飲食料品の消費税率1%|簡易課税の計算特例と計算例
令和9年4月から2年間の飲食料品の消費税率引下げ(予定)で、簡易課税の納付税額の計算がどう変わるかを、国税庁の計算例で確認します。
国税庁の案内国税庁は、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を1%(国と地方の合計)に引き下げる案を公表しています。令和8年9月15日に閣議決定された大綱の内容で、法案が国会で成立した場合のものです。
簡易課税は、売上の税額にみなし仕入率を掛けて仕入税額を決める計算です。税率が1%になる飲食料品の売上については、案で計算方法の特例が設けられます。この記事では、その計算と、中間申告・総額表示の特例を説明します。
簡易課税の計算特例の内容
簡易課税の仕組みは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者が、届出書を出して使う計算です。事業区分ごとのみなし仕入率は、第1種(卸売業)90%、第2種(小売業など)80%、第3種70%、第4種60%、第5種50%、第6種(不動産業)40%です。区分の判定は簡易課税の事業区分で整理しています。
仕入税額を飲食料品の売上税額と同額にするということは、飲食料品の売上については、納める税額がゼロになる計算です。納付額に影響するのは、飲食料品以外の売上の部分です。
この特例は法案の成立が前提で、国税庁は今後Q&Aを随時改訂するとしています。最新の案内を確認してください。
この記事の内容を申告書に落とすときの本PR
消費税の申告やインボイスの扱いを、申告書の記入まで本で確かめたいとき向けです。
計算例1:飲食料品の小売と雑貨の小売
国税庁のリーフレットにある例です(Q&Aには、次の計算例2のように外食を加えた例があります)。税額は地方消費税を含みます。
| 売上 | 事業区分(みなし仕入率) | 売上金額 | 税率 | 売上税額 |
|---|---|---|---|---|
| 飲食料品の小売 | 第2種(80%) | 2,000万円 | 1% | 20万円 |
| 雑貨などの小売 | 第2種(80%) | 300万円 | 10% | 30万円 |
- 売上税額の合計:20万円+30万円=50万円
- 飲食料品に係る仕入税額:売上税額と同額の20万円
- みなし仕入率による仕入税額:30万円×80%=24万円
- 納付税額:50万円−(20万円+24万円)=6万円
特例がない場合の計算(編集部の試算)は、売上税額50万円に80%を掛けた40万円が仕入税額で、納付税額は10万円です。特例により、この例では納付額が4万円少なくなります。
計算例2:外食(イートイン)がある場合
外食は税率1%の対象ではなく、10%のままです。国税庁のQ&Aには、第4種のイートインを加えた例があります。
| 売上 | 事業区分(みなし仕入率) | 売上金額 | 売上税額 |
|---|---|---|---|
| 飲食料品の小売(税率1%) | 第2種(80%) | 2,000万円 | 20万円 |
| 雑貨などの小売(税率10%) | 第2種(80%) | 300万円 | 30万円 |
| イートイン(外食。税率10%) | 第4種(60%) | 100万円 | 10万円 |
- 売上税額の合計:60万円
- 飲食料品に係る仕入税額:20万円
- みなし仕入率による仕入税額:30万円×80%+10万円×60%=30万円
- 納付税額:60万円−(20万円+30万円)=10万円
75%ルールの判定は飲食料品(1%分)を除いて行う
2種類以上の事業を営む場合、1種類の事業の課税売上高が全体の75%以上なら、その事業のみなし仕入率を全体に使える「75%ルール」があります。特例を使う場合、この判定と計算は、税率1%の飲食料品の取引を除いて行うことになっています。
国税庁の例は次のとおりです。
| 売上 | 事業区分(みなし仕入率) | 売上金額 | 売上税額 |
|---|---|---|---|
| 飲食料品の小売(税率1%) | 第2種(80%) | 2,500万円 | 25万円 |
| 雑貨などの小売 | 第2種(80%) | 800万円 | 80万円 |
| イートイン(外食) | 第4種(60%) | 200万円 | 20万円 |
飲食料品を除くと、雑貨の小売の割合は800万円÷1,000万円=80%で75%以上です。そのため、雑貨の小売のみなし仕入率80%を、飲食料品以外の売上(1,000万円、税額100万円)に掛けて仕入税額を計算できます。
この例の納付税額を編集部が計算すると、売上税額125万円(25万円+80万円+20万円)に対し、仕入税額は飲食料品の25万円と100万円×80%=80万円の合計105万円で、納付税額は20万円です。75%ルールの一般的な説明は簡易課税の事業区分にあります。
2割特例・3割特例でも同じ
国税庁は、小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)や、小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置(3割特例)を適用する場合も、同様の特例が設けられるとしています。2割特例・3割特例の期間や条件は2割特例の終了後と3割特例で確認してください。
