法人成りした年の個人の確定申告の書き方|事業所得・青色申告特別控除・役員報酬の合算
法人設立の日までの個人事業の事業所得をどう申告するか、青色申告特別控除の扱い、役員報酬(給与所得)との合算、廃業届との関係を、国税庁タックスアンサーの原文で整理します。
法人化(法人成り)法人成りした年は、個人事業としての最後の確定申告と、法人から受け取る役員報酬が同じ年に重なります。個人事業の売上と経費は、その年の1月1日から事業をやめる日までの分を申告します。役員報酬は給与所得として別に扱われ、あとで合算されます。
この記事は、事業所得の範囲、青色申告特別控除の確認点、役員報酬との関係、廃業届との関係を順に整理します。年末調整の仕組みは法人化後の年末調整、廃業届の期限は個人事業主の廃業で扱っています。
申告する事業所得の範囲(1月1日から廃業日まで)
所得税は、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得に課税され、翌年に確定申告をします。法人成りした年に個人の申告へ入れる事業所得は、その年の1月1日から個人事業をやめた日までの売上と経費です。法人設立後は、事業の売上は法人のものになるため、個人の事業所得には入りません。
個人事業をやめた日(廃業日)と法人の設立日は、同じ日にそろえることも、ずらすこともできます。廃業後に残る売掛金の回収や後始末の費用の扱いは個人事業主の廃業で説明しています。
青色申告特別控除の確認点
青色申告をしていた場合は、最後の年も青色申告特別控除の要件を確認します。国税庁のタックスアンサーNo.2072(令和8年4月1日現在法令等)では、控除額ごとの要件が次のとおり示されています。
| 控除額 | 主な要件 |
|---|---|
| 55万円 | 不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営み、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で記帳していること。貸借対照表・損益計算書などを確定申告書に添付し、確定申告期限(翌年3月15日)までに提出すること |
| 65万円 | 55万円の要件を満たしたうえで、電子帳簿保存を行うか、確定申告書・貸借対照表・損益計算書などを期限までにe-Taxで送信すること |
| 10万円 | 55万円・65万円の要件を満たさない青色申告者が受けられる |
控除は事業所得から順に差し引くため、事業所得の黒字の額が上限です。損失を除いて計算するため、事業所得が赤字なら控除で赤字を広げることはできません(同No.2072の注)。還付申告書を提出する場合でも、55万円または65万円の控除を受けるには、翌年3月15日までに申告書を提出する必要があります。
No.2072には、事業を廃止した年だけ控除額が変わるという定めは載っていません。廃業した年にどの控除額を使えるかを個別に確かめたいときは、税務署か税理士へ確認してください。控除の基本は青色申告65万円控除で扱っています。
役員報酬との関係と申告が必要になる場合
法人から受け取る役員報酬は給与所得で、個人事業の事業所得とは別の種類の所得です。法人が年末調整をしても、年末調整の対象は給与の分だけで、個人事業の所得は含まれません。
国税庁のタックスアンサーNo.1900(令和8年4月1日現在法令等)は、給与所得者が確定申告をしなければならない場合を挙げています。法人成りの年に関係するのは次の2つです。
- 給与を1か所から受けていて、その全部が源泉徴収の対象となる場合に、給与所得・退職所得以外の各種の所得金額の合計額が20万円を超えること
- 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っていること
個人事業の事業所得が20万円を超えれば、役員報酬を年末調整で精算していても、事業所得を確定申告で申告します。事業所得が20万円以下でも、事業所得が赤字になる場合や、控除を受けて還付を受けたい場合など、申告が有利になることがあります。
事業所得に赤字が出た場合は、損益通算の対象になります。国税庁のタックスアンサーNo.2250では、損益通算の対象を不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4つとしています。このため、事業所得の損失は、役員報酬の給与所得から差し引ける場合があります。反対に、給与所得の計算で損失が生じても、他の所得から差し引くことはできません。
役員報酬の金額の決め方は役員報酬の決め方、申告書の作成手順は確定申告のやり方で扱っています。
廃業届との関係
