不動産所得の事業的規模とは|5棟10室の基準と変わる4点
不動産の貸付けが「事業として行われている」と扱われる基準(アパート10室・独立家屋5棟)と、事業的規模かどうかで変わる4つの計算を、国税庁のタックスアンサーNo.1373に沿って説明します。
確定申告・所得税不動産を貸している人の所得は不動産所得ですが、貸付けが「事業として行われている」かどうかで、青色申告特別控除や事業専従者給与などの扱いが変わります。この「事業的規模」の目安が、貸間・アパートで10室以上、独立家屋で5棟以上です。
この記事は所得税の判定を扱います。個人事業税がかかるかどうかは別の基準なので、不動産賃貸・駐車場に個人事業税がかかる基準で確認してください。
事業的規模の判定は10室・5棟が目安
国税庁のタックスアンサー(No.1373)によると、不動産の貸付けが事業として行われているかどうかは、原則として「社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうか」で、実質的に判断します。
建物の貸付けについては、次のいずれかに当てはまれば、原則として事業として行われているものとして取り扱われます。
| 貸している建物 | 事業として扱われる目安 |
|---|---|
| 貸間・アパート等 | 貸与することのできる独立した室数が、おおむね10室以上 |
| 独立家屋 | おおむね5棟以上 |
「5棟10室」という呼び方は、この2つの基準をまとめた通称です。どちらか一方に当てはまればよく、どちらも「おおむね」の基準です。
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架空条件の当てはめ
次の表は説明用の架空条件です。上の表の基準に当てはめた場合の見方を示します。
| 架空の場面 | 見方 |
|---|---|
| アパート1棟、貸せる独立した部屋が10室 | 室数の基準に当てはまり、原則として事業として行われている扱い |
| 貸家(独立家屋)を5棟 | 棟数の基準に当てはまり、原則として事業として行われている扱い |
| アパート6室を貸している | どちらの目安にも届かない。規模などで実質的に判断する |
| 貸家3棟とアパート6室の両方を貸している | 国税庁のページに合算の数え方は示されていない。実質的な判断になるため、税務署か税理士に確認する |
10室や5棟に届かないからといって、事業でないと決まるわけではありません。目安に届かない場合は、規模などから実質的に判断されます。
事業的規模かどうかで変わる4点
国税庁は、事業として行われている場合とそれ以外の場合の主な計算上の違いとして、次の4点を示しています(No.1373)。
| 項目 | 事業として行われている | それ以外 |
|---|---|---|
| 賃貸用固定資産の取壊し・除却などの資産損失 | 全額を必要経費にできる | その年の資産損失を引く前の不動産所得の金額が上限 |
| 賃貸料の回収不能による貸倒損失 | 回収不能となった年の必要経費にする | 収入に計上した年分までさかのぼって、所得がなかったものとして計算し直す |
| 青色事業専従者給与・白色の事業専従者控除 | 適用できる | 適用できない |
| 青色申告特別控除 | 要件を満たせば最高55万円(電子帳簿保存またはe-Taxで65万円) | 最高10万円 |
身近な違いは、家族に払う給与と、回収できなかった家賃の扱いです。たとえば、事業的規模でない貸付けで、前年の家賃が回収不能になった場合は、今年の経費にはならず、前年の申告をやり直す形になります。
青色申告特別控除の金額差
青色申告特別控除は、事業として行われている不動産貸付けでは、正規の簿記の原則による記帳を行うなど一定の要件を満たすと、最高55万円です。電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行っている場合は、最高65万円です。
それ以外の場合の控除額は、最高10万円です。差は最大55万円あります。
ここで書いた55万円・65万円は、国税庁のページでは令和8年分までの青色申告特別控除として示されています。令和9年分以降の取扱いは、申告の前に国税庁の案内で確認してください。
青色申告を始めるための申請の期限は、青色申告承認申請書の提出期限にまとめています。白色と青色の違いは、青色申告と白色申告の違いを見てください。
次に知りたいこと
不動産所得の収入計上時期(家賃・礼金・敷金をどの年の収入にするか)
不動産所得の赤字と損益通算(土地の借入金利子は対象外)
不動産賃貸を個人から法人にする前の確認(建物移転の登録免許税など)
まとめ
- 不動産貸付けが事業かどうかは、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模かで、実質的に判断される。
- 建物の貸付けは、貸間・アパート等でおおむね10室以上、独立家屋でおおむね5棟以上なら、原則として事業として扱われる。
- 事業的規模かどうかで、資産損失・貸倒損失・専従者給与(控除)・青色申告特別控除の4点が変わる。
- 青色申告特別控除は、事業的規模なら最高55万円(電子帳簿保存またはe-Taxで65万円)、それ以外は最高10万円。
よくある質問
- 「5棟10室」は、どちらか一方に当てはまればよいですか?
- はい。貸間・アパート等でおおむね10室以上、または独立家屋でおおむね5棟以上のいずれかに当てはまれば、原則として事業として行われているものとして取り扱われます(出典:国税庁タックスアンサー No.1373)。
- 9室のアパートは、事業的規模になりませんか?
- 目安は「おおむね」10室以上で、届かない場合は社会通念上事業と称するに至る程度の規模かで実質的に判断します。9室で決まるわけではないため、個別の事情は税務署に確認してください(出典:国税庁タックスアンサー No.1373)。
- 事業的規模でないと、青色申告はできませんか?
- 国税庁のページでは、それ以外の場合の青色申告特別控除は最高10万円と示されています。控除額が小さくなる扱いで、青色申告そのものができなくなるという説明ではありません(出典:国税庁タックスアンサー No.1373)。
- 事業的規模だと、家族への給与を経費にできますか?
- 事業として行われている場合は、青色事業専従者給与または白色の事業専従者控除が適用できます。それ以外の場合は適用がありません(出典:国税庁タックスアンサー No.1373)。
- この基準で個人事業税もかかりますか?
- 個人事業税の課税基準は所得税の事業的規模とは別の判定です。基準の詳細は専用のガイドを確認してください。
公式一次情報
- 国税庁 タックスアンサー No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分(10室・5棟の目安と4つの計算上の違い。2026-10-24確認)

