キャリアアップ助成金(正社員化コース)の申請順序|初回雇用から税務まで
有期雇用の従業員を正社員へ転換するときの対象外条件、初めて雇う日の保険手続き、転換前の計画と就業規則、前後6か月の賃金、申請期限、法人の税務を、令和8年度の順に説明します。
厚生労働省の制度給与を上げた個人事業主の所得税の控除は、個人事業主の賃上げ促進税制の記事を見てください。
キャリアアップ助成金の正社員化コースは、非正規雇用の従業員を正社員へ転換する事業主を支援する制度です。初めから正社員として雇う人ではなく、原則として有期雇用などで6か月以上働いた人を、決められた順序で正社員へ転換する場合が対象です。
最初に確認する対象外条件
正社員化コースは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などを正社員へ転換する制度です。初めて従業員を雇っただけで受給できる制度ではありません。
- 正社員として雇うことを約束して採用した人:有期雇用などを経由しても、正社員前提の採用なら対象になりません。
- 雇入れから1年未満の新規学卒者:申請事業主が新卒として雇い入れてから1年を経過していない人は対象外です。卒業前から雇用していた人は、卒業後から起算して1年以上経過した場合に対象となり得ます。
- 転換前の雇用が6か月未満の人:原則として、転換日の前日までに申請事業主のもとで6か月以上雇用されている必要があります。
- 転換前後で適用する賃金規則が同じ人:正社員とは異なる賃金の額または計算方法を定めた就業規則などが、転換前6か月以上適用されている必要があります。
申請事業主が実施した人材開発支援助成金の人材育成支援コースで、有期実習型訓練を受講・修了した人には例外があります。雇入れから転換日まで異なる賃金規則が適用されていれば、雇用6か月未満でも対象となり得ます。
転換時点で、賞与または退職金の制度と、昇給のある正社員制度が適用されることも確認します。雇用契約書の名称だけを変えるのでは足りません。
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初めて雇う日から申請までの時系列
初回雇用の届出と、助成金の手続きは別の期限で進みます。雇入れ日から支給申請までを並べると、次の順序です。
労働保険・雇用保険・社会保険の対象を判定し、期限内に届出をします。
キャリアアップ計画は、正社員へ転換する日の前日までに提出します。
就業規則または労働協約に、正社員への転換制度を定めます。
原則として転換前に6か月以上雇用し、規定した手続きに従って正社員へ転換します。
転換前6か月と比べて、転換後6か月の賃金を3%以上増額します。
転換後6か月分の賃金を支払った日の翌日から、2か月以内に支給申請をします。
初回雇用時の保険手続きと期限
法人が初めて従業員を雇うと、助成金の計画とは別に保険の届出が発生します。対象になる従業員の資格取得手続きも含めて、主な期限を先に管理します。
| 手続き | 主な期限 | 提出先 |
|---|---|---|
| 労働保険の保険関係成立届 | 保険関係成立日の翌日から10日以内 | 労働基準監督署 |
| 労働保険の概算保険料申告・納付 | 保険関係成立日の翌日から50日以内 | 労働基準監督署・都道府県労働局・金融機関 |
| 雇用保険適用事業所設置届 | 設置日の翌日から10日以内 | ハローワーク |
| 雇用保険被保険者資格取得届 | 雇入れ日の属する月の翌月10日まで | ハローワーク |
| 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 | 事実発生から5日以内 | 事務センターまたは年金事務所 |
労働保険と雇用保険の詳しい書類は、従業員を雇う法人の労働保険手続きで整理しています。パートの社会保険加入は、パート・アルバイトの社会保険加入基準で判定できます。
計画・就業規則・正社員転換の順序
キャリアアップ計画の提出と、就業規則などへの転換制度の規定は、正社員への転換より前に済ませます。後から規定を作って、すでに行った転換へさかのぼって使う順序ではありません。
就業規則には、転換の対象、手続き、要件、実施時期などを定めます。常時10人以上の事業所は、就業規則を労働基準監督署へ届け出ます。
常時10人未満でも、助成金に使う就業規則は取組日までに施行します。支給申請前に労働基準監督署へ届け出るか、事業主と労働組合などの氏名を記した申立書を添付する扱いが、厚生労働省の案内に示されています。
就業規則の必須事項と届出手順は、就業規則の必要記載事項で確認できます。
転換前後6か月の賃金要件と申請期限
正社員への転換後、勤務日数が11日以上の月が6か月に達するまでに支払った賃金は、転換前6か月間の賃金より3%以上増えている必要があります。比較は単月ではなく、それぞれ6か月分で行います。
有期実習型訓練修了者の例外で転換前の雇用が6か月未満なら、転換前は実際の雇用期間に応じた賃金を使います。
支給申請の受付期間は、転換後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内です。転換日から一律8か月と数えるのではなく、会社の賃金支払日を基準にします。
令和8年度の助成額
令和8年度の正社員化コースは、転換前の雇用区分と、重点支援対象者かどうかで助成額と支給回数が分かれます。中小企業の金額は次のとおりです。
| 転換 | 重点支援対象者 | それ以外 |
|---|---|---|
| 有期雇用から正社員 | 80万円(40万円×2期) | 40万円(1期) |
| 無期雇用から正社員 | 40万円(20万円×2期) | 20万円(1期) |
転換制度を新たに設けて転換した場合は、中小企業で20万円の加算があります。多様な正社員制度を新設した場合は40万円、情報公表加算は20万円です。各加算は1事業所につき1回です。
