有給休暇の年5日取得義務|対象者・時季指定の手順・管理簿・罰則
従業員を雇った会社が守る、年5日の有給休暇の取得義務を、条文と厚生労働省の資料にそって整理します。
厚生労働省の制度法人成りをして従業員を雇うと、年次有給休暇は「従業員が申し出たら与える」だけでは足りません。年10日以上の有給休暇がある従業員には、会社が年5日を確実に取得させる義務があります。
この記事では、義務の対象になる人、5日の数え方、会社が取得日を指定するときの手順、管理簿の作成と保存、守らなかった場合の罰則を、労働基準法の条文と厚生労働省の資料で確認します。付与日数の増え方そのものは法人成りと有給休暇の継続勤務年数で説明しています。
義務の対象になるのは年10日以上の有給休暇がある人
根拠は労働基準法39条7項です。
対象は、会社が与えなければならない有給休暇が年10日以上ある従業員です。正社員だけでなく、パートやアルバイト、有期雇用の従業員も、日数が10日以上になれば対象です。厚生労働省の資料も、管理監督者や有期雇用労働者を含むとしています。
週の所定労働日数が少ない従業員には、日数を按分する「比例付与」があります。比例付与の対象は、週の所定労働時間が30時間未満で、週の所定労働日数が4日以下(年間の所定労働日数が216日以下)の従業員です(労働基準法施行規則24条の3)。
| 継続勤務期間 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 週5日以上(通常) | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
| 週4日(年169〜216日) | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
週4日勤務の従業員は、入社から3年6か月たって付与日数が10日になった時点から対象に入ります。週3日以下の従業員の日数は、施行規則24条の3の表で確認してください。
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5日の数え方と期限
5日は、有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に取得させます。基準日は、最初は入社から6か月たった日で、その後は1年ごとに来ます。従業員ごとに基準日が違えば、期限も従業員ごとに違います。
次の日数は、5日に数えることができ、その分は会社が時季を指定する必要がありません(法39条8項)。
- 従業員が自分で請求して取得した日数
- 労使協定による計画的付与(計画年休)で与えた日数
たとえば従業員が自分で3日取得していれば、会社が指定して取得させる日数は残りの2日です。すでに5日以上取得している従業員には、会社による時季指定は必要ありません。
法定の基準日より前に有給休暇を与える運用(入社日にあわせた前倒しなど)をしている場合は、5日を取得させる期間の起点が変わります。施行規則24条の5が、第一基準日・第二基準日を使った数え方を定めています。
時季指定の手順(意見聴取と就業規則)
従業員が自分で取得せず、期限が近づいたときは、会社が取得日を決めて取得させます。これを時季指定といいます。会社が守る手順は次の3つです。
- 従業員に伝える:年5日を会社が時季を指定して与えることを、従業員に明らかにします(施行規則24条の6第1項)。
- 意見を聴く:取得する時季について、従業員本人の意見を聴きます(同条第1項)。
- 意見を尊重する:聴いた意見を尊重するよう努めます(同条第2項)。
厚生労働省のパンフレットは、時季指定をするなら就業規則に「対象になる従業員の範囲」と「時季指定の方法」を書く必要があるとしています。規定例は次の趣旨です。
就業規則を作成・変更したときは、労働基準監督署への届出が必要です。作成の全体像は法人成りの就業規則の記載事項を参照してください。
年次有給休暇管理簿の作成と保存
会社は、時季指定の義務を果たしていることを確認するため、従業員ごとに年次有給休暇管理簿を作ります。記載する項目は次の3つです(施行規則24条の7)。
- 取得した時季(取得日)
- 付与した日数
- 基準日(第一基準日・第二基準日を含む)
管理簿は、有給休暇を与えた期間中と、その期間の満了後に一定年数、保存します。e-Govで確認した現在の施行規則24条の7は満了後5年間と定めています。厚生労働省の解説ページには「3年間」と書かれたものもありますが、運用は条文の5年にそろえると安全です。
管理簿は、労働者名簿や賃金台帳とあわせて作ることもできます(施行規則55条の2)。賃金台帳などの整備は労働者名簿・賃金台帳の作り方で説明しています。
守らなかった場合の罰則
労働基準法120条1号は、39条7項に違反した者を30万円以下の罰金に処すると定めています。厚生労働省の解説も、意見聴取を定めた施行規則24条の6を含め、違反には30万円以下の罰金の規定があると説明しています。
実際の適用は労働基準監督署の判断になるため、不安があるときは社会保険労務士へ相談してください。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「労働基準法」(39条1項〜3項の付与日数、7項・8項の年5日の時季指定と控除、120条1号の罰則)
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」(24条の3の比例付与、24条の5の基準日、24条の6の意見聴取、24条の7の年次有給休暇管理簿、55条の2)
- 厚生労働省パンフレット「2019年4月から、事業主は、全ての労働者に年5日以上の年次有給休暇を取得させなければなりません。」(就業規則への記載と規定例)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」年次有給休暇(使用者の年休付与義務、時季指定の意見聴取、付与日数、罰則の解説)
よくある質問
- 年5日の取得義務はパートやアルバイトにも適用されますか?
- 適用されます。会社が与えなければならない有給休暇が年10日以上になった従業員が対象で、雇用形態は問いません。週の所定労働日数が少ない従業員も、比例付与で10日以上になれば対象です。
- 従業員が自分で取得した日は5日に数えられますか?
- 数えられます。従業員が請求して取得した日や、計画的付与で与えた日の日数分は、会社が時季を指定する必要がありません(労働基準法39条8項)。
- 会社が取得日を指定するとき、従業員の同意は必要ですか?
- 同意までは求められていませんが、取得する時季について従業員本人の意見を聴き、その意見を尊重するよう努める必要があります(施行規則24条の6)。
- 就業規則に書かないと時季指定はできませんか?
- 厚生労働省のパンフレットは、時季指定をする場合は、対象の従業員の範囲と時季指定の方法を就業規則に記載する必要があるとしています。
- 年次有給休暇管理簿は何年保存しますか?
- e-Govの施行規則24条の7は、有給休暇を与えた期間中と、その期間の満了後5年間と定めています。古い解説では3年間とされていることがあるため、条文を確認してください。
- 年5日を取得させないと罰則はありますか?
- あります。労働基準法120条1号により、39条7項に違反した者は30万円以下の罰金に処せられます。
まとめ
- 年10日以上の有給休暇がある従業員には、基準日から1年以内に会社が5日を取得させる義務がある(労働基準法39条7項)。
- パートや有期雇用も対象で、比例付与でも10日以上になれば対象に入る。週4日勤務なら3年6か月たった時点から。
- 従業員が自分で取った日と計画的付与の日数は5日に数え、残りだけを会社が時季指定する。
- 時季指定は、従業員に伝えて意見を聴き、尊重する。就業規則に対象と方法を書き、変更したら労働基準監督署へ届け出る。
- 年次有給休暇管理簿に取得日・日数・基準日を記録し、条文どおり満了後5年間保存する。違反すると30万円以下の罰金。
次に知りたいことは、有給休暇の継続勤務年数と付与日数、労働条件通知書の明示事項、36協定、残業代の割増率と計算方法です。
