法人成りと償却資産税の申告|資産を法人へ移したときの申告者と備考欄の書き方
個人事業の機械・備品を法人へ移したとき、固定資産税(償却資産)は個人と法人のどちらが申告するのかを、地方税法の条文と市のQ&Aで確認できた範囲で整理します。1月1日の所有者という基準と、備考欄の書き方を扱います。
地方税の手続き償却資産税は、土地・家屋以外の事業用資産(機械、工具、備品など)にかかる固定資産税です。所得税や法人税の確定申告とは別に、資産がある市区町村へ毎年申告します。
法人成りで資産を移すときの基準は、毎年1月1日(賦課期日)に誰が所有しているかです。この記事では、条文と市の公式Q&Aで確認できた内容だけを書き、法人の初年度の書き方など記載が見つからない点は、市区町村へ確認する事項として切り分けます。
個人の資産を法人へ移す方法そのもの(売買・現物出資など)は個人事業から法人への資産の引き継ぎ、移した資産の償却方法の届出は減価償却資産の償却方法の届出書で整理しています。
申告者を決める基準は1月1日の所有者
地方税法第383条は、償却資産の所有者が、毎年1月1日現在の償却資産について、所在・種類・数量・取得時期・取得価額・耐用年数などを1月31日までに市町村長へ申告するよう定めています。固定資産税の賦課期日は、同法第359条で、その年度の初日の属する年の1月1日です。
第343条は、固定資産税を固定資産の所有者に課すると定めています。償却資産の所有者とは、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者をいいます。
この3つの条文から、申告と課税の対象になるのは、1月1日現在の所有者であることがわかります。確定申告のように、事業年度の途中の動きを日割りで分ける仕組みではありません。
資産を移す時期と申告者の考え方
条文どおりに読むと、移す時期によって申告者は次のように分かれます。ただし、年の途中で資産を譲渡した年度の納税者の扱いは、市区町村ごとの案内で確認してください。
| 資産を法人へ移す時期 | 翌年1月1日の所有者 | 考え方 |
|---|---|---|
| 12月31日までに移す | 法人 | 法人が、1月1日現在の資産として申告する |
| 1月2日以降に移す | その年の1月1日は個人 | その年度の賦課期日の所有者は個人と読める。法人は、移した年の翌年1月1日の所有者として申告する |
法人設立日と資産を移す日が違う場合は、資産を移した日ではなく、1月1日時点で誰の所有として償却資産課税台帳に登録されているかを基準に確認します。法人成りの時期は法人成りのタイミングとあわせて決めると、申告者が変わる年を見通せます。
個人側の申告(備考欄の書き方)
岐阜県大垣市のQ&Aには、償却資産申告書の「18 備考」欄に書く例があります。事業を引き継いだ場合は、前所有者あてに送られた申告書の備考欄で「相続・譲渡ほか」にレ点を付け、事業を引き継いだ人の氏名と住所を書いて提出します。
事業を廃業した場合は、備考欄の「廃業ほか」にレ点を付け、廃業した年月を書いて提出します。なお、1月1日(賦課期日)時点で廃業している場合、その申告年度は償却資産分が課税されないと案内されています。
個人事業を廃止して法人に資産を移したとき、個人側がどの欄を使うかは市区町村で案内が異なる可能性があります。申告書が届いたら、備考欄に事情を書き、不明な点は課税の担当課へ問い合わせます。
法人側の申告
法人は、決算期にかかわらず、1月1日現在の資産の所有状況を1月31日までに申告します。大垣市のQ&Aは、会社の決算時期にあわせた申告はできず、期日(1月31日、休日の場合は翌業務日)までに申告するよう案内しています。資産の異動が後から判明したときは、改めて修正申告を出します。
法人税が赤字で減価償却をしていない資産でも、課税の対象になる性格の資産なら申告が必要です。同じQ&Aは、法人税や所得税が非課税の場合も、地方税法第348条の非課税に当たらない限り申告が必要と案内しています。
