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個人事業主は事業用口座を分けるべきか|条文で見る義務の有無と家事按分への影響

個人事業主が、事業の入出金と生活費の口座を分けることは、所得税法の条文では求められていません。一方で、帳簿の記録、家事関連費の区分、保存する書類の面では、分けたほうが説明しやすくなります。所得税法・同施行令・同施行規則の条文で整理します。

帳簿・記帳
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

個人事業主は、法人と違って、事業のお金と自分のお金が同じ人のものです。そのため「口座は分けないといけないのか」と迷う人が多くいます。

条文を読むと、口座を分けること自体は義務として書かれていません。求められているのは、取引を帳簿に記録して保存することと、家事上の経費と事業の経費を区分できることです。

先に結論:口座を分ける義務は所得税法の条文には出てきませんが、帳簿の記録と家事関連費の区分を求められるため、分けたほうが説明しやすくなります。分けない場合は、通帳の1行ごとに事業か生活かを後から仕分ける手間がかかります。
確認したいこと条文の定め口座を分ける意味
口座を分ける義務所得税法232条・施行規則102条には、口座を分ける定めはない義務ではなく、記録を整理しやすくするための方法
帳簿の記録総収入金額と必要経費を整然と、明瞭に記録する(施行規則102条1項)入出金が事業だけの口座なら、通帳の流れがそのまま記録の元になる
家事関連費主たる部分が業務上必要で、その部分を明らかに区分できるものに限り経費(施行令96条1号)生活費と混ざった支払いは、区分の説明が必要になる
保存期間帳簿は7年、取引の書類は5年(施行規則102条4項)通帳そのものの保存年数は、この条文では定められていない

口座を分ける義務はあるか

不動産所得・事業所得・山林所得を生じる業務をしている人は、所得税法232条1項で、帳簿を備えて総収入金額と必要経費に関する事項を記録し、その帳簿を保存するよう定められています。この条文は、帳簿を付けることを求めていますが、事業用の口座を持つことまでは求めていません。

記録の方法を定めた施行規則102条も同じです。求めているのは、事業所得の金額が正確に計算できるように、取引を「整然と、かつ、明瞭に」記録することです。

ここで読んだのは所得税の帳簿の条文です。屋号付きの口座をつくれるかどうかや、事業用の口座として扱う条件は金融機関ごとに違います。つくり方は個人事業主の屋号で整理しています。

帳簿に求められる記録

施行規則102条1項は、事業の取引を「その年の取引でこれらの所得に係る総収入金額及び必要経費に関する事項」として記録するよう求めています。記録の方法は、同条2項で財務大臣が定める簡易な方法とされています。

青色申告者の帳簿は別の規定で、複式簿記の要件などがあります。帳簿のつけ方と青色申告特別控除65万円の要件で確認できます。

事業の入金と出金だけが載る口座があれば、帳簿に写す元の資料がそろいます。生活費の引き落としや個人の買い物が混ざった口座では、事業の取引だけを抜き出す作業が毎回必要です。

家事関連費の区分と口座の関係

所得税法45条1項1号は、家事上の経費と、これに関連する経費で政令で定めるものを、必要経費に算入しないと定めています。政令の施行令96条は、必要経費にできる家事関連費を次の2つに限っています。

  • 1号:家事上の経費に関連する経費の主たる部分が、業務の遂行上必要であり、かつ、その必要な部分を明らかに区分できる場合の、その部分。
  • 2号:青色申告の承認を受けている人について、取引の記録等に基づいて、業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分。

自宅の家賃や通信費のように、事業と生活の両方に使うものは、この2つの考え方で区分します。按分の割合の決め方は家事按分の割合の決め方にあります。

事業用の口座から払った支払いは、事業のために使ったと説明しやすくなります。ただし、事業用の口座から払ったことだけで経費になるわけではありません。家事関連費は、条文の要件を満たすかどうかで決まります。

