出向者の給与負担金の税務|消費税は課税仕入れ外・法人税は給与扱い
従業員を他の会社へ出向させ、出向先が給与の一部を出向元へ払うときの税務を、国税庁の通達で確認します。
国税庁の通達グループ会社や取引先へ従業員を出向させると、給与は出向元が従業員へ払い、出向先は自分が負担する分を出向元へ「給与負担金」として払う形がよくあります。この負担金は、出向先の帳簿では給与として扱われます。
出向先が払う給与負担金の法人税と消費税の扱い、出向者が出向先の役員になっているときの条件、出向元が払う較差の補塡と退職給与の負担金を説明します。
給与負担金とは:出向元が給与を払い、出向先が負担分を払う形
法人税基本通達9-2-45と消費税法基本通達5-5-10は、次の形を前提にしています。
- 出向元の使用人が他の法人に出向する。
- 出向者への給与は、出向元が支給することにしている。
- 出向先は、自分が負担すべき給与に相当する金額を「給与負担金」として出向元へ支出する。
出向先が自分で出向者に給与を払う形ではなく、出向元を通して払う形の取扱いです。ここから先は、この負担金が出向先でどう扱われるかを見ていきます。
この記事の内容を申告書に落とすときの本PR
記事で確かめた内容を、申告書の記入や帳簿の付け方まで一冊で追いたいとき向けです。
法人税:出向先では給与として扱う
法人税基本通達9-2-45は、出向先が自己の負担すべき給与(退職給与を除く)に相当する金額を出向元へ支出したときは、その給与負担金を出向先における出向者への給与(退職給与を除く)として取り扱うと定めています。
注意したいのは名義です。通達の注1は、出向先が実質的に給与負担金の性質を持つ金額を経営指導料などの名義で支出する場合にも、同じ取扱いが適用されると書いています。請求書や契約書の件名が「経営指導料」でも、中身が出向者の給与の負担なら給与として扱われます。
消費税:課税仕入れに入れない
消費税法基本通達5-5-10も、同じ形の給与負担金を、出向先における出向者への給与として取り扱うと定めています。注では、経営指導料などの名義で支出する場合にも適用するとしています。
給与は課税仕入れになりません。消費税法2条1項12号は、課税仕入れを、事業として他の者から資産を譲り受け、借り受け、または役務の提供を受けることとし、所得税法28条1項に規定する給与等を対価とする役務の提供を除くと書いています。そのため、給与として扱われる給与負担金は、出向先の仕入税額控除の対象にならないと整理できます。
労働者派遣は別の扱いです。消費税法基本通達5-5-11は、派遣元の事業者が派遣先から収受する派遣料等の金銭を、資産の譲渡等の対価に該当すると定めています。通達はこの派遣を、派遣先と労働者との間に雇用関係のない場合と定義しています。
| 項目 | 出向の給与負担金 | 労働者派遣の派遣料 |
|---|---|---|
| 通達 | 消費税法基本通達5-5-10 | 消費税法基本通達5-5-11 |
| 通達の定め | 出向先では出向者への給与として取り扱う | 受け取る派遣元にとって資産の譲渡等の対価に該当する |
| 名義が違うとき | 経営指導料などの名義でも給与として取り扱う | 通達に定めなし |
課税仕入れとして控除できるかどうかは請求書の書き方や契約内容の実質で決まるため、判断に迷うときは顧問税理士か所轄の税務署へ確認してください。インボイスの扱いは仕入税額控除の要件で整理しています。
出向者が出向先の役員になっているとき
出向者が出向先で役員になっている場合、給与負担金は役員給与の規定(法人税法34条)の対象になります。法人税基本通達9-2-46は、次のどちらにも当てはまるときに限り、出向先が支出する給与負担金を出向先における役員への給与の支給として扱うと定めています。
- その役員に係る給与負担金の額について、出向先の株主総会、社員総会またはこれらに準ずるものの決議がされていること。
- 出向契約等で、出向期間と給与負担金の額があらかじめ定められていること。
この取扱いを受ける給与負担金について、事前確定届出給与の届出を出すときは、出向先が所轄の税務署長へ、出向契約等に基づいて支出する給与負担金の定めの内容を届け出ると通達の注1に書かれています。また注2は、出向先が給与負担金として払った額が、出向元が出向者に払う給与の額を超えるときは、その超える部分は給与負担金としての性格がないと書いています。役員報酬の決め方は役員報酬の決め方、事前確定届出給与は事前確定届出給与の届出で説明しています。
