雇用関係助成金に共通する受給の前提(支給要件・不支給事由・不正受給の扱い)と勧誘への注意
従業員を雇う会社が使う雇用関係助成金には、どの助成金にも共通する決まりが「雇用関係助成金共通要領」に書かれています。コースごとの金額や条件を見る前に確認しておく前提と、「無料査定」などの勧誘への注意を、厚生労働省の資料で整理します。
従業員を雇う・助成金キャリアアップ助成金や業務改善助成金など、個別の助成金の記事を読む前に、どの助成金にも当てはまる前提を知っておくと、申請してから「そもそも対象外だった」となるのを避けられます。共通要領は、支給の要件、支給しない場合、不正受給の扱いを全助成金に共通して定めています。
全助成金に共通する要件は、申請日と支給決定日に雇用保険の被保険者がいる事業所の事業主であること、審査・調査に必要な書類を整えて保管し協力することです。労働保険料の未納や不正受給があれば支給されず、不正受給は事業主が責任を問われ、5年間助成金を受けられません。
共通の支給要件
共通要領の0301は、助成金を次のイからニまでのすべてに当てはまる事業主等に支給すると定めています。
- 雇用保険適用事業所の事業主であること。支給申請日と支給決定日の時点で、雇用保険の被保険者がいる事業所の事業主であることが条件です。
- 審査や、支給決定後の調査に必要な書類等を整備し、保管していること。
- 管轄の労働局長が求める書類の提出・提示や、実地調査への協力など、審査と調査に協力すること。
- 個別の助成金の要領に定めがあるときは、その助成金ごとの要件を満たすこと。
つまり、従業員を雇って雇用保険に加入していることが出発点です。役員だけの会社で雇用保険の被保険者がいなければ、この要件を満たしません。雇用保険の加入条件は法人成りと雇用保険の加入条件で扱っています。
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支給されない場合(不支給要件)
0302は、上の要件に当てはまっていても、次のいずれかに当てはまる事業主等には支給しないと定めています。主なものを挙げます(すべての項目と細かい例外は要領の原文で確認してください)。
- 不正の行為で助成金を受けた(受けようとした)ことで、申請日または支給決定日の時点で不支給措置を受けている。
- 助成金の支給に係る事業所で、申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納付していない。ただし、申請日の翌日から2か月以内に納付した場合などは除かれます。
- 助成金の支給に係る事業所で、申請日の前日から1年前の日から前日までの間に、労働関係法令の違反を行った。
- 風俗営業等関係の事業主、暴力団関係の事業主などに当たる。
- 審査や調査への協力、不正受給が発覚したときの事業主名の公表、支給済みの助成金の返還などについて、承諾していない。
- 「支給要件確認申立書」の別紙「役員等一覧」などを提出していない。
- 申請書等に事実と異なる記載や証明を行っている。
- 不受理期間中の社会保険労務士または代理人に申請を任せた。
労働保険料の未納は、従業員を雇う会社が見落としやすい点です。労働保険料の年度更新を忘れていないかを、申請前に確かめておく必要があります。
申請期間と書類の保存
0401は、支給申請を各助成金の要領で定める日の翌日から起算して2か月以内に行うと定めています。郵送や電子申請でも、申請期間内に労働局へ届いている必要があります。
期間の末日が土日祝日や12月29日から1月3日に当たるときは、翌開庁日が末日とみなされます。天災などやむを得ない理由があるときは、理由がやんだ後1か月以内に理由を記した書面を添えて申請できます。
0404は、提出または提示した書類の原本(原本を提出したときはその写し。電子情報を含む)などを、支給決定日の翌日から起算して5年間保存するよう定めています。社会保険労務士や代理人が申請したときは、提出した書類の写しを事業主へ渡すことも求められます。
個別の助成金の申請期限は、助成金ごとの要領で異なります。申請順序の例はキャリアアップ助成金(正社員化コース)の申請順序、トライアル雇用助成金、人材育成支援コースで確認できます。
不正受給の扱い(返還・5年間の不支給・公表)
不正受給は、偽りその他不正の行為により、本来受けられない助成金を受け、または受けようとすることです。共通要領は次の扱いを定めています。
| 項目 | 内容(要領の条) |
|---|---|
| 返還と上乗せ | 支給済みの助成金の返還に加え、不正受給の日の翌日から納付の日まで年3%の延滞金と、返還額の2割に相当する額を請求する(0701。令和2年3月31日以前の申請は年5%) |
