個人事業主が配偶者の健康保険の扶養に入れる条件(収入の数え方・確定申告書の添付)
個人事業主やフリーランスでも、会社員の配偶者の健康保険の被扶養者になれる場合があります。収入は売上ではなく、必要経費を引いた額で数えます。収入の判定例と、認定されなくなる典型を整理します。
日本年金機構の案内にもとづく個人事業主が自分で入る国民健康保険には、被扶養者という区分がありません。一方、会社員の配偶者が入る健康保険(協会けんぽ等)では、一定の収入要件を満たせば、個人事業主の自分を配偶者の被扶養者にでき、自分の分の保険料がかからなくなります。
この記事では、日本年金機構が示す収入要件、個人事業主の収入の数え方、申請時に付ける確定申告書の扱いを整理します。逆に、自分が会社員の側で、法人化して家族を扶養に入れたい場合は法人化と健康保険の扶養を参照してください。
収入要件(130万円未満・同居と別居の違い)
日本年金機構は、被扶養者の条件を、日本国内に住所があり、被保険者(健康保険に入っている配偶者)に主として生計を維持されていることに加えて、次の収入要件を満たすことと案内しています。
- 年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満。扶養認定日が令和7年10月1日以降で19歳以上23歳未満の人は150万円未満)
- 同居の場合は、収入が被保険者の収入の半分未満
- 別居の場合は、収入が被保険者からの仕送り額未満
給与収入がある場合の目安として、日本年金機構は月額108,333円以下であれば要件を満たすとしています(130万円を12か月で割った額)。事業の収入は月ごとにばらつくため、この月額の目安をそのまま当てはめるのではなく、1年間の見込みで考えます。
個人事業主の収入は必要経費を引いた額で数える
個人事業主にとって最も大きな点がここです。日本年金機構は、添付書類の説明の中で、自営業者についての収入額は、当該事業遂行のための必要経費を控除した額となるとしています。つまり、売上(事業収入)が130万円を超えていても、そこから事業に必要な経費を引いた残りが130万円未満であれば、収入要件を満たす余地があります。
ただし、何が「必要経費」と認められるかの判断は、手続きの窓口(年金事務所、または加入する健康保険組合)が行います。確定申告で経費として計上していても、認定の場面で同じ扱いになるとは限らないため、迷う項目は申請前に窓口へ確認してください。
また、被扶養者の収入には、事業の収入だけでなく、公的年金や雇用保険の失業等給付、健康保険の傷病手当金・出産手当金も含まれます(日本年金機構)。事業のほかにアルバイトや年金がある人は、合算して判断されます。
判定の設例(売上と経費から収入を出す)
次の2例は、日本年金機構が示す「経費を引いた額で数える」考え方にもとづく、当サイトの計算例です。実際の認定は窓口の判断によります。同居で、被保険者の配偶者の収入が十分大きいものとします。
| 設例 | 売上(見込み) | 必要経費(見込み) | 収入(差引) | 130万円未満か |
|---|---|---|---|---|
| 例1 | 200万円 | 80万円 | 120万円 | 満たす |
| 例2 | 180万円 | 40万円 | 140万円 | 満たさない |
例1は売上が200万円で130万円を超えていますが、経費を引くと120万円で、収入要件の金額には収まります。例2は売上が例1より少なくても、経費が少ないため差引が140万円となり、要件を満たしません。見るのは売上の大きさではなく、経費を引いたあとの金額です。
経費として数えられるのは、日本年金機構の言う「事業遂行のための必要経費」です。確定申告書の数字と見込みの説明が食い違わないようにしてください。
申請に付ける書類(確定申告書の写し)
日本年金機構の添付書類の案内では、自営(農業等を含む)による収入や不動産収入がある人については、直近の確定申告書の写しが収入要件を確認する書類として挙げられています。
- 退職して収入要件を満たす人は、退職証明書または離職票の写し
- 雇用保険の失業給付を受給中の人は、受給資格者証等の写し
- 年金を受給中の人は、年金額の改定通知書等の写し