出向元が払う給与の較差の補塡
出向先の給与水準が出向元より低いと、出向元がその差を出向者へ払うことがあります。法人税基本通達9-2-47は、出向元が出向先との給与条件の較差を補塡するために出向者へ支給した給与(出向先を経て支給した金額を含む)を、出向元の損金の額に算入すると定めています。
通達の注は、次の2つを較差の補塡のために支給した金額に当たるとしています。
- 出向先が経営不振などで出向者に賞与を払えないため、出向元が出向者に払う賞与の額。
- 出向先が海外にあるため、出向元が払ういわゆる留守宅手当の額。
退職給与の負担金
退職給与の負担金は、給与負担金の通達(9-2-45)の対象外で、法人税基本通達9-2-48から9-2-50に別の定めがあります。
| 場面 | 通達 | 取扱い |
|---|---|---|
| 出向先が、出向期間に対応する退職給与の額として合理的に計算した金額を、あらかじめ定めた負担区分に基づき定期的に出向元へ支出する | 9-2-48 | 出向者が出向先の役員になっていても、支出する日の属する事業年度の損金の額に算入する |
| 出向者が出向元を退職し、出向先がその出向期間に係る退職給与を出向元へ支出する | 9-2-49 | 出向先で引き続き役員または使用人として勤務していても、支出した日の属する事業年度の損金の額に算入する |
| 出向先が出向期間に係る退職給与を全部または一部負担しない | 9-2-50 | 負担しないことに相当な理由があるときは、これを認める |
9-2-48は「あらかじめ定めた負担区分」に基づく支出を前提にしています。役員の退職金は役員退職金の支払い手続きで説明しています。
公式一次情報
- 国税庁「法人税基本通達 第9款 転籍、出向者に対する給与等」(9-2-45から9-2-52)
- 国税庁「消費税法基本通達 第5章第5節 資産の譲渡等の対価」(5-5-10の出向先事業者が支出する給与負担金、5-5-11の派遣料)
- e-Gov法令検索「消費税法」(2条1項12号の課税仕入れ)
よくある質問
- 給与負担金を「経営指導料」の名目で請求されたら、経費の扱いは変わりますか?
- 変わりません。法人税基本通達9-2-45の注1と消費税法基本通達5-5-10の注は、実質的に給与負担金の性質を持つ金額を経営指導料などの名義で支出する場合も、給与として取り扱うと定めています。
- 給与負担金は消費税の課税仕入れとして控除できますか?
- 通達上は出向者への給与として取り扱われ、消費税法2条1項12号が給与等を対価とする役務の提供を課税仕入れから除いているため、控除の対象にならないと整理できます。個別の判断は税理士にご確認ください。
- 派遣料と給与負担金で、消費税の扱いはどう違いますか?
- 派遣料は、派遣元が受け取る金銭が資産の譲渡等の対価に該当すると消費税法基本通達5-5-11が定めています。出向の給与負担金は、出向先では給与として取り扱われます。
- 出向者が出向先の役員のとき、給与負担金はそのまま経費になりますか?
- 株主総会などの決議と、出向契約等での出向期間・負担金の額の事前の定めの両方が必要です(法人税基本通達9-2-46)。出向元が出向者に払う給与の額を超える部分は、給与負担金としての性格がないとされています。
- 出向元が出向者に払う手当の差額は、出向元の経費になりますか?
- 出向先との給与条件の較差を補塡するための給与は、出向元の損金の額に算入されます(法人税基本通達9-2-47)。賞与の補塡や海外出向の留守宅手当が例に挙げられています。
まとめ
- 出向先が出向元へ払う給与負担金は、法人税でも消費税でも、出向先における出向者への給与として取り扱われる。
- 名義が経営指導料などでも、実質が給与負担金なら同じ扱い。
- 給与等を対価とする役務の提供は課税仕入れから除かれるため、給与負担金は仕入税額控除の対象にならないと整理できる。
- 出向者が出向先の役員なら、総会決議と出向契約での事前の定めが条件になり、出向元の給与を超える部分は給与負担金にならない。
- 出向元の較差補塡と退職給与の負担金には、別の通達(9-2-47から9-2-50)がある。
次に知りたいことは、出向者の社会保険・労働保険、出向と転籍の違い、外注費か給与かの判断基準、特定期間の給与で判定する消費税の納税義務、役員報酬の決め方です。

