フードデリバリー配達員・ギグワーカーの法人成り判断(所得区分・社保・労災特別加入)
配達や単発の仕事で収入を得ている人が、法人にすべきかどうかを、所得の区分・社会保険・労災保険・消費税の4点に分けて整理します。
国税庁・厚生労働省の制度フードデリバリーの配達や、アプリ経由の単発の仕事は、収入がまだ小さいうちに法人化すると、かえって負担が増えることがあります。このページは、法人にする前に確認したい4つの分岐を、国税庁・日本年金機構・厚生労働省の公表内容にもとづいて整理します。
一般的な個人事業主の法人成りの判断は法人成りのガイドと法人成りのデメリットにまとめています。ここでは、配達員やギグワーカー特有の論点に絞ります。
4つの分岐の早見表
| 分岐 | 個人のままの場合 | 法人にした場合 |
|---|---|---|
| 所得の区分 | 事業所得か雑所得かで、損失の扱いが変わる | 法人の利益として計算する |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金(会社員の人は勤務先の保険) | 事業主のみでも健康保険・厚生年金保険が強制適用 |
| 労災保険 | 特別加入で任意に加入できる | 法人の労災保険の扱いを別に確認する |
| 消費税 | 前々年の課税売上高1,000万円以下なら、原則として納税義務が免除 | 法人の消費税の扱いを別に確認する(詳細) |
所得が事業所得か雑所得か
国税庁のNo.1500は、雑所得を、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)を含む所得として説明しています。このうち、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なものが「業務に係る雑所得」です。
所得税基本通達35-2の注は、事業所得と認められるかどうかを、活動が社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するとしています。また、取引を記録した帳簿書類の保存がない場合は、業務に係る雑所得に該当することに留意するとしています。ただし、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合は除かれます。
No.1500には、雑所得の金額の計算上生じた損失は、他の所得の金額と損益通算できないとあります。配達の経費が収入を上回っても、会社員の給与などと相殺できないということです。
- 令和4年分以後は、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える人は、現金預金取引等関係書類の保存が必要です。
- 前々年分の収入金額が1,000万円を超える人は、確定申告書に収支内訳書などの添付が必要です。
- 前々年分の収入金額が300万円以下の人は、確定申告書に記載することで、収入した金額と支出した費用の額で計算する現金主義の特例を使えます。
区分の詳しい考え方は事業所得と雑所得の違いで整理しています。法人にしても、この区分の問題がなくなるわけではなく、個人の段階で帳簿を付けているかどうかが、その後の判断の材料になります。
社会保険:個人は国保、法人は強制加入
日本年金機構の「適用事業所と被保険者」のページによると、法人の事業所は、事業主のみの場合も含めて強制適用になります。個人事業所の場合は、常時5人以上の従業員を使用する場合などに強制適用となり、業種によって例外があります。
配達員が個人のままであれば、一般には国民健康保険と国民年金が中心です。法人にして役員報酬を受ける形にすると、健康保険・厚生年金保険の保険料が、報酬額に応じて会社と本人の両方に生じます。負担の比較は一人法人の社会保険で整理しています。
したがって、収入が小さい段階での法人化は、保険料の増加が節税の効果を上回ることがあります。会社員を続けながら副業で配達をしている人は、法人の社会保険の扱いが勤務先との関係にも影響するため、会社員の副業法人も合わせて確認してください。
労災保険:個人での特別加入と法人化後
厚生労働省の「労災保険への特別加入」のページには、令和3年9月1日から特別加入の対象が広がり、自転車配達員とITフリーランスが加わったとあります。令和6年11月1日からは、フリーランスが広く特別加入の対象になりました。
加入の手続きや対象の範囲は、厚生労働省の案内で確認してください。配達員が個人のままで続けるなら、収入の規模にかかわらず、加入の要否を検討する価値があります。法人にした場合の労災保険の扱いは、法人成りと労災保険で確認してください。
消費税:1,000万円と登録の有無
国税庁のNo.6501によると、個人事業者の場合、その年の前々年の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として納税義務が免除されます。ただし、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は免除されません。
登録するかどうかは事業者が選びます。登録の判断は「インボイスに登録すべきか」で整理しています。法人にする場合の消費税の扱いは、法人成りと消費税の免税で確認してください。
動画配信の広告収益を受け取っている人の法人化の判断は、YouTuber・動画配信者の法人成り判断で整理しています。
公式一次情報
- 国税庁「No.1500 雑所得」(業務に係る雑所得、損益通算の不可、書類の保存、現金主義の特例)
- 国税庁「法第35条《雑所得》関係」(所得税基本通達35-2)(事業所得と認められる判定と帳簿書類の保存)
- 日本年金機構「適用事業所と被保険者」(法人事業所の強制適用、個人事業所の基準)
- 厚生労働省「労災保険への特別加入」(自転車配達員・フリーランスの特別加入の対象拡大)
- 国税庁「No.6501 納税義務の免除」(基準期間1,000万円と適格請求書発行事業者の登録)
まとめ
- 配達の収入が雑所得になると、損失を他の所得と損益通算できない。帳簿を付けて区分を確認する。
- 法人にすると、事業主のみでも健康保険・厚生年金保険が強制適用になる。小さい収入での法人化は負担が増えやすい。
- 自転車配達員は令和3年9月1日から労災保険の特別加入の対象。個人のうちに加入を検討できる。
- 消費税は、前々年の課税売上高1,000万円以下でも、インボイスに登録すると納税義務が免除されない。
よくある質問
- 配達の収入は、事業所得と雑所得のどちらになりますか?
- 活動が社会通念上事業と称するに至る程度かどうかで判定し、帳簿書類の保存がない場合は、原則として業務に係る雑所得に該当することに留意するとされています(出典:国税庁 所得税基本通達35-2)。
- 雑所得で赤字になったら、給与と相殺できますか?
- できません。雑所得の金額の計算上生じた損失は、他の所得の金額と損益通算できません(出典:国税庁 No.1500)。
- 収入が少なくても、法人にすると社会保険に入る必要がありますか?
- 法人の事業所は、事業主のみの場合も含めて、厚生年金保険・健康保険の強制適用です(出典:日本年金機構)。
- 自転車の配達員は、労災保険に入れますか?
- 令和3年9月1日から、自転車配達員は労災保険の特別加入の対象です。加入の手続きは厚生労働省の案内で確認してください(出典:厚生労働省)。
- 課税売上が1,000万円以下なら、消費税は必ず免除されますか?
- 適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも免除されません(出典:国税庁 No.6501)。