情報公表加算は、2026年4月8日以降に対象労働者を転換し、キャリアアップ計画期間中に指定情報を公表した事業主が対象です。ほかの加算にも対象条件があるため、申請年度のパンフレットとチェックリストで確認します。
重点支援対象者の第2期申請
表の80万円または40万円は一括支給ではなく、第1期と第2期に分けて申請します。第2期には、正社員転換後12か月以上の継続雇用と、12か月分の賃金支払が必要です。
転換後6か月分の賃金を支払った日の翌日から、2か月以内に申請します。
第1期の6か月と次の6か月を比べ、合理的な理由なく賃金を引き下げないことも要件です。
転換後12か月分の賃金を支払った日の翌日から、2か月以内に申請します。第1期が不支給なら、第2期は申請できません。
支給決定後の法人税・消費税
国税庁の法人税基本通達は、雇用の改善などによる奨励金は、支給決定日の属する事業年度の益金に算入するとしています。入金日だけで判断せず、支給決定日と決定通知書を基準に決算年度を確認します。
通達はキャリアアップ助成金の現行コース名や仕訳科目を直接指定していません。支給決定が決算日前後にまたがる場合は、制度の支給決定日と自社の会計処理を照らして判断します。
消費税では、国や地方公共団体からの補助金・助成金は、一般に資産の譲渡やサービスの対価ではありません。そのため、消費税の課税対象外である不課税取引として扱います。
個人事業主が受ける補助金や、設備取得時の特例は補助金・助成金の税金で分けて解説しています。
まとめ
- 正社員化コースは、正社員前提で採用した人ではなく、有期雇用などから制度に沿って転換する場合の助成です。
- キャリアアップ計画は転換日の前日までに提出し、転換制度は就業規則などへ事前に規定する。
- 転換前6か月と転換後6か月を比較し、賃金を3%以上増額する。
- 支給申請は、転換後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内。
- 重点支援対象者の第2期は、転換後12か月分の賃金支払後に別途申請する。
- 法人税は支給決定日の属する事業年度の益金が基本で、消費税は課税対象外。
賃金の引上げと設備投資に使う別の助成金は業務改善助成金で解説しています。
ハローワークの紹介で人を試しに雇う助成金はトライアル雇用助成金で解説しています。
公式一次情報
- 厚生労働省「キャリアアップ助成金」(制度の対象コース、令和8年度資料、申請様式の案内。2026-10-13確認)
- 厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度)」(正社員化コースの順序、前後6か月、3%以上の賃金増額、申請期限、助成額と加算。2026-10-13確認)
- 厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度・詳細版)」(有期実習型訓練修了者の例外、重点支援対象者の第2期、情報公表加算の要件。2026-10-13確認)
- 厚生労働省「正社員化コース支給申請チェックリスト」(正社員前提採用の除外、転換前の雇用期間・賃金規則、転換後の制度。2026-10-13確認)
- 厚生労働省「令和8年度キャリアアップ助成金Q&A」(新規学卒者の扱い、令和8年度の制度変更。2026-10-13確認)
- 厚生労働省「キャリアアップ助成金の申請様式ダウンロード」(常時10人未満の事業所が作る就業規則の施行・届出・申立書。2026-10-13確認)
- 兵庫労働局「労働者を初めて雇用したときの手続」(労働保険・雇用保険の届出と期限。2026-10-13確認)
- 日本年金機構「従業員を採用したとき」(健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届は事実発生から5日以内。2026-10-13確認)
- 国税庁「法人税基本通達2-1-42」(雇用改善等の奨励金は支給決定日の属する事業年度の益金。2026-10-13確認)
- 国税庁「No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例」(補助金・助成金は一般に対価を得る取引でなく、消費税の課税対象外。2026-10-13確認)
よくある質問
- 初めて雇う従業員を正社員にすれば、助成金の対象になりますか?
- 正社員前提で採用した人は対象になりません。原則として有期雇用などで6か月以上雇用し、転換前の計画提出と就業規則などの転換制度に沿って正社員へ転換する必要があります。有期実習型訓練修了者には、雇用6か月未満でも対象となり得る例外があります。
- キャリアアップ計画はいつまでに出しますか?
- 正社員へ転換する日の前日までです。就業規則などへの転換制度の規定も、転換より前に済ませます。
- 支給申請は転換日から何か月以内ですか?
- 第1期は、転換後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内です。重点支援対象者の第2期は、転換後12か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に別途申請します。
- 従業員が10人未満でも、就業規則は必要ですか?
- 労働基準法上の届出義務は常時10人以上ですが、助成金に使う転換制度は就業規則などに定めます。10人未満の事業所は、取組日までに施行し、支給申請前の届出または申立書の添付が必要です。
- キャリアアップ助成金に消費税はかかりますか?
- 一般に補助金・助成金は物やサービスの対価ではないため、消費税の課税対象外です。法人税では、雇用改善等の奨励金は支給決定日の属する事業年度の益金とする扱いがあります。
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