- 自営による収入がある人は、直近の確定申告書の写し
- 上記以外は、課税(非課税)証明書
同じページの添付書類の一覧に、開業届は挙げられていません。収入を確かめる書類は、確定申告書の写しです。
なお、開業して間もなく直近の確定申告書がまだ無い場合の扱いは、このページから確認できませんでした。申請先の年金事務所または健康保険組合に、見込みを示す書類の可否を確認してください。
認定されなくなる典型
日本年金機構は、被扶養者が次のいずれかに当てはまったときに、削除(非該当)の届出を行うとしています。個人事業主にとって起きやすいのは、収入の増加と、他の保険への加入です。
- 年間収入が130万円以上になる見込みのとき(60歳以上または障害者は180万円以上)。売上が伸びて経費を引いた額も増えたときが典型です。
- 同居の場合は収入が被保険者の収入の半分以上になったとき、別居の場合は収入が仕送り額を超えたとき。
- 自分が健康保険や共済組合などの被保険者・組合員になったとき。法人を設立して自分が役員報酬を受け取り、社会保険に加入するときもここに当たります。
- 離婚したとき、後期高齢者医療制度の被保険者になったとき。
配偶者の扶養を外れて厚生年金保険等に加入しない場合は、国民年金第1号被保険者の加入手続きも必要です(日本年金機構)。外れたあとは、国民健康保険の保険料がかかります。
税の扶養・年収の壁との違い
ここまでの被扶養者は、健康保険の制度で、税金の扶養とは別です。所得税・住民税の配偶者控除は、配偶者の合計所得で判定する別の制度で、基準額も異なります。配偶者控除・配偶者特別控除の要件と控除額は個人事業主の配偶者控除・配偶者特別控除、扶養控除は扶養控除で解説しています。
収入の金額ごとの区切り(年収の壁)の全体像は年収の壁にまとめています。法人化で自分が社会保険に入る場合の保険料の仕組みは、マイクロ法人で社会保険料はいくら安くなる?を参照してください。
まとめ
- 個人事業主でも、会社員の配偶者の健康保険の被扶養者になれる場合がある。
- 収入要件は年間収入130万円未満(60歳以上等は180万円未満)で、同居なら被保険者の収入の半分未満、別居なら仕送り額未満。
- 個人事業主の収入は、売上ではなく必要経費を控除した額で数える。年間の見込みで判断される。
- 申請には、直近の確定申告書の写しが収入を確認する書類として挙げられている。
- 見込み収入が130万円以上になる、自分が社会保険に加入するなどで、扶養から外れる。
公式一次情報
- 日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」(収入要件、年間収入は見込み額であること、自営業者の収入は必要経費を控除した額であること、直近の確定申告書の写し、削除(非該当)の条件を掲載。ページ更新日2026年9月30日、2026-10-07確認)
よくある質問
- 個人事業主でも配偶者の扶養に入れますか?
- 入れる場合があります。日本年金機構の案内では、収入要件(年間収入130万円未満など)と、被保険者に主として生計を維持されていることを満たせば、被扶養者として認定されます。個人事業主かどうかだけで決まるわけではありません。
- 売上が130万円を超えていたらだめですか?
- 売上の額だけでは決まりません。日本年金機構は、自営業者の収入額は事業遂行のための必要経費を控除した額としています。経費を引いた額で130万円未満の見込みなら、要件を満たす余地があります。
- 申請には何を付けますか?
- 自営による収入がある場合は、直近の確定申告書の写しが収入を確認する書類として挙げられています(日本年金機構)。開業届は、同ページの添付書類の一覧に挙げられていません。
- 年間収入は去年の実績で見られますか?
- 実績ではなく、認定される時点以降の1年間の見込み額です(日本年金機構)。去年の確定申告書は見込みを判断する資料の一つです。
- 扶養に入ったあとで売上が増えたらどうなりますか?
- 年間収入が130万円以上になる見込みのときは、削除(非該当)の届出が必要です(60歳以上等は180万円以上)。外れて厚生年金保険等に入らない場合は、国民年金第1号被保険者の加入手続きと、国民健康保険への加入が必要です。