類似業種比準価額と純資産価額の計算|通達180〜185と小会社の評価
非上場株式の評価で使う類似業種比準価額と純資産価額は、何を材料にどう計算するのか。財産評価基本通達180〜186-2の原文から、類似業種の株価の選び方、1株当たりの配当・利益・純資産の数え方、評価差額に対する法人税額等相当額(38%)、議決権50%以下の80%評価、小会社の評価(179(3))を整理します。
法人化(法人成り)取引相場のない株式の評価額は、会社の規模区分で決まる方式に、2つの計算を当てはめて求めます。類似業種比準価額は上場会社の数字と自社の帳簿上の数字を比べる計算、純資産価額は会社の資産を相続税評価額に直して負債を引く計算です(財産評価基本通達180〜186-2)。
規模区分と評価方式の全体像は取引相場のない株式の評価で扱っています。この記事は、その次の段階として、2つの計算の材料と手順を原文で確かめます。評価額そのものは、決算書や業種ごとの株価が要るため算出しません。
類似業種比準価額の考え方(通達180)
通達180は、類似業種比準価額を、類似業種の株価と、1株当たりの配当金額・年利益金額・純資産価額(帳簿価額で計算した金額)を基にした算式で計算すると定めています。自社の3つの数字を、同じ業種の上場会社の数字と比べて、株価に反映させる考え方です。
- A:類似業種の株価
- b・c・d:評価会社の1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額(帳簿価額)
- B・C・D:課税時期の属する年の、類似業種の1株当たりの配当金額・年利益金額・純資産価額(帳簿価額)
算式の最後にかける係数は、大会社が0.7、中会社が0.6、小会社が0.5です。1株当たりの資本金等の額が50円以外のときは、計算した金額に、50円に対する倍数を乗じて調整します。b・c・dは、1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額で計算します。
類似業種は、評価会社の事業が当てはまる業種目です(通達181)。
業種目は、直前期末以前1年間の取引金額に基づいて判定します。取引金額全体に占める業種目別の割合が50%を超える業種目があればそれによります。50%を超える業種目がないときは、同じ中分類の中の類似する業種目のまとまりや、大分類の「その他の産業」などで判定する細かな定めがあり、原文の(1)から(5)で確かめます(通達181-2)。
なお、卸売業・小売サービス業・それ以外の3区分の判定(規模区分に使う)は、取引金額が最も多い業種で決めます(通達178(4))。
この記事の内容を申告書に落とすときの本PR
記事で確かめた内容を、申告書の記入や帳簿の付け方まで一冊で追いたいとき向けです。
類似業種の株価の選び方(通達182)
通達182は、類似業種の株価を、課税時期の属する月以前3か月間の各月の株価のうち最も低いものとしています。
ただし、納税義務者の選択により、類似業種の前年平均株価、または課税時期の属する月以前2年間の平均株価によることもできます。各月の株価は、業種目ごとに上場会社(標本会社)の毎日の最終価格の月平均を基に計算され、金額は別に定められています。
自社の配当・利益・純資産の数え方(通達183)
通達183は、評価会社側のb・c・dの数え方を定めています。
| 項目 | 数え方 |
|---|---|
| 1株当たりの配当金額(b) | 直前期末以前2年間の剰余金の配当金額の合計額の2分の1を、発行済株式数で割る。特別配当や記念配当などで、毎期継続することが予想できない金額は除く。 |
| 1株当たりの利益金額(c) | 直前期末以前1年間の法人税の課税所得金額(固定資産売却益、保険差益などの非経常的な利益を除く)に、益金に算入されなかった剰余金の配当等の金額と、損金に算入された繰越欠損金の控除額を加え、発行済株式数で割る。負数のときは0。納税義務者の選択で、直前期末以前2年間の平均によることもできる。 |
| 1株当たりの純資産価額・帳簿価額(d) | 直前期末の資本金等の額と利益積立金額に相当する金額(法人税申告書別表五(一)の差引翌期首現在利益積立金額の差引合計額)の合計額を、発行済株式数で割る。 |
配当金額は、各事業年度中に配当金交付の効力が発生した剰余金の配当を基にします。利益積立金額に相当する金額がマイナスのときは、その分を資本金等の額から引き、引いたあとの金額がマイナスなら0とします。
配当は、会社法上の剰余金の配当です。毎期無配の会社は、bが0になります。
決算後に配当や増資があったとき(通達184)
直前期末の翌日から課税時期までの間に、次のことがあったときは、通達180の計算結果を修正した金額を類似業種比準価額とします。
- 配当金交付の効力が発生したとき:計算した価額から、株式1株に対して受けた配当の金額を引きます。
- 株式の割当てなどの効力が発生したとき:(計算した価額+割当てを受けた株式1株につき払い込んだ金額×株式1株に対する割当株式数)÷(1+株式1株に対する割当株式数または交付株式数)で修正します。
純資産価額の計算(通達185〜186-2)
通達185は、1株当たりの純資産価額(相続税評価額で計算した金額)を、課税時期における各資産を財産評価基本通達で評価した価額の合計額から、各負債の金額の合計額と、評価差額に対する法人税額等に相当する金額を引き、課税時期における発行済株式数で割った金額と定めています。類似業種比準価額が直前期末の帳簿の数字を使うのに対し、純資産価額は課税時期の時価に近い評価です。発行済株式数も、直前期末でなく課税時期のものを使います。
3年以内に取得した土地・建物