保存する帳簿と書類の期間

施行規則102条4項は、保存の期間を次のように定めています。

  • 帳簿:起算日から7年間。
  • その他の帳簿と、決算に関して作った棚卸表などの書類:5年間。
  • 請求書、納品書、領収書などの取引の書類(自分で作ったものは写し):5年間。

保存場所は、住所地・居所地、または事業所などです。

通帳そのものを保存する年数は、この条文には書かれていません。通帳や入出金明細は、取引の内容を確かめる資料として手元に残すのが無難です。電子データで受け取った取引の書類の保存は電子帳簿保存法の扱いも関わります。

雑所得でも書類の保存が必要な場合

副業などで事業所得ではなく雑所得になる人にも、保存の定めがあります。所得税法232条2項は、雑所得を生じる業務をしている人のうち、前々年分の収入金額が300万円を超える人に、総収入金額と必要経費に関する事項を記載した書類の保存を求めています。

この書類について、施行規則102条7項は「現金の収受若しくは払出し又は預貯金の預入若しくは引出しに際して作成されたもの」と定めています。保存期間は、作成または受領した日の属する年の翌年3月15日の翌日から5年間です(同条8項)。

預貯金の入出金の際に作られる書類が保存の対象に挙がっているので、通帳や取引明細が事業の入出金だけなら、これらを整理して保存しやすくなります。事業所得と雑所得の区分は事業所得と雑所得の違いで確認できます。

分けないで済ませるときの注意

すぐに口座を分けられない場合は、次の点を決めておくと、後から区分しやすくなります。

  • 事業のお金の出入りに印を付ける:通帳の明細に、事業の取引かどうかを月ごとに記録します。
  • 事業のカードや電子マネーを決める:支払い手段を分けるだけでも、家事関連費の区分を説明しやすくなります。
  • 領収書と明細を一緒に保存する:取引の書類は5年の保存対象です。

これらは条文が定めた手順ではなく、編集部が条文を踏まえて整理した実務上の工夫です。実際の記帳の方法は、使う会計ソフトや税理士の指示に合わせてください。

次に知りたいこと

公式情報

まとめ

  • 事業用の口座を持つことは、所得税法232条・施行規則102条の義務としては書かれていない。
  • 求められるのは、総収入金額と必要経費を整然と、明瞭に記録して保存すること。
  • 家事関連費は、主たる部分が業務上必要で区分できる場合などに限り経費になる。事業用口座から払っただけでは経費にならない。
  • 帳簿は7年、取引の書類は5年保存する。通帳の保存年数は条文に書かれていない。
  • 前々年の雑所得の収入が300万円を超える場合は、預貯金の入出金の書類を翌年3月15日の翌日から5年保存する。

よくある質問

事業用の口座を持たないと、税務署に指摘されますか?
所得税法232条と施行規則102条には、口座を分ける定めはありません。求められているのは、取引の記録と書類の保存です。口座が混ざっている場合は、事業の取引を区分して説明できる状態にしておきます。
事業用の口座から払えば、経費になりますか?
なりません。家事関連費は、所得税法施行令96条で、主たる部分が業務上必要でその部分を明らかに区分できるものなどに限られます。口座の種類だけでは決まりません。
帳簿や通帳は何年保存しますか?
帳簿は7年、決算の書類や請求書・領収書などの取引の書類は5年です(施行規則102条4項)。通帳そのものの保存年数は、この条文には書かれていません。
副業で雑所得の場合も、口座の書類を保存しますか?
前々年分の収入金額が300万円を超える場合は、預貯金の預入・引出しの際に作られた書類などを保存します。期間は、翌年3月15日の翌日から5年間です(施行規則102条7項・8項)。
生活費の口座と事業の口座を分けると、青色申告に有利ですか?
青色申告の条件に、口座を分けることは入っていません。ただし、複式簿記の帳簿を付けるときに、取引の元の資料が整理しやすくなります。
本記事について。税理士監修前の概説です。個別の事情への当てはめは、税務署または税理士へ確認してください。