会社解散時の役員退職金|清算人の場合の損金算入と源泉徴収
会社を解散して、旧役員がそのまま清算人になるときの役員退職金を整理します。解散前の勤続分だけを退職金にできる条件、損金に入れる事業年度、退職所得の受給に関する申告書の有無による源泉徴収の違い、納付と源泉徴収票の期限を、国税庁の資料で確認します。
2026年時点の制度会社が解散したあとも、旧役員が引き続き清算人として清算事務に従事するなら、解散前の勤続期間に対する退職金は、法人税でも所得税でも退職金として扱われます。ただし、その後に清算人としての退職金を払う場合に、同じ勤続期間をもう一度使わない条件が付きます。
この記事は、退職金の金額の決め方ではなく、解散のときの扱いと手続きの期限を並べたものです。役員退職金の一般的な支払手続きは役員退職金の支払手続き、清算人そのものは清算人とはで扱っています。役員としての勤続が5年以下の場合は退職所得の計算で2分の1課税が使えないため、特定役員退職手当等の課税の仕組みもあわせて確認してください。
解散前の勤続分は退職金になる
国税庁の質疑応答事例は、法人が解散し、引き続き清算人として清算事務に従事する旧役員に、解散前の勤続期間に係る退職手当等を支払う場合を取り上げています。法人税法上も退職給与として取り扱われるという回答です。
理由は、所得税基本通達30-2(6)が、解散後に引き続き役員または使用人として清算事務に従事する人への、解散前の勤続期間に対する退職手当等を、所得税法上の退職手当等として扱っているためです。法人税の側もそれに合わせています。
退職したわけではないので賞与扱いになるのではないか、という疑問が出る場面です。この通達があるため、解散前の勤続分は、清算人になる場合でも退職手当等として払えます。
勤続期間を二重に使わない条件
国税庁のタックスアンサーNo.2725は、引き続き勤務する人に払うものが退職手当等になる条件を示しています。共通の条件は、その後に支払う退職手当等の計算で、今回の退職手当等の基礎にした勤続期間を一切加味しないことです。
清算人の場合は、次のように分けて考えます。
| 場面 | 退職金の対象になる期間 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 解散のとき(清算人に就く) | 解散前の役員としての勤続期間 | この期間は、あとの退職金の計算に入れない |
| 清算結了のとき(清算人を退く) | 解散後、清算人として働いた期間 | 解散前の期間を重ねて数えない |
解散のときに全期間の退職金を払ってから、清算結了でも全期間で計算すると、同じ期間を二度使うことになります。支給額の根拠を議事録と計算書に残し、どの期間を対象にしたかを分けておくと、あとで説明できます。
退職金の額そのものが適正であることも、損金に入れる前提です(法人税法34条、No.5208)。額の決め方は役員報酬が不相当に高額とされる場合の考え方と並べて確認してください。
損金に入れる事業年度
No.5208によると、役員退職金の損金算入時期は、原則として株主総会の決議等で退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度です。実際に払った事業年度に損金経理をしたときは、その事業年度に入れることも認められます。
- 取締役会で内定した金額を、確定する前の事業年度に未払金へ計上しても、その時点では損金にできません。
- 退職年金として払う場合は、年金を支給すべき事業年度が損金算入の時期です。
所得税の側は、収入すべき時期が別に決まっています。タックスアンサーNo.2728は、役員に支給する退職手当等で総会などの決議が必要なものは、その決議があった日(金額が具体的に決まっていなければ、決まった日)としています。
同じページの「引き続き勤務する者に支払われるもの」の項では、役員であった勤続期間に対するものは上の決議があった日、使用人であった勤続期間に対するもののうち、法人の解散後も引き続き清算事務に従事する人に払うものは法人の解散の日とされています。旧役員の退職金がどちらに当たるかで年分が変わる可能性があるため、支払う前に税理士へ確認してください。
源泉徴収は申告書の有無で変わる
退職手当等を支払うときは、所得税と復興特別所得税を源泉徴収します(No.2732。令和9年分以後は防衛特別所得税も加わります)。計算は、受け取る人から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けているかどうかで決まります。
| 申告書 | 源泉徴収の計算 | 国税庁の例 |
|---|---|---|
| 提出を受けている | 勤続年数から退職所得控除額を出し、(支給額−控除額)×1/2を課税退職所得金額として税額を計算(一般退職手当等の場合) | 支給額2,300万円・勤続29年2か月(30年に切上げ)で、源泉徴収税額380,322円 |
| 提出を受けていない | 支給額×20.42% | 支給額800万円で、源泉徴収税額1,633,600円 |
退職所得控除額は、勤続20年以下なら40万円×勤続年数、20年を超えると800万円+70万円×(勤続年数−20年)です。勤続年数は1年未満の端数を1年に切り上げます。
申告書が出ていない場合は、受け取った本人が確定申告をして精算します。役員等としての勤続年数が5年以下の人が受け取る退職手当等のうち、その勤続年数に対応する分(特定役員退職手当等)は、1/2をかけない計算になります。
清算人は、受け取る側の旧役員と同じ人です。申告書を出してもらうだけで、源泉徴収の額が大きく変わるため、支払の前に回収しておきます。
支払から提出までの期限表
退職手当等を支払ってから、源泉徴収票を出すまでに必要な手続きを、期限の早い順に並べました。
| 順番 | やること | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 1 | 退職金の額を総会などで決議する(損金算入時期の基準) | 金額を具体的に確定した日 | No.5208 |
| 2 | 退職所得の受給に関する申告書を受け取る | 提出の有無で源泉徴収の計算が変わる | No.2732 |
| 3 | 所得税と復興特別所得税を源泉徴収して納付する | 原則として翌月10日まで | No.2732 |
| 4 | 退職所得の源泉徴収票を受給者に交付する | 退職後1か月以内 | No.7421 |
| 5 | 退職所得の源泉徴収票を所轄税務署に提出する | 退職後1か月以内(その年中に退職した分をまとめて翌年1月31日までに出してもよい) | No.7421 |
令和8年1月1日以後に支払う退職手当等は、受給者が役員でなくても、すべての受給者の源泉徴収票を税務署に出します。令和7年12月31日以前の支払では、税務署と市区町村に出すのは役員が受給者の場合に限られていました。
市区町村へ出す特別徴収票は、令和8年1月1日以後に支払う分について、当分の間、提出を省略できます。死亡退職の場合は、源泉徴収票ではなく相続税法の支払調書を出します(役員の死亡退職金と弔慰金)。
清算中の会社でも、源泉所得税の納付や法定調書の提出の義務は残ります。清算人は、解散後の給与や源泉所得税の手続きも続けて行います(解散後の給与・源泉所得税の手続き)。
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