:配偶者は86万円、その他の人は1人50万円までです。ここから、専従者控除前の所得を専従者の数に1を足した数で割った額と比べて、低いほうが上限になります。
- 申告が必要:白色の専従者の扱いは、事業税の申告をした場合に限り適用されます(同条第4項)。
所得税側の専従者給与や専従者控除の金額と、事業税側の金額は一致するとは限りません。違いがあるときは、その差が所得の加算・減算として表れます。
損失の繰越控除と譲渡損失
赤字になった年があるとき、個人事業税の所得計算でも次の控除ができます。いずれも、損失が出た年から毎年連続して所得税・住民税・事業税のいずれかの申告をしていることが条件です。
| 控除の種類 | 対象 | 繰越期間 |
|---|---|---|
| 損失の繰越控除 | 青色申告者の事業所得の赤字 | 翌年以降3年間 |
| 被災事業用資産の損失の繰越控除 | 震災・風水害・火災などで生じた事業用資産の損失(青色でなくても可) | 翌年以降3年間 |
| 譲渡損失の控除 | 機械・装置・車両など直接事業に使う資産を売って出た損失(土地・家屋等は除く) | その年に控除。青色申告者は翌年以降3年間繰越可 |
白色申告の人は、通常の赤字を翌年に繰り越して事業税の所得から引くことはできません。青色申告の承認を受けているかどうかで、この点が分かれます(地方税法第72条の49の12第6項・第7項・第13項・第14項)。
事業所得と不動産所得をあわせて営んでいる場合は、その損益を合算・通算して所得を出します(同条第5項)。不動産所得の貸付がそもそも個人事業税の課税対象になるかは、貸している規模で決まります。基準は不動産賃貸・駐車場に個人事業税がかかる基準で整理しています。
事業主控除290万円と月割り
事業を行う個人は、事業の所得から年290万円を差し引けます(地方税法第72条の49の14)。これが事業税の基礎控除にあたる事業主控除です。
事業を行った期間が1年に満たない年は、290万円に事業を行った月数をかけて12で割った額になります。月数は暦に従って数え、1か月に満たない端数は1か月とします。
たとえば7月から12月まで6か月だけ事業をした年の事業主控除は、290万円×6÷12=145万円です。
控除の順序は条文で決まっています。まず損失の繰越控除(青色の繰越、被災事業用資産の繰越)、次に譲渡損失の控除と繰越、最後に事業主控除の順です(同法第72条の49の12第15項)。事業主控除を先に引いて損失の繰越控除を後回しにすることはできません。
計算例
次の条件で、東京都の個人事業税(税率5%の第1種事業)を概算します。専従者給与や繰越損失はなく、通年営業とします。
- 青色申告特別控除65万円を受け、確定申告書の事業所得は500万円
- 事業税の所得:500万円+65万円(加算)=565万円
- 事業主控除後:565万円-290万円=275万円
- 税額:275万円×5%=13万7,500円
青色申告特別控除を加算し忘れて事業所得500万円から290万円だけを引くと、210万円×5%=10万5,000円となり、実際より3万2,500円(65万円×5%)少なく見積もります。
実際の税額は都道府県の納税通知書で決まります。業種別の税率は個人事業税の対象業種と税率も参照してください。
次に読む
個人事業税の納付時期(8月・11月)と計算例
個人事業税の対象業種・税率・かからない業種
個人事業税の申告が不要な場合としなかった場合
事業主控除の月割(1〜12か月の控除額一覧)
青色申告特別控除65万円の条件
個人事業税の税率・納期・申告の要否を状況別にまとめた一覧は個人事業税のまとめにあります。
公式一次情報
よくある質問
- 個人事業税の所得は、確定申告書の事業所得と同じですか?
- 同じとは限りません。青色申告特別控除を受けている場合は、個人事業税では適用がないため控除額を所得に加算します。専従者の扱いや損失の繰越にも違いがあります。
- 赤字の年は、翌年の個人事業税の所得から引けますか?
- 青色申告者は事業所得の赤字を翌年以降3年間繰り越して控除できます。白色申告の人は、通常の赤字の繰越はできませんが、災害による事業用資産の損失は繰越控除の対象です。いずれも申告を続けていることが条件です。
- 開業した年の事業主控除はいくらですか?
- 290万円に事業を行った月数をかけて12で割った額です。月数は暦に従い、1か月に満たない端数は1か月として数えます。

