飲食料品の消費税率1%|中間申告の特例と計算例
令和9年4月から税率1%になる案で、中間申告の納付額が実際の売上よりも多くなる問題への特例を整理します。前年を税率1%で計算し直した仮決算の申告、納付額の計算例、出す書類と記入欄、引下げが終わる令和11年の特例を、国税庁のQ&Aで説明します。
国税庁の案内国税庁は、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を1%に引き下げる案を公表しています。令和8年9月15日に閣議決定された大綱の内容で、法案が国会で成立した場合のものです。
毎年、中間申告で消費税を前払いしている事業者は、税率が下がった年も、前年の実績をもとにした金額を納めるのが原則です。飲食料品の売上が中心の事業者は、前払い額が実際の税額より大きくなります。案には、この問題を和らげる中間申告の特例があります。
中間申告の仕組みと、税率1%で起きる問題
中間納付額は、前年の確定消費税額(地方消費税を含まない額)に応じて決まります。
| 前年の確定消費税額 | 中間申告の回数 | 1回の中間納付額 |
|---|---|---|
| 48万円以下 | 原則として不要 | - |
| 48万円超400万円以下 | 年1回 | 前年の確定消費税額の2分の1 |
| 400万円超4,800万円以下 | 年3回 | 前年の確定消費税額の4分の1 |
| 4,800万円超 | 年11回 | 前年の確定消費税額の12分の1 |
中間納付額と一緒に、地方消費税の中間納付額も納めます。回数や基本の仕組みは、消費税の中間申告で確認できます。
税率が1%になると、飲食料品の小売店などは売上の税額が減り、確定申告で納める額が小さくなります。一方、中間申告の額は税率8%だった前年から計算するため、前払いが多すぎる状態になりがちです。飲食店のように、仕入れが税率1%で売上が10%の事業者は、引下げが終わった後に仕入れの税額が増えるため、反対の方向で前払いが多くなります。
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もともとある方法:仮決算による中間申告
前年を基にする方法の代わりに、「中間申告対象期間」を仮決算して、その期間の実際の消費税額と地方消費税額で中間申告・納付することもできます(消費税法43条)。計算した税額がマイナスになっても、還付は受けられません。
注意点は2つあります。
- 中間申告の期限までに出さないと、前年の確定消費税額を基にした申告があったものとみなされます。仮決算の申告書を期限の後に出すことはできません。
- 仮決算で申告するときは、申告書の第一表と第二表のほか、付表を添付する必要があります。
今回設けられる特例:開始時と終了時
案では、中間申告書を出す事業者について、開始時と終了時の2つの特例が設けられます。どちらも仮決算による中間申告書を出す形で、第一表だけの提出で足ります。
| 時期 | 対象になる中間申告 | 計算の前提 |
|---|---|---|
| 引下げの開始時 | 令和9年4月1日以後に開始する中間申告対象期間の分 | 直前の課税期間(令和9年3月31日以前に開始するものに限る)の飲食料品の売上と仕入れに、税率1%が適用されたものとして計算 |
| 引下げの終了時 | 令和11年4月1日以後に開始する中間申告対象期間の分 | 直前の課税期間(令和11年3月31日以前に開始するものに限る)の飲食料品の売上と仕入れに、税率8%が適用されたものとして計算 |
計算結果の中間申告税額(国税と地方消費税)が出ない場合は、ゼロとして申告します。中間申告の回数は、特例を使っても、直前の課税期間の税額に応じた回数(年1回・3回・11回)のままです。
簡易課税を使って中間申告をする場合は、開始時の特例は簡易課税の計算特例を使って、終了時の特例は簡易課税の計算特例を使わずに計算します。
計算例:前払い額が70万円から35万円になる場合
国税庁のQ&Aの図にある例で、令和9年3月期(直前の課税期間)の実績から、令和10年3月期の年1回の中間申告額を比べます。
| 区分 | 売上(税額) | 仕入れ(税額) |
|---|---|---|
| 飲食料品(税率8%で計算) | 3,000万円(240万円) | 2,000万円(160万円) |
| 飲食料品(税率1%で計算し直す) | 3,000万円(30万円) | 2,000万円(20万円) |
| それ以外(税率10%) | 2,000万円(200万円) | 1,400万円(140万円) |
- 原則の中間申告:(240万円+200万円)-(160万円+140万円)=140万円。年1回は2分の1なので70万円です。
