役員が欠けたとき|権利義務役員と仮役員の違い・申立て
取締役や代表取締役が任期満了・辞任・死亡などで欠けたとき、会社法はどう扱うのかを整理します。退任した役員が続けて務める「権利義務役員」と、裁判所が選ぶ「仮役員」の違い、申立ての管轄・費用、放置したときの過料を、会社法と裁判所の案内で確かめます。
2026年時点の制度役員が欠けたときの扱いは、欠けた理由で分かれます。任期満了か辞任なら、後任が就任するまで退任した本人が役員の権利義務を持ち続けます。死亡や解任などで本人に頼れないときは、裁判所に仮役員を選んでもらう方法があります。
どちらの場合も、後任を選ぶ手続きを放置すると過料の対象になります。
- 任期満了・辞任で退任した役員は、後任が就任するまで「なお役員としての権利義務を有する」(会社法346条1項)。
- 権利義務役員がいない場合に、必要があれば裁判所が「一時役員の職務を行うべき者」(仮役員)を選べる(同条2項)。
- 申立先は本店所在地を管轄する地方裁判所で、申立手数料は収入印紙1,000円、選任の登記嘱託に3万円の収入印紙が要る。
- 員数を欠いたまま選任手続を怠ると、100万円以下の過料の対象になる(会社法976条)。
権利義務役員とは
会社法346条1項は、役員が欠けた場合、または法律や定款で決めた員数が欠けた場合について、次のように定めています。任期の満了または辞任で退任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有します。
この「退任後も役員の権利義務を持つ人」を、一般に権利義務役員といいます。たとえば取締役が1人だけの会社で、その人が任期満了で退任しても、後任が就任するまでは、本人が取締役として会社の手続きを続けられます。
| 欠けた理由 | 権利義務役員になるか |
|---|---|
| 任期満了 | なる(会社法346条1項) |
| 辞任 | なる(同上) |
| 死亡・解任など | 条文は任期満了と辞任だけを挙げているため、この規定では対象にならない |
辞任や解任の手続き自体は取締役の辞任・解任の手続き、登記の添付書類は役員変更登記の添付書類の違いにまとめています。
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仮役員が選ばれる場合
会社法346条2項は、役員が欠けた場合などに、裁判所が必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、一時役員の職務を行うべき者を選任できると定めています。この人が、いわゆる仮役員です。
大阪地方裁判所の案内によると、次のような場合は、必要性が欠けると考えられています。
- 任期満了や辞任で欠けたが、権利義務役員がいる。
- 役員が一時的に病気であるというだけで、役員が欠けた場合等に当たらない。
- 後任の取締役などを選ぶ株主総会を開ける。残りの取締役で総会の招集を決議できる場合や、申立人が総会招集の許可を得られる場合も同じ。
つまり、仮役員は「株主総会で後任を選べない事情があるときの最後の手段」という位置づけです。
申立ての管轄・費用・流れ
大阪地方裁判所の案内(一時取締役等職務代行者(仮役員)選任申立て)に沿って、主な点を表にします。実際の運用は裁判所ごとに違う場合があるため、申立前に本店所在地を管轄する地方裁判所に確認してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立先 | 本店所在地を管轄する地方裁判所(会社法868条1項) |
| 申立てができる人 | 利害関係人(取締役、株主、監査役、従業員、債権者など) |
| 申立手数料 | 収入印紙1,000円 |
| 登記嘱託の費用 | 収入印紙3万円(選任決定後、手続の流れの中で納付) |
| 予納金 | 必要な場合に納付。仮役員の報酬・費用の支払を担保するもので、金額は事案による |
| 郵便切手 | 大阪地裁の案内では4,650円分(内訳は案内に記載) |
流れは、申立書の受理、仮役員候補者の選定(原則として裁判所が適任者を選ぶ)、審問期日、予納金・登記嘱託費用の納付、選任決定、決定の告知、選任登記(裁判所書記官が職権で登記嘱託)の順です。仮役員の仕事は、後任の役員が選任されたときなどに終わります。
申立書の書式は、裁判所のサイトの書式サンプル一覧にあります。
代表取締役が欠けた場合
代表取締役が欠けた場合は、会社法351条が同じ仕組みを定めています。任期満了または辞任で退任した代表取締役は、新たに選定された代表取締役が就任するまで、なお代表取締役としての権利義務を持ちます(同条1項)。
それでも足りない場合、裁判所は必要があると認めるときに、利害関係人の申立てにより、一時代表取締役の職務を行うべき者を選任できます(同条2項)。選任した場合、裁判所は会社がその人に支払う報酬の額を定めることができます(同条3項)。
代表取締役の仮役員の選任申立て(費用・流れ・登記)は一時代表取締役の職務を行うべき者の選任申立てでくわしく説明しています。
社長が亡くなった場合の登記や株式の扱いは社長が亡くなった後の会社で説明しています。
放置したときの過料
会社法976条22号は、取締役などが法律や定款で決めた員数を欠いた場合に、その選任の手続(一時会計監査人の職務を行うべき者の選任を含む)をすることを怠ったときは、100万円以下の過料に処すると定めています。
権利義務役員がいて会社が回っていても、後任を選ぶ手続き自体は必要です。任期満了を過ぎた役員の変更登記を放置した場合の過料やみなし解散は、役員の任期・重任登記を放置するとどうなるかで説明しています。
よくある質問
- 権利義務役員と仮役員は何が違いますか?
- 権利義務役員は、任期満了または辞任で退任した本人が、後任の就任まで役員の権利義務を持ち続ける仕組みです(会社法346条1項)。仮役員は、裁判所が申立てを受けて選ぶ別の人です(同条2項)。
- 役員が亡くなった場合も、権利義務役員になりますか?
- 会社法346条1項の条文が挙げているのは任期満了と辞任です。死亡した本人が権利義務を持ち続けることはないため、後任を選ぶか、必要に応じて仮役員の選任を申し立てます。
- 仮役員の選任はどこに申し立てますか?
- 本店所在地を管轄する地方裁判所です(会社法868条1項)。大阪地方裁判所の案内では、申立手数料は収入印紙1,000円、登記嘱託の費用は収入印紙3万円とされています。
- 後任を選ばないままにしておくとどうなりますか?
- 員数を欠いたまま選任の手続を怠ると、100万円以下の過料の対象になります(会社法976条22号)。