簡易課税をやめて一般課税にする届出や、免税事業者が課税事業者になる届出の特例は、飲食料品の消費税率1%と届出の特例で説明しています。簡易課税のままか、一般課税に切り替えるかは、仕入れの税率と金額を見積もって比べます。
中間申告の特例
中間申告は、前年(法人は前事業年度)の確定消費税額が48万円を超える事業者が対象です。通常は、直前の課税期間の確定消費税額を基に、年1回・3回・11回のいずれかで納めます。
税率が1%になると、確定申告で納める税額は減りますが、中間申告の額は税率8%の前年を基にするため、過大になるおそれがあります。案では、次の特例が設けられます。
- 引下げの開始時:令和9年4月1日以後に開始する中間申告対象期間の中間申告で、直前の課税期間(令和9年3月31日以前に開始するものに限ります)の飲食料品の売上・仕入れが税率1%だったものとして計算した税額で、仮決算による中間申告書を出せます。
- 引下げの終了時:令和11年4月1日以後に開始する中間申告対象期間では、直前の課税期間の飲食料品が税率8%だったものとして計算できます。
- この特例では、申告書(第一表)のみの提出で足ります。
簡易課税で中間申告をする場合、開始時の特例は簡易課税の計算特例を使って計算し、終了時の特例は簡易課税の計算特例を使わずに計算します。通常の仮決算による中間申告は、期限までに出さないと、直前の課税期間の確定消費税額に基づく申告があったものとみなされ、期限後には出せません。
総額表示の特例
事業者が消費者に価格を表示するときは、消費税額を含めた税込価格の表示(総額表示)が義務です。案では、値札の貼り替えなどが間に合わない事情がある場合の特例が設けられます。
- 令和9年2月1日から5月31日までの間、飲食料品については、実際の支払額と誤認させない掲示などをしていることを条件に、税率8%または1%での総額表示でもよいとされます。新旧の税率が混在する表示も認められます。
- 引下げの終了時(令和11年2月1日から5月31日)も同様の特例が設けられます。
- 対象になる「困難な事情」の例として、夜間の値札の貼り替えに対応できない場合や、商品のパッケージやカタログに価格が印字されている場合が挙げられています。
次に知りたいこと
イートイン・持ち帰り・出前の線引き:店内飲食と持ち帰りの税率の判定
飲食料品の消費税率1%と届出の特例:免税事業者・簡易課税の事業者の届出と期限
飲食料品の消費税率1%と4月1日をまたぐ取引の税率:定期便・通信販売・返品の税率
値札・総額表示の特例と誤認防止措置:貼り替えが間に合わないときの表示の決まり
中間申告の特例と計算例:前年を税率1%で計算し直す仮決算の申告
簡易課税と本則課税の違い:みなし仕入率と実際の仕入割合の比べ方
消費税の中間申告:回数と納付額の決まり方
現行の税率での税額の違いは消費税4方式の比較シミュレーターで試算できます。税率1%の試算は、法案の成立後の案内を待って判断してください。
公式情報
- 国税庁「消費税率引下げ特設サイト」(リーフレット・パンフレット・Q&Aへの入口)
- 国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A」(令和8年9月)(問3-6 簡易課税の計算方法の特例、問3-7 75%ルール、問3-8 中間申告の特例、問3-9 総額表示の特例)
- 国税庁リーフレット「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて」(令和8年9月)(計算例・各特例の概要)
まとめ
- 飲食料品の消費税率1%は令和9年4月1日から令和11年3月31日までの案で、法案の成立が前提。
- 簡易課税では、飲食料品(1%)の売上税額と同額を仕入税額とし、その他の売上にはみなし仕入率を掛ける。飲食料品の売上の納付額はゼロになる計算。
- 75%ルールの判定と計算は、税率1%の飲食料品を除いて行う。
- 2割特例・3割特例を使う場合も、同様の特例が設けられる予定。
- 中間申告は、前年を税率1%(終了時は8%)として計算した仮決算の申告書を出せる。
- 総額表示は、令和9年2月1日から5月31日まで、困難な事情があれば8%または1%の表示が認められる。
よくある質問
- 簡易課税のままだと、飲食料品の売上の消費税はどうなりますか?
- 案では、飲食料品(税率1%)の売上税額と同額を仕入税額として計上するため、その部分の納付額はゼロになります。納付額に影響するのは、飲食料品以外の売上にみなし仕入率を掛けて計算する部分です(出典:国税庁Q&A問3-6)。
- 75%ルールは飲食料品を含めて判定しますか?
- 含めません。特例を使う場合の75%ルールの判定と計算は、税率1%の飲食料品の取引を除いて行います(出典:国税庁Q&A問3-7)。
- 中間申告の額が多すぎるときはどうしますか?
- 令和9年4月1日以後に開始する中間申告対象期間では、直前の課税期間の飲食料品が税率1%だったものとして計算した仮決算による中間申告書を出せる特例が設けられる予定です(出典:国税庁Q&A問3-8)。