- 特例を使った中間申告:(30万円+200万円)-(20万円+140万円)=70万円。年1回は2分の1なので35万円です。
この例では、前払い額が70万円から35万円へ、35万円少なくなります。数字は国税庁の例示を引いた説明用で、実際の金額は、自分の直前の課税期間の売上と仕入れで計算します。
特例を使うときの書類と記入欄
仮決算による中間申告は、通常、申告書の第一表と第二表のほか付表の添付が必要です(消費税法43条4項)。この特例で申告する場合は、申告書(第一表)だけの提出で差し支えありません。
- 第一表の税額の計算では、⑪欄(納付税額)、㉒欄(納付譲渡割額)、㉖欄(消費税及び地方消費税の合計税額)だけを記入します。
- 税務署から「消費税の中間申告書兼納付書」が送られている事業者も、仮決算による中間申告をするときは、その納付書は使いません。
- 国税庁の記入イメージでは、課税期間を令和9年4月1日から令和10年3月31日、中間申告対象期間を令和9年4月1日から9月30日として、「中間申告」の区分で記入しています。
国税庁は、令和8年10月9日に、税率引下げに対応した消費税申告書様式のドラフト版を公表しています。正式な様式は、後日、特設サイトに掲載される予定です。
還付が見込まれるときの選択肢
仮決算による中間申告は、計算した税額がマイナスでも還付を受けられません。確定申告が還付申告になりそうな事業者には、別の方法として「課税期間の特例」を使うことが国税庁のQ&Aで挙げられています。
課税期間の特例を適用すると、短縮した課税期間ごとに確定申告をするため、課税期間が1年のときよりも早く還付を受けられます。なお、課税期間の特例を適用している事業者は、中間申告をする必要がありません。選ぶと2年間は変えられないため、仕組みは課税期間の短縮で確認してから決めてください。
次に知りたいこと
免税事業者・簡易課税の事業者の届出:課税事業者の選択、還付、選択不適用届出書
値札・総額表示の特例:貼り替えが間に合わないときの表示の決まり
令和9年4月1日をまたぐ取引の税率:仕入れ・返品・定期供給契約の扱い
公式情報
- 国税庁「消費税率引下げ特設サイト」(リーフレット・パンフレット・Q&A、申告書様式のドラフト版)
- 国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A」(令和8年9月)(問3-8 中間申告制度の特例)
まとめ
- 飲食料品の消費税率1%は令和9年4月1日から令和11年3月31日までの案で、法案の成立が前提。
- 中間申告が必要なのは、前年の消費税の年税額が48万円を超える事業者。税率8%の前年から計算した額だと、前払いが多くなりやすい。
- 開始時の特例は、令和9年4月1日以後に始まる中間申告対象期間の分で、直前の課税期間の飲食料品を税率1%で計算し直した仮決算の申告ができる。
- 終了時の特例は、令和11年4月1日以後に始まる中間申告対象期間の分で、直前の課税期間の飲食料品を税率8%として計算する。
- 特例の申告は第一表だけでよく、記入するのは⑪・㉒・㉖欄。税務署から届いた納付書は使わない。
- 仮決算の中間申告は期限後に出せず、マイナスでも還付はない。還付が見込まれるときは課税期間の特例が選択肢になる。
自社の中間申告の金額や、どの方法が合うか迷う場合は、国税庁のQ&Aを確認し、税務署または税理士に相談してください。
よくある質問
- 税率が1%になると、中間申告はどうなりますか?
- 原則は、前年の確定消費税額を基にした金額のままです。案では、令和9年4月1日以後に始まる中間申告対象期間の分について、直前の課税期間の飲食料品を税率1%で計算し直した仮決算の中間申告書を出せる特例が設けられます(出典:国税庁Q&A 問3-8)。
- 特例を使うとき、申告書は何を出しますか?
- 申告書(第一表)だけで差し支えありません。記入するのは、⑪欄(納付税額)、㉒欄(納付譲渡割額)、㉖欄(合計税額)です。税務署から届いた「消費税の中間申告書兼納付書」は使いません(出典:国税庁Q&A 問3-8)。
- 仮決算の中間申告書を、期限の後に出せますか?
- 出せません。期限までに出さないと、前年の確定消費税額を基にした申告があったものとみなされます(出典:国税庁Q&A 問3-8)。
- 引下げが終わった後の中間申告はどうなりますか?
- 令和11年4月1日以後に始まる中間申告対象期間の分は、直前の課税期間の飲食料品を税率8%として計算した仮決算の中間申告書を出せる特例が案に入っています(出典:国税庁Q&A 問3-8)。

