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不動産賃貸業の消費税|簡易課税と本則課税の有利不利(住宅家賃は非課税・第6種40%・試算)

住宅の家賃は非課税、事務所の家賃は課税です。この違いが、簡易課税(第6種・みなし仕入率40%)と本則課税の納税額にどう出るかを、国税庁の案内にそって数字で比べます。

国税庁の制度
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

不動産賃貸業が消費税の課税事業者になると、簡易課税は不動産業の第6種事業(みなし仕入率40%)で計算します。計算に入るのは課税される事務所などの家賃だけで、非課税の住宅家賃は入りません。本則課税との有利不利は、事務所側の仕入れ(改装・修繕など)が大きい年かどうかで分かれます。

住宅と事務所の家賃の区別は住宅と事務所の家賃の消費税、届出の期限と2年間の制限は簡易課税制度選択届出書で説明しています。ここでは賃貸業の試算に絞ります。

計算に入る家賃と入らない家賃

住宅は非課税、事務所は課税:国税庁は、事務所などの建物の家賃は課税の対象、住宅の貸付けは貸付期間が1か月に満たない場合などを除いて非課税としています。

住宅の貸付けには、一戸建て、マンション、アパート、社宅、寮、貸間が含まれます。非課税になるのは、契約で住宅用とされているもの、または用途が書かれていなくても貸付けの状況から住宅用と分かるものです。旅館業法の旅館業にあたる施設(民泊を含む)や、貸付期間が1か月未満のものは非課税になりません。

店舗が併設された住宅は、住宅部分だけが非課税です。家賃を住宅部分と店舗部分に合理的に分けることになります。

貸しているもの消費税簡易課税の計算
事務所・店舗の家賃課税課税売上高に入る
住宅(アパート・マンション)の家賃非課税入らない
民泊・ウィークリーマンション・1か月未満の貸付け課税課税売上高に入る

簡易課税の納税額は事務所家賃だけで決まる

簡易課税は、売上げに係る消費税額に事業区分ごとの「みなし仕入率」をかけた額を、仕入れに係る消費税額とみなす制度です。不動産業は第6種事業で、みなし仕入率は40%です。基準期間(個人は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下の課税期間で使えます。

課税売上高には非課税の住宅家賃は含まれません。そのため、住宅を何室持っていても、判定に使う金額は事務所などの課税される家賃だけです。納める消費税は次のように決まります。

納税額(簡易課税)= 事務所家賃に係る消費税額 ×(1 − 0.4):実際の仕入れの額は計算に出てきません。

次の表は、事務所家賃の年額(税抜)ごとの納税額です。消費税額は国税と地方消費税をあわせた10%で単純化した概算で、実際の申告は国税と地方消費税に分けて計算します。

事務所家賃(年・税抜)売上げに係る消費税額みなしの仕入控除(40%)納税額
180万円18万円7.2万円10.8万円
600万円60万円24万円36万円
900万円90万円36万円54万円
1,800万円180万円72万円108万円

住宅家賃が増えても、この表の数字は変わりません。簡易課税は、仕入れが少ない年も多い年も同じ納税額になる計算です。ただし、簡易課税では仕入控除がみなしの額に決まるため、消費税の還付は受けられません。

本則課税では住宅用の仕入れは引けない

本則課税は、実際の課税仕入れに係る消費税額を売上げに係る消費税額から引きます。課税売上高が5億円以下で課税売上割合が95%以上なら全額を引けます。賃貸業で住宅を貸していると、非課税の住宅家賃が売上げに入るため、課税売上割合が95%を下回ることが多くなります。

課税売上割合は、国内の資産の譲渡等の対価の額の合計(課税売上高と非課税売上高などの合計)のうち、課税資産の譲渡等の対価の額が占める割合です。95%未満(または課税売上高が5億円超)の場合は、課税売上げに対応する部分だけを引けます。方式は次の2つです。

方式仕入控除税額
個別対応方式課税売上げにのみ要する仕入れの税額 + 共通して要する仕入れの税額 × 課税売上割合(非課税売上げにのみ要する仕入れの税額は引けない)
一括比例配分方式課税仕入れ等の税額の合計 × 課税売上割合

個別対応方式は、仕入れを「課税売上げにのみ要するもの」「非課税売上げにのみ要するもの」「共通して要するもの」に区分している場合に限って使えます。賃貸業では、住宅だけの修繕費は非課税売上げにのみ要する仕入れになるため、本則課税でも引けません。

賃貸用の建物を買うときの仕入税額控除には別の制限があります。国税庁は、居住用賃貸建物の取得について仕入税額控除が制限されているとしています。くわしくは居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限で確認できます。