法人の設立初年度に、個人から移した資産の取得価額・取得時期をどう書くかは、今回確認した公式ページに記載が見つかりませんでした。国税側の減価償却で採用する取得価額との関係を含め、市区町村の償却資産担当に確認してください。
免税点150万円でも申告は必要
地方税法第351条は、償却資産の課税標準となるべき額が150万円に満たない場合、固定資産税を課すことができないと定めています。
大垣市のQ&Aは、課税標準額が150万円を下回る場合も、課税の有無は提出された申告書で決めるため、必ず申告するよう案内しています。個人事業のときに資産が少なく課税されていなかった場合も、法人が申告を始めるときは、自分で判断せずに申告書を出します。
市区町村へ確認しておくこと
- 資産を移す日と、法人の設立日(その年の1月1日にどちらの名義か)
- 個人側の申告書の備考欄に書く内容(廃業、譲渡のどちらを使うか)
- 法人の初回申告で、個人から移した資産の取得価額・取得時期の書き方
- 電子申告(eLTAX)で出す場合の入力方法
- 個人事業の開始以降、一度も申告していない資産が見つかった場合の扱い
法人成りの1年目に出す届出や期限は法人成り1年目の届出カレンダー、都道府県・市町村への届出は法人成りの地方税の届出でまとめています。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「地方税法」(第343条: 固定資産税の納税義務者と、償却資産の所有者は償却資産課税台帳に登録されている者であること。第351条: 償却資産の免税点150万円。第359条: 賦課期日は1月1日。第383条: 毎年1月1日現在の償却資産を1月31日までに申告)
- 大垣市「償却資産の申告に関するQ&A」(Q1-8: 事業を引き継いだ場合の備考欄。Q1-9: 廃業の場合の備考欄。Q1-11: 免税点未満でも申告が必要。Q1-12・1-14: 非課税や赤字でも申告が必要。Q1-15: 決算期にかかわらず1月1日現在で申告)
よくある質問
- 法人成りで資産を法人へ移したら、償却資産の申告は誰がしますか?
- 地方税法第383条は、毎年1月1日現在の所有者に申告を求めています。12月31日までに法人へ移した資産は翌年1月1日の所有者である法人、1月2日以降に移した資産は、その年の1月1日の所有者であった個人が対象になると条文からは読めます。年の途中で移した場合の扱いは、市区町村にも確認してください。
- 個人事業を廃止した年の償却資産の申告は不要ですか?
- 不要とは限りません。大垣市のQ&Aでは、廃業しても申告は必要で、備考欄の「廃業ほか」にレ点と廃業年月を書くと案内されています。ただし1月1日時点で廃業している場合、その申告年度は償却資産分が課税されません。
- 法人の決算期が3月だと、申告の時期もずれますか?
- ずれません。申告は決算時期にかかわらず、1月1日現在の所有状況を1月31日までに行います。決算で資産の異動がわかった場合は、修正申告で対応します。
- 資産が150万円未満なら申告しなくてよいですか?
- 課税されない場合でも、申告は必要です。大垣市のQ&Aは、課税標準額が150万円を下回っても、課税の有無は申告書をもとに決めるため、必ず申告するよう案内しています。
- 法人設立初年度の申告で、個人から移した資産の取得価額はどう書きますか?
- 今回確認した公式ページには記載が見つかりませんでした。国税での減価償却との関係もあるため、資産のある市区町村の償却資産担当に確認してください。
まとめ
- 償却資産税の申告と課税は、毎年1月1日現在の所有者が対象で、1月31日までに申告する。
- 12月31日までに資産を法人へ移せば翌年の申告は法人、1月2日以降に移すとその年の1月1日の所有者は個人になる。
- 個人側は備考欄に廃業や譲渡の事情を書き、1月1日時点で廃業していれば、その年度の償却資産分は課税されない。
- 法人は決算期に関係なく1月1日現在で申告し、免税点150万円未満や赤字でも申告する。
- 法人の初年度の取得価額の書き方は、資産のある市区町村へ確認する。