| 5年間の不支給 | 不支給とした日または支給を取り消した日から5年間、助成金を支給しない(0702)。関与した役員が他の事業主の役員になっている場合は、その事業主にも同じ期間支給しない。期間が過ぎても請求金が未納なら、全額納付まで延長する |
| 事業主名の公表 | 合計額が100万円以上で、返還を命じた日から1か月以内に請求金が全額納付されないとき、または特に重大・悪質と認めるときに公表する(0705) |
| 社会保険労務士・代理人 | 不正に関与したときは、同じく請求の対象になり、5年間は申請を受理されない(0701・0902) |
厚生労働省のリーフレットは、経営コンサルタントを名乗る事業者の指南で虚偽の申請書を出した場合や、申請代理人が不正を行った場合でも、事業主が不正受給を問われると注意しています。役員、従業員、社会保険労務士、代理人など、申請や書類作成に関わった人が不正を行った場合も、事業主の不正受給に当たります。
助成金の勧誘への注意
厚生労働省の「事業主の方のための雇用関係助成金」のページには、厚生労働省の委託事業者を名乗り、助成金の申請や助成対象の診断、受給額の無料査定をするといった書面を送って勧誘する者の情報が寄せられていると載っています。厚生労働省はこの勧誘に関与していません。
リーフレット「助成金に関する勧誘にご注意ください」には、次の内容があります。
- 厚生労働省や労働局・ハローワークが、特定の事業者に助成金の勧誘を委託することはない。
- こうした事業者は、手数料や報酬などを目的に、本来受けられない助成金の受給を提案している可能性がある。
- 不正を行った場合、事業主は助成金の返還を求められるだけでなく、事業主名が原則公表され、5年間助成金を受けられなくなる。
- 相談は、都道府県労働局またはハローワークへ。
FAXや電話で「無料で診断できる」「必ず受給できる」と持ちかけられたら、その場で依頼せず、労働局かハローワークに確認するのが安全です。個別の助成金の条件は、業務改善助成金のように助成金ごとに異なります。助成金を受け取ったあとの税金の扱いは補助金・助成金の税金で扱っています。
まとめ
- 共通の要件は、申請日と支給決定日に雇用保険の被保険者がいる事業所の事業主であること、必要書類を整えて保管し、審査と調査に協力すること。
- 労働保険料の未納、直近1年の労働関係法令違反、不正受給による不支給措置中などは、支給されない。
- 支給申請は各助成金の定める日の翌日から2か月以内、書類は支給決定日の翌日から5年間保存する。
- 不正受給は、返還、年3%の延滞金、返還額の2割の上乗せ、5年間の不支給の対象になる。事業主名の公表は、要領が定める場合に行われる。
- 代理人や事業者に任せた申請で不正があっても、事業主が責任を問われる。
- 厚生労働省は助成金の勧誘を特定の事業者に委託していない。迷ったら労働局かハローワークへ。
公式一次情報
- 厚生労働省 雇用関係助成金共通要領(第1 共通要領。令和8年10月22日版)(0301・0302・0401・0404・0701・0702・0705・0902。2026-11-01確認)
- 厚生労働省 事業主の方のための雇用関係助成金(助成金に関する勧誘へのご注意。2026-11-01確認)
- 厚生労働省 リーフレット「助成金に関する勧誘にご注意ください」(2026-11-01確認)
よくある質問
- 役員だけの会社でも雇用関係助成金を受けられますか?
- 共通要領では、支給申請日と支給決定日の時点で雇用保険の被保険者がいる事業所の事業主であることが要件です。被保険者がいなければ要件を満たしません。
- 労働保険料を滞納していると助成金は出ませんか?
- 申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納付していないと支給されません。申請日の翌日から2か月以内に納付した場合などは除かれます。
- 社会保険労務士に任せた申請で不正があった場合、責任は誰にありますか?
- 厚生労働省のリーフレットによると、社会保険労務士や代理人が不正を行った場合でも、事業主の不正受給に当たります。社会保険労務士や代理人にも請求や不受理の措置があります。
- 不正受給をするとどうなりますか?
- 助成金の返還に加え、年3%の延滞金と返還額の2割の請求があり、不支給とした日または支給を取り消した日から5年間は助成金を受けられません。公表の対象になる場合もあります。
- 「厚生労働省の委託で無料査定」という連絡が来たら?
- 厚生労働省は特定の事業者に助成金の勧誘を委託していません。依頼する前に、都道府県労働局またはハローワークへ相談してください。

