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不動産所得の赤字と損益通算|土地の借入金利子は対象外

不動産所得が赤字のとき、給与所得などの黒字と差し引ける範囲を、国税庁のタックスアンサーと措置法通達で整理します。通算できない4つの損失、土地と建物を同時に買ったときの利子の計算、架空条件の計算例を説明します。

確定申告・所得税
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

不動産所得が赤字になると、原則として給与所得などの黒字から差し引けます。ただし、赤字のうち土地を取得するための借入金の利子に当たる部分は、差し引けません。別荘の貸付けや、組合・信託を通じた投資の赤字にも、通算できない定めがあります。

アパートや駐車場を持つ人が、利子や減価償却費で赤字を出したとき、どこまで給与と相殺できるかはこの定めで決まります。事業所得の赤字の一般的な扱いは個人事業主の損益通算の解説で扱っています。

不動産所得の赤字は原則として通算できる

不動産所得は、総収入金額から必要経費を引いて計算します。結果が赤字なら、ほかの黒字の所得から差し引けます。これが損益通算です(国税庁タックスアンサー No.1391)。

通算の対象になる所得の全体像と、差し引く順序は個人事業主の損益通算の解説にまとめています。この記事は、不動産所得だけに付く例外を扱います。

通算できない4つの損失

国税庁は、不動産所得の損失のうち、次のものは損益通算の対象にならないとしています(No.1391)。

通算できない損失内容
別荘などの貸付けの損失主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産の貸付けに係るもの
土地等の取得に要した負債の利子必要経費に算入した、土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分
特定組合員・信託の受益者の損失組合事業や信託から生じた不動産所得の損失は、生じなかったものとみなされる
国外中古建物の損失令和3年以後、耐用年数を簡便法で計算した減価償却費に相当する部分は、生じなかったものとみなされる

特定組合員とは、不動産所得を生ずべき事業を行う民法組合などの個人組合員のうち、重要な業務の執行の決定に関与し、契約の交渉なども自ら行う組合員以外の人です。この損失は、ほかの不動産所得の黒字からも差し引けません。

国外中古建物の損失も、国内の不動産から生じる不動産所得との通算と、不動産所得以外の所得との損益通算の、どちらもできません。

土地の借入金利子の計算(通達41の4-1〜41の4-3)

国内の賃貸経営で最も影響が大きいのは、土地の借入金利子です。土地は減価償却をしないため、土地を買うための借入金の利子が、赤字の原因になりやすいからです。

国税庁の措置法通達41の4は、土地と建物を一緒に取得したときの扱いを次のように示しています。

  • 41の4-1:賃貸と自宅などの併用建物は、建物・土地の取得対価と、取得のための負債の額を、賃貸の業務に必要な部分とそれ以外に区分し、賃貸に必要な部分を基に計算する。
  • 41の4-2:建物と構築物を土地とともに取得した場合、構築物の取得対価を建物の取得対価に含めて差し支えない。
  • 41の4-3:土地等に係る負債の利子の額は、その年の不動産所得の必要経費になる、建物と土地等を取得するための負債の利子の額に、土地等の取得対価に充てられたものとされる負債の額の割合を掛けて計算する。

つまり、借入金を土地と建物に分けて借りていない場合でも、土地に充てたとされる割合で利子を分けます。土地分の利子が、通算できない金額の上限になります。

土地と建物の取得対価の区分や、借入金のどこまでを土地に充てたとみなすかは、売買契約書の内訳や、施行令の規定をあてはめて決まります。具体的な金額は、税務署や税理士に確認してください。

架空条件の計算例

次の表は、説明用の架空条件です。給与所得は給与所得控除を引いたあとの金額で、所得控除を引く前の金額で比べています。

項目金額(架空)
家賃収入160万円
減価償却費・固定資産税・管理費150万円
借入金の利子(合計)100万円
うち土地分の利子(借入金の6割が土地分と仮定)60万円
不動産所得(収入 − 経費合計250万円)△90万円

赤字90万円のうち、土地分の利子に当たる60万円は通算できません。通算できるのは、残りの30万円です。

給与所得(架空)通算できる赤字通算後の合計
400万円30万円370万円

赤字の全額を通算できると考えると、合計は310万円になります。土地の利子があるだけで、60万円分の差が出ます。

赤字が60万円を下回る場合は、土地分の利子のうち赤字に相当する部分が通算できず、通算できる赤字は残りません。

法人で持つ場合との違い

この制限は、個人の不動産所得を対象にした所得税の特例(租税特別措置法41条の4)です。不動産を法人で持つと、赤字は法人の損失になり、個人の給与所得とは通算されません。法人にするかどうかは、赤字の通算だけでなく、社会保険や税率の差も含めて決まります。

個人で持つ賃貸を法人にする前の確認事項は不動産賃貸を個人から法人にする前の確認で、管理会社を使う方式との違いは不動産管理会社方式の解説で扱っています。

次に知りたいこと

まとめ

  • 不動産所得の赤字は、原則として給与所得などの黒字と損益通算できる。
  • 別荘などの貸付け、土地等の取得のための負債の利子、特定組合員・信託の損失、国外中古建物の簡便法による償却相当額は通算できない。
  • 土地と建物を一緒に取得したときの土地分の利子は、通達41の4-3の割合で計算する。
  • 赤字が土地分の利子より小さいときは、通算できる赤字が残らない場合がある。
  • 法人で持つと、赤字は法人の損失になり、個人の給与所得とは通算されない。

よくある質問

不動産所得の赤字は給与所得と相殺できますか?
原則として相殺できます。ただし、土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分などは対象外です(出典:国税庁タックスアンサー No.1391)。
土地の借入金利子の部分はなぜ通算できないのですか?
租税特別措置法41条の4が、不動産所得の損益通算の特例として、必要経費に算入した土地等の取得のための負債の利子に相当する部分を通算の対象から外しています(出典:国税庁タックスアンサー No.1391)。
土地と建物を同時に買ったとき、土地分の利子はどう求めますか?
建物と土地等を取得するための負債の利子の額に、土地等の取得対価に充てられたものとされる負債の額の割合を掛けて計算します(出典:措置法通達41の4-3)。
建物だけの借入金の利子は通算できますか?
土地等を取得するための利子ではないため、この制限の対象にはなりません。ほかの要件に当たらなければ、赤字として通算の対象になります(出典:国税庁タックスアンサー No.1391)。
組合に出資して不動産所得が赤字になったときはどうなりますか?
特定組合員が組合事業から受ける不動産所得の損失は、生じなかったものとみなされ、損益通算の対象にもなりません(出典:国税庁タックスアンサー No.1391)。

公式一次情報

本記事について。税理士監修前の概説です。制度・期限は改正される場合があります。個別の判断は税理士・税務署へご確認ください。

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