個人事業をやめるときは、個人事業の開業・廃業等届出書を税務署へ出します。国税庁のタックスアンサーNo.2090では、事業を廃止したときの届出の提出期限を、事実があった日の属する年分の確定申告期限までとしています。
廃業届は、確定申告書とは別の書類です。廃業届を出しただけでは、最後の年の確定申告をしたことにはなりません。事業所得の申告が必要な年は、廃業届とは別に確定申告書を出します。
従業員がいて給与の支払事務所を廃止する場合は、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書が必要です。No.2090では、その提出期限を廃止の事実があった日から1か月以内としています。届出の一覧は個人事業主の廃業にまとめています。
計算の流れの例(架空の条件)
次の条件は、説明のために置いた架空の数字です。実際の金額や税額は、事業の内容や他の所得によって変わります。
- 1月1日から9月30日まで個人事業を営み、10月1日に法人を設立した
- 個人事業の売上が600万円、必要経費が250万円(青色申告、複式簿記、e-Tax申告)
- 10月から12月に、法人から役員報酬を月額25万円ずつ受け取った
| 手順 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 1 | 事業の収入から経費を引く | 350万円 |
| 2 | 65万円の青色申告特別控除を引く(要件を満たす場合) | 285万円(事業所得) |
| 3 | 役員報酬の収入(25万円×3か月) | 75万円(ここから給与所得控除を引いたものが給与所得) |
| 4 | 事業所得と給与所得を合わせて、所得控除を引き、税額を計算する | 確定申告書で計算 |
この例では、事業所得が20万円を超えているため、役員報酬を年末調整で精算していても、確定申告で事業所得を申告します。税額の目安は確定申告の税額試算で試算できます。
まとめ
- 個人の申告に入れる事業所得は、1月1日から個人事業をやめた日までの分。
- 青色申告特別控除は、控除額ごとの要件と、翌年3月15日の期限を確認する(国税庁No.2072)。
- 役員報酬は給与所得で、年末調整の対象に個人事業の所得は入らない。
- 給与以外の所得が20万円を超えれば確定申告が必要(国税庁No.1900)。
- 廃業届の期限は確定申告期限まで。ただし、廃業届と確定申告書は別の手続き(国税庁No.2090)。
- 個別の判断は、税務署や税理士へ確認する。
よくある質問
- 法人成りした年に、個人の確定申告は必要ですか?
- 個人事業の事業所得があり、役員報酬以外の所得が20万円を超えるときは必要です。法人から役員報酬を1か所から受け、給与以外の所得の合計が20万円を超える人は確定申告が必要とされています(出典:国税庁タックスアンサーNo.1900)。
- 個人の確定申告に入れるのは、いつからいつまでの事業所得ですか?
- その年の1月1日から個人事業をやめた日までの分です。所得税は1月1日から12月31日までの所得に課税されます。
- 廃業した年も、青色申告特別控除は使えますか?
- タックスアンサーNo.2072には、廃業した年だけ控除額が変わる定めは載っていません。要件(複式簿記、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内の提出、65万円はe-Taxなど)を満たすかを確認します。個別の判断は税務署や税理士へ確認してください(出典:国税庁タックスアンサーNo.2072)。
- 事業所得が赤字になったら、役員報酬と通算できますか?
- 事業所得は損益通算の対象です。事業所得の損失は、他の所得の金額から差し引ける場合があります(出典:国税庁タックスアンサーNo.2250)。
- 廃業届を出せば、確定申告は不要ですか?
- 廃業届と確定申告書は別の書類です。廃業届の提出期限は確定申告期限までですが、事業所得の申告が必要な年は確定申告書も出します(出典:国税庁タックスアンサーNo.2090)。
公式一次情報
- 国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除(令和8年4月1日現在法令等。2026-10-05確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(令和8年4月1日現在法令等。2026-10-05確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.2250 損益通算(令和8年4月1日現在法令等。2026-10-05確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.2090 新たに事業を始めたときの届出など(令和8年4月1日現在法令等。2026-10-05確認)