前期の計上漏れ・誤りに気づいたとき|今期で直せるか
決算が終わった後で前期の売上の計上漏れや経費の誤りに気づいたとき、今期の損益で処理してよいのか。原則の修正申告と更正の請求、今期の損益になる例外、延滞税の扱いを順に見ます。
国税庁・国税不服審判所の資料前期の売上の入れ忘れや経費の二重計上を見つけると、「前期損益修正」として今期の損益に載せたくなります。しかし、計上の誤りは、誤りがあった事業年度にさかのぼって直すのが法人税の原則です。ただし、返品のように後から起きた事実による損益は今期の扱いです。
計上の誤りを直す原則(前期にさかのぼる)
外注費を数年たってから「前期損益修正」として当期の損金にした会社が争った事案があります。東京地方裁判所の平成27年9月25日の判決は、事実と異なる経理があった場合は「常に当初に遡って正当な金額に修正し、課税所得を修正するというのが原則」と述べました。
同じ判決は、法人税法は過年度の計算誤りを修正申告や更正処分(更正の請求に基づくものを含む)で遡って直すことを予定している、としています。事実誤認による計上漏れを、判明した決算期に前期損益修正として処理する慣行があっても、公正処理基準には当たらないと判断しました。
国税庁の「会計基準の適用に関する税務処理の解説」(問7)では、過年度の売上の計上漏れや費用の過大計上は、会計上の修正再表示とともに、税務上も修正申告を行って過年度の課税所得を是正する、とされています。
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今期の損益になる場合(後から事実が生じたとき)
法人税基本通達2-2-16は、前の事業年度に収益として計上した取引について、その後の事業年度で契約の解除・取消し・返品などの事実が生じた場合を扱っています。この場合に生じた損失は、事実が生じた事業年度の損金になります。
国税不服審判所の公表裁決も同じ考え方です。電気料金の計量誤りで過払いが判明し、返還が確定した事案では、返還を受けることが確定した日の属する事業年度の特別損益として益金に算入するとされました。別の裁決は、事業年度の経過後に事実を変更する事由が生じた場合は、その事由が生じた事業年度の損益として認識するもので、過去にさかのぼって所得を修正しないとしています。
| 状況 | 税務上の基本の扱い |
|---|---|
| 前期の売上の計上漏れ、経費の二重計上など、前期の時点で誤っていた | 前期にさかのぼって修正する(修正申告など) |
| 前期に売り上げた商品が、今期に返品された | 返品が生じた今期の損金になる |
| 前期に払った料金の過払いが、今期に返還と確定した | 返還が確定した事業年度の益金になる(裁決事例) |
直し方:修正申告と更正の請求
前期の所得が増える誤り(売上の計上漏れなど)は、修正申告で直します。国税庁のQ&Aでは、修正申告は税務署から更正を受けるまでいつでもできますが、なるべく早く申告するよう案内されています。これは所得税と消費税の確定申告向けの案内で、法人税専用の期限の定めは確認できていません。
前期の所得が減る誤り(費用の計上漏れなど)で、納め過ぎた税額の還付を受けたいときは、更正の請求をします。国税庁の案内では、国税通則法23条1項に基づく請求は、法定申告期限(延長の承認があるときはその承認申告期限)から5年以内です。後発的な事由による請求は、事実に該当した日の翌日から2か月以内です。
消費税も、更正の請求は法定申告期限から5年以内(後発的理由は事実が発生した日の翌日から2か月以内)と案内されています。
前期の誤りが赤字や繰越欠損金に関わるときは、法人税の修正申告・更正の請求の期限と欠損金の繰戻し還付もあわせて確認してください。
追加で納める税額と延滞税
修正申告で新たに納める税額は、修正申告書を提出する日までに納めます。延滞税は、修正申告書を提出して納める税額があるときに課され、本税だけが対象です(加算税には課されません)。国税庁のNo.9205によると、令和8年は納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%です。
過少申告加算税は、法定申告期限の翌日から調査の通知前までに自主的に提出した修正申告には課されません。調査の通知以後で更正の予知前の提出は5%、予知以後は10%が基本です(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は、それぞれ10%と15%)。
消費税の手続きは、消費税の修正申告と更正の請求を見てください。
会計上の扱い
企業会計基準第24号では、過去の財務諸表で誤りが発見された場合は修正再表示をします。
重要性が乏しいために修正再表示しない場合は、損益計算書上、その性質に応じて営業損益か営業外損益に計上するのが一般的とされています。ただし、これは会計上の扱いの説明で、税務上の損金算入を認める趣旨ではありません。
決算書の整理は決算整理仕訳で扱っています。
まとめ
- 前期の計上漏れや過大計上は、前期にさかのぼって修正するのが原則。
- 返品や契約解除、返還の確定のように、後から事実が生じたものは、生じた事業年度の損益になる。
- 所得が増える誤りは修正申告、納め過ぎは更正の請求(法定申告期限から5年以内)。
- 修正申告で納める税額には延滞税がかかる。自主的な修正申告は、調査の通知前なら過少申告加算税がかからない。
公式情報
- 国税庁 法人税基本通達2-2-16(前期損益修正)
- 国税庁「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準を適用した場合の税務処理」(問7、平成23年6月30日現在の法令・通達に基づく)
- 国税庁 税務訴訟資料 東京地方裁判所 平成27年9月25日判決
- 国税不服審判所 公表裁決事例「過年度損益修正」
- 国税庁「更正の請求書」(法人税)
- 国税庁「更正の請求書」(消費税)
- 国税庁 申告に関するQ&A(修正申告)
- 国税庁タックスアンサーNo.9205 延滞税について
- 国税庁「加算税」のパンフレット(過少申告加算税)
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第24号
よくある質問
- 前期の売上の計上漏れに気づいたら、今期の売上に入れてよいですか?
- 原則は、前期にさかのぼって修正します。東京地裁平成27年9月25日判決は、遡って正当な金額に修正して課税所得を修正するのが原則とし、国税庁の資料も、売上の計上漏れは修正申告で是正するとしています。
- 前期に売った商品が今期に返品されたときは、前期を直しますか?
- 直しません。法人税基本通達2-2-16により、返品などの事実に基づく損失は、その事実が生じた事業年度の損金になります。
- 納めすぎに気づいたとき、いつまで取り戻せますか?
- 更正の請求は、法定申告期限から5年以内です(国税通則法23条1項に基づく請求。後発的な事由は事実に該当した日の翌日から2か月以内。出典:国税庁)。
- 修正申告で追加の税金を納めると、延滞税はかかりますか?
- 納める税額があるときは延滞税が課されます。令和8年は納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後は年9.1%です(出典:国税庁タックスアンサーNo.9205)。
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