評価会社が課税時期前3年以内に取得または新築した土地等と家屋等は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額で評価します。帳簿価額が通常の取引価額に相当すると認められるときは、帳簿価額で評価することもできます。
負債に入れるもの・入れないもの
通達186は、貸倒引当金、退職給与引当金、納税引当金などの引当金や準備金に相当する金額は負債に含めないとしています。反対に、次の金額は負債に含めます。
- 課税時期の属する事業年度の法人税・消費税・事業税・道府県民税・市町村民税のうち、事業年度開始の日から課税時期までの期間に対応する未払分
- 課税時期以前に賦課期日のあった固定資産税の未払分
- 被相続人の死亡により、相続人などに支給することが確定した退職手当金、功労金などの金額
評価差額に対する法人税額等相当額
通達186-2は、次の(1)から(2)を引いた残額があるとき、その残額に38%を乗じた金額を、評価差額に対する法人税額等相当額としています。
- (1):課税時期における相続税評価額による総資産価額から、各負債の金額の合計額を引いた金額
- (2):その総資産価額の計算の基とした各資産の帳簿価額の合計額から、各負債の金額の合計額を引いた金額
38%は、法人税(地方法人税と防衛特別法人税を含む)、事業税(特別法人事業税を含む)、道府県民税、市町村民税の税率の合計に相当する割合として、通達に書かれています。通達はこの割合を改正で見直してきた経緯があり、昔の解説書や古い記事の数字と違うことがあります。現在の通達の本文で確認してください。
現物出資や合併、株式交換などで著しく低い価額で受け入れた資産があるときは、(2)の計算に特例があります。該当するときは、通達186-2の原文で確かめます。
議決権50%以下のときは80%
通達185のただし書は、中会社の算式と小会社の評価で使う1株当たりの純資産価額について、株式の取得者とその同族関係者の議決権の合計が、評価会社の議決権総数の50%以下であるときは、計算した金額に100分の80を乗じるとしています。議決権のある株式の割合は、評価額に直接響きます。
小会社の評価(通達179(3))
通達179(3)は、小会社の株式を、1株当たりの純資産価額(相続税評価額で計算した金額)で評価すると定めています。ただし、納税義務者の選択により、Lを0.50として中会社の算式(類似業種比準価額×L+純資産価額×(1-L))で計算した金額によることもできます。
つまり小会社は、原則が純資産価額で、選択した場合に類似業種比準価額と純資産価額を半々で併用できます。どちらを使うか、また、いずれの金額が低くなるかは、会社の決算の数字によって変わります。
| 区分 | 原則 | 選択できる方法 |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準価額 | 純資産価額 |
| 中会社 | 類似業種比準価額×L+純資産価額×(1-L) | 算式中の類似業種比準価額を純資産価額に置き換える |
| 小会社 | 純資産価額 | Lを0.50とした中会社の算式 |
同族株主以外の株主が取得した株式は、通達188の定めで、配当還元方式で評価する場合があります。この記事の方式には当てはまらないため、先に取引相場のない株式の評価で確かめてください。
評価額が決まったあとの相続の手続きは相続した株式の名義書換え、売却したときの税金は非上場株式を譲渡したときの所得税で扱っています。
まとめ
- 類似業種比準価額は、類似業種の株価に、配当・利益・純資産(帳簿価額)の自社と類似業種の比を反映して計算する。係数は大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5。
- 類似業種の株価は、課税時期の属する月以前3か月間の最も低い月の株価。前年平均株価、課税時期の属する月以前2年間の平均株価も選べる。
- 純資産価額は、相続税評価額の総資産から負債と評価差額に対する法人税額等相当額(38%)を引いて、課税時期の発行済株式数で割る。
- 議決権の合計が50%以下の取得者には、中会社の算式と小会社に使う純資産価額に80%を乗じる。
- 小会社は純資産価額が原則で、選択すればLを0.50とした算式でも評価できる。
- 評価額の算出や有利不利の判断は、決算書を基に税理士・税務署に確認する。
よくある質問
- 類似業種比準価額の係数0.7は、会社の規模で変わりますか?
- 変わります。大会社は0.7、中会社は0.6、小会社は0.5です(出典:財産評価基本通達180(2))。
- 類似業種の株価は、どの月のものを使いますか?
- 課税時期の属する月以前3か月間の各月の株価のうち最も低いものです。選択により、前年平均株価、または課税時期の属する月以前2年間の平均株価も使えます(出典:財産評価基本通達182)。
- 1株当たりの配当金額は、直前期の配当だけで計算しますか?
- 直前期末以前2年間の剰余金の配当金額の合計額の2分の1を基にします。特別配当や記念配当で、毎期継続することが予想できない金額は除きます(出典:財産評価基本通達183(1))。
- 純資産価額から引かれる「法人税額等相当額」はいくらですか?
- 相続税評価額による純資産額から、帳簿価額による純資産額を引いた評価差額に38%を乗じた金額です。評価差額がないときは引きません(出典:財産評価基本通達186-2)。
- 小会社の株式は、どの方式で評価しますか?
- 原則は1株当たりの純資産価額(相続税評価額)です。選択により、Lを0.50とした算式(類似業種比準価額と純資産価額の併用)も使えます(出典:財産評価基本通達179(3))。
公式一次情報
あわせて読む
少数株主の配当還元方式の判定(同族株主・議決権5%未満):配当還元方式で評価できる株主の条件|同族株主の判定と議決権の割合(通達188)

