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自宅の一部を会社に貸すときの税金

法人成りのあと、自宅の一部を自分の会社の事務所として貸すと、個人側と会社側で税金の扱いが分かれます。賃料の所得区分、消費税、住宅ローン控除、賃料の決め方を国税庁の資料で整理します。

国税庁の制度
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

法人成りしたあとも、事務所は自宅の一室のまま、という人は少なくありません。このとき、自宅は個人名義で、会社が自宅の一部を借りて使う形にすると、会社は賃料を支払い、個人は賃料を受け取ります。

賃料を受け取る側には所得税、場合によっては消費税がかかり、住宅ローン控除にも影響します。この記事では、個人側で何が変わるかを中心に、国税庁の資料にもとづいて説明します。本店の所在地を自宅にするかどうかの判断は、自宅とバーチャルオフィスの比較で扱っています。

受け取る賃料は不動産所得

国税庁のタックスアンサーNo.1370では、土地や建物などの不動産の貸付けによる所得を不動産所得としています。会社から受け取る賃料も、建物の貸付けの対価なので不動産所得に当たります。

金額は「総収入金額-必要経費」で計算し、確定申告で申告します。法人成りの前に事業所得として申告していた売上とは別の区分になります。

必要経費にできるもの

不動産所得の必要経費は、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち、家事上の経費と明確に区分できるものです。国税庁は主なものとして、貸付資産に係る固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費を挙げています。

自宅の一部だけを貸す場合、建物全体の費用のうち、貸している部分に対応する分だけを区分して経費にします。居住に使う部分の費用は経費になりません。

次は、金額を架空に置いた計算例です。

項目金額(架空の例)
会社から受け取る賃料(月5万円×12か月)60万円
貸している部分に対応する固定資産税・減価償却費・保険料の合計24万円
不動産所得の金額36万円

賃料の額や按分の割合は、実際の契約や建物の使い方で変わります。数字は計算の流れを示すための例です。

消費税は事務所用だと課税になる

国税庁のタックスアンサーNo.6213では、契約で住宅用であることが明らかな住宅の貸付けは非課税としています。一方、住宅を除く建物の貸付けには消費税が課されます。

会社に事務所として貸す場合は、住宅ではなく事務所用の貸付けなので、賃料は課税の対象になります。ただし、課税の対象になることと、実際に消費税を納めることは別の話です。

No.6501によると、個人事業者の場合は前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として納税義務が免除されます。法人成りの直後は、前々年の売上が個人事業のものとして残っているため、前々年の売上が1,000万円を超えていると、賃料にも消費税を預かって納める立場になることがあります。判定の考え方は消費税の課税事業者になる1,000万円の判定で説明しています。

住宅ローン控除は居住用が床面積の2分の1以上

自宅を住宅ローンで買っている場合は、一部を会社に貸すことで住宅ローン控除の要件に影響しないかを確認します。No.1213は、控除を受ける住宅の要件の一つとして、床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していることを挙げています。控除の対象になるローンの計算は事務所・店舗併用住宅の住宅ローン控除で整理しています。

店舗や事務所と併用している住宅は、店舗や事務所の部分も含めた建物全体の床面積で判断します。そのため、貸している事務所の部分が大きく、居住用の部分が2分の1に満たなくなると、要件を満たさなくなるおそれがあります。

居住用部分が2分の1以上あるときの、借入金の扱いや控除額の計算は、個別の事情で変わります。すでに控除を受けている場合や、これから貸し始める場合は、税務署か税理士に確認してください。

賃料の決め方と同族会社の否認

自分が経営する会社に貸す場合、賃料は自分で決められます。ただし、法人税法第132条は、同族会社の行為や計算で、容認すると法人税の負担を不当に減少させる結果になるものがあるときは、税務署長が認めるところに従って課税標準などを計算できるとしています。

所得税法第157条にも、同族会社の株主などの所得税について同じ趣旨の定めがあります。周辺の賃料相場と大きくかけ離れた金額にしたり、居住部分の費用まで賃料に含めたりしないよう、貸す部分の面積と根拠を残しておくと安心です。

会社側で役員の住まいの家賃を経費にする方法は、役員社宅で家賃を経費にする方法で扱っています。事務所の賃料と住まいの社宅は別の仕組みです。

開業届は必要か

No.1399によると、開業届の提出が必要なのは、事業的規模の不動産貸付けを始めたときです。No.1373は、建物の貸付けで事業として行われているものと取り扱われる基準として、貸間やアパートで貸せる独立した室数がおおむね10室以上、独立家屋でおおむね5棟以上を示しています。

自宅の一部を1社に貸すだけであれば、通常はこの基準に届かないため、不動産貸付けのための開業届は要らないと考えられます。個別の判断は、税務署に確認してください。

次に知りたいこと

公式情報

まとめ

  • 会社から受け取る賃料は、個人側では不動産所得になる。貸している部分に対応する固定資産税・減価償却費などを区分して経費にする。
  • 事務所用の貸付けは消費税の課税の対象。ただし前々年の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務は免除される。
  • 住宅ローン控除は、建物全体の床面積の2分の1以上を自己の居住に使っていることが要件の一つ。貸す部分が大きいと外れるおそれがある。
  • 賃料は周辺相場と面積の根拠をそろえる。同族会社には行為計算の否認の定めがある。
  • 自宅の一部を1社に貸すだけなら、通常は事業的規模(10室・5棟)に届かず、不動産貸付けの開業届は要らないと考えられる。

よくある質問

会社から受け取る家賃は、何の所得になりますか?
建物の貸付けによる所得なので、不動産所得になります。総収入金額から必要経費を引いて計算します(出典:国税庁タックスアンサーNo.1370)。
会社に事務所として貸すと、消費税はかかりますか?
住宅を除く建物の貸付けは課税の対象です。ただし、前々年の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務は免除されます(出典:国税庁タックスアンサーNo.6213・No.6501)。
自宅の一部を会社に貸すと、住宅ローン控除は使えなくなりますか?
床面積の2分の1以上を専ら自己の居住に使っていることが要件の一つです。事務所との併用は建物全体の床面積で判断するため、貸す部分が大きいと外れるおそれがあります(出典:国税庁タックスアンサーNo.1213)。
賃料はいくらにしてもよいですか?
自分で決められますが、同族会社の行為や計算で税負担を不当に減らすものは、税務署長が否認できる定めがあります。周辺の相場と貸す面積を根拠に決めておくと安心です(出典:法人税法第132条・所得税法第157条)。
不動産を貸すための開業届は必要ですか?
必要なのは事業的規模の貸付けを始めたときです。貸間・アパートでおおむね10室以上、独立家屋でおおむね5棟以上が基準で、自宅の一部を1社に貸すだけなら通常は届きません(出典:国税庁タックスアンサーNo.1373・No.1399)。
本記事について。税理士監修前の概説です。賃料の決め方や住宅ローン控除の扱いは個別の事情で変わるため、実際の対応は税務署または税理士に確認してください。