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法人化して従業員を雇うと住民税の特別徴収義務者になる|給与支払報告書とセットで解説

個人事業では自分で納めていた住民税が、法人化して従業員を雇うと「給与から天引きして納める側」に変わる仕組みを整理します。

法人化(法人成り)
編集:法人成りシミュレーション編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

個人事業主が納める住民税は、自分で納付書を使って納める「普通徴収」が基本です。法人化して従業員を雇うと、事業主(法人)は従業員の住民税を給与から天引きして市区町村に納める「特別徴収義務者」の立場になります

この義務は給与支払報告書の提出とセットで発生します。提出先・期限・年間の納付スケジュールを地方税法の条文と自治体の公式案内にもとづき整理します。

給与を支払う事業者は原則すべて特別徴収義務者

地方税法321条の4は、市町村が給与を支払う者のうち所得税法上の源泉徴収義務がある者を、条例によって特別徴収義務者として指定し、従業員の住民税を徴収させると定めています。この指定は個人事業主・法人を問わず、給与を支払う立場になった時点で対象になります。個人事業主のときから従業員を雇っていた場合は既に特別徴収義務者だった可能性があり、法人化にあわせて提出者・納入者を法人へ切り替える手続きが必要です。

法人化を機に初めて従業員を雇う場合は、その時点で新たに法人が特別徴収義務者になります。

特別徴収の対象になると、従業員は原則として自分で住民税を納付する必要がなくなり、法人が毎月の給与から天引きして納めます。個人事業主自身の住民税の納め方は個人事業主の住民税で解説しています。

給与支払報告書は1月31日までに従業員の住所地市区町村へ

地方税法317条の6第1項は、毎年1月1日現在で給与を支払っている事業者は、所得税の源泉徴収義務がある場合、同年1月31日までに給与支払報告書を市町村長に提出しなければならないと定めています。提出先は法人の所在地ではなく、従業員それぞれの1月1日時点の住所がある市区町村です。従業員が複数の市区町村に住んでいれば、その数だけ提出先が分かれます。

提出対象は正社員に限らず、アルバイト・パート・役員も含め、在籍中の給与支払対象者は金額にかかわらず全員が対象です。退職者については、退職した年の給与支払額が30万円以下の場合、提出を省略できます(在籍中の従業員にはこの金額基準はありません)。1月31日が土曜・日曜にあたる年は、翌開庁日が期限になります。

従業員を雇う際の労働保険の手続きは従業員がいる法人成りの労働保険手続きで解説しています。

特別徴収税額通知(5月)から翌年5月まで12回で天引き

市区町村は、提出された給与支払報告書をもとに住民税額を計算し、毎年5月31日までに特別徴収税額通知書を事業者(特別徴収義務者)へ送付します。通知書には従業員ごとの年税額と、月割にした毎月の徴収額が記載されています。

法人はこの通知にもとづき、その年の6月から翌年5月までの12回に分けて、毎月の給与支払時に住民税を天引きします。個人事業主が特別な手続きなく年4回(普通徴収)で自分の住民税を納めていたのとは、納期の回数・仕組みが異なります。

天引きした税額は徴収した月の翌月10日までに納入

地方税法321条の5は、特別徴収義務者が徴収した月の翌月10日までに、天引きした住民税額を市区町村に納入しなければならないと定めています。給与計算のたびに天引きと納入が発生する点は、源泉所得税の納付スケジュールと似ていますが、納付先は国(税務署)ではなく従業員が住む市区町村ごとになります。

  • 従業員の住所地ごとに提出先・納入先の市区町村が分かれるため、複数市区町村にまたがる場合は事務の手間が増える。
  • 従業員数が常時10人未満の事業者は、市区町村への申請により年2回(12月・6月)にまとめて納入する「納期の特例」を利用できる場合がある(適用可否・要件は各市区町村へ確認)。
  • 給与支払報告書を期限までに提出しないと、特別徴収税額通知が届かず徴収開始が遅れる可能性がある。

まとめ

  • 個人事業主自身の住民税は普通徴収だが、法人化して給与を支払う立場になると、地方税法321条の4により特別徴収義務者に指定される。
  • 給与支払報告書は、従業員それぞれの1月1日時点の住所地の市区町村へ、1月31日までに提出する(地方税法317条の6)。
  • 市区町村は5月31日までに特別徴収税額通知を送付し、事業者は6月から翌年5月までの12回で給与から天引きする。
  • 天引きした税額は、徴収した月の翌月10日までに市区町村へ納入する(地方税法321条の5)。
  • 従業員が常時10人未満なら、納期の特例(年2回納入)を利用できる場合がある。

労働保険の新規手続きは従業員がいる法人成りの労働保険手続き、法人化の手続き全体は法人化の手続きで確認できます。

公式一次情報

よくある質問

個人事業主のときも従業員の住民税を天引きする必要がありますか?
従業員を雇っていれば個人事業主でも特別徴収義務者になり得ますが、本記事は法人化を機に給与支払事業者としての義務が明確になる点を扱っています。いずれの場合も地方税法321条の4にもとづき、給与を支払う際に所得税の源泉徴収義務がある事業者が特別徴収義務者の指定対象です(出典:e-Gov法令検索・地方税法321条の4)。
給与支払報告書はどこに提出しますか?
法人の所在地ではなく、従業員それぞれの1月1日時点の住所がある市区町村へ、1月31日までに提出します(出典:e-Gov法令検索・地方税法317条の6第1項)。
天引きした住民税はいつまでに納めますか?
徴収した月の翌月10日までに、従業員の住所地の市区町村へ納入します(出典:e-Gov法令検索・地方税法321条の5)。
従業員が少ない場合も毎月納入が必要ですか?
常時10人未満の事業者は、市区町村への申請により年2回(12月・6月)にまとめて納入する納期の特例を利用できる場合があります。適用可否は各市区町村へ確認してください(出典:横浜市「個人の市民税特別徴収に関すること」)。
本記事について。税理士監修前の概説です。納期の特例の要件・提出方法の詳細は、従業員が住む市区町村または税理士にご確認ください。