試算:同じ家賃で仕入れが違う3つの年

事務所家賃が年600万円(税抜)、住宅家賃が年1,200万円(非課税)の賃貸業を例にします。課税売上割合は600万円 ÷(600万円+1,200万円)= 約33.3%、売上げに係る消費税額は60万円です。

本則課税は個別対応方式で計算し、仕入れに係る消費税額は事務所用・住宅用・共通の3つに分けます。数字は説明用の仮定です。

年事務所用/住宅用/共通の仕入税額本則課税の納税額簡易課税の納税額
A:通常の年10万円/10万円/10万円約46.7万円36万円
B:事務所の内装を大きく更新した年150万円/10万円/10万円約93.3万円の還付36万円
C:住宅の大規模修繕をした年10万円/200万円/10万円約46.7万円36万円

本則課税の納税額は、60万円から「事務所用 + 共通 × 約33.3%」を引いて求めています。A年の控除は10万円+10万円×1/3=約13.3万円、B年は150万円+約3.3万円=約153.3万円で、売上げに係る消費税額の60万円を超えるため差額が還付になります。C年は住宅用の200万円が控除に入らず、A年と同じ納税額です。

見方は次のとおりです。

  • A年とC年:簡易課税のほうが納税額が少ない。住宅の修繕費が大きくても、本則課税の納税額は変わらない。
  • B年:事務所側の仕入れが大きいと、本則課税のほうが有利で、還付も受けられる。
  • 分かれ目は、本則課税で引ける額が、簡易課税のみなし控除(この例では24万円)を上回るかどうか。

どちらを選ぶかの考え方

状況向きやすい方式
住宅中心で、事務所側の仕入れが少ない簡易課税(事務所側の仕入れがみなしの40%を下回りやすい)
事務所の改装や設備の入れ替えが数年内に見込まれる本則課税(大きな仕入れを控除でき、還付も受けられる)
事務所家賃が小さく、納税額も小さい手間の少ない簡易課税

簡易課税は選択届出書を出す方式で、出したあとは最低2年間は本則課税に戻れません。大きな仕入れの予定がある年の前に届出を出すと、還付を受けられなくなるおそれがあります。

賃貸業のほかに別の事業もある場合は、事業ごとに区分が変わります。区分の考え方は簡易課税の事業区分で整理しています。

自分の数字で並べるときは消費税4方式比較ツールで概算できます。住宅と事務所の比率や仕入れの区分は個別の事情で変わるため、申告前に税務署または税理士へ確認してください。

次に知りたいこと

公式情報

まとめ

  • 事務所の家賃は課税、住宅の家賃は非課税。簡易課税の判定と計算に入るのは課税される家賃だけ。
  • 不動産業は第6種事業でみなし仕入率は40%。納税額は事務所家賃に係る消費税額の60%で、実際の仕入れには左右されない。
  • 本則課税では、住宅用の仕入れは非課税売上げにのみ要するものとして引けない。
  • 仕入れが少ない年は簡易課税が有利になりやすく、事務所側で大きな改装や設備の更新をする年は本則課税が有利で、還付も受けられる。
  • 簡易課税を選ぶと最低2年間は本則課税に戻れないため、大きな仕入れの予定を見て届出を出す。

よくある質問

アパート経営だけでも、簡易課税の届出は必要ですか?
住宅の貸付けだけなら売上げは非課税で、課税売上高がないため消費税の納税義務はありません。事務所や駐車場など課税される貸付けがあり、課税事業者になるときに、簡易課税を使うなら届出が必要です(出典:国税庁)。
賃貸業の簡易課税は、第何種事業になりますか?
日本標準産業分類の大分類で不動産業にあたる事業は第6種事業で、みなし仕入率は40%です(出典:国税庁)。
住宅家賃が多いと、簡易課税の納税額は増えますか?
増えません。非課税の住宅家賃は課税売上高に入らないため、簡易課税の納税額は事務所など課税される家賃だけで決まります(出典:国税庁)。
簡易課税を選ぶと、消費税の還付は受けられますか?
簡易課税では仕入控除が売上げに係る消費税額の一部(第6種は40%)に決まるため、控除が売上げを上回ることがなく、還付は生じません。還付を受けたいときは本則課税で申告します。
本記事について。税理士監修前の概説です。試算の数字は説明用の仮定で、実際の有利不利は住宅と事務所の比率や仕入れの内訳で変わります。適用の可否は個別の事情で変わるため、申告前に税務署または税理士へ確認してください。