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出国・海外転出の税の手続き|納税管理人と出国年の申告

年の途中で日本を離れるとき、確定申告の期限は「出国の時まで」か「翌年3月15日まで」かで変わります。分かれ目は、出国までに納税管理人の届出をするかどうかです。

条文・国税庁で確認済み
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

結論から書くと、年の途中で出国する居住者が、出国の時までに納税管理人の届出をすれば、出国年分の確定申告は翌年2月16日から3月15日までに納税管理人を通じて行えます。届出をしないで出国するなら、出国の時までに、その年の1月1日から出国の時までの所得について準確定申告(出国時の申告)が必要です。

納税管理人を立てるかどうかで期限が変わる

出国して日本に住所も居所もなくなると、所得税法上は非居住者になります。国税庁のタックスアンサーは、年の途中で出国する人の申告を、納税管理人を定めたかどうかで2つに分けています(No.1926)。

出国までの対応出国年分の確定申告
納税管理人を指定した1月1日から出国日までの所得と、出国の翌日から12月31日までの国内源泉所得を合計し、翌年2月16日から3月15日までに納税管理人を通じて申告・納税
納税管理人を指定しない居住者期間(1月1日から出国の時まで)の所得について、出国の時までに準確定申告

後者でも、出国後に国内源泉所得(国内の不動産の貸付けによる所得など)がある場合は、居住者期間の所得とその国内源泉所得の合計について、納税管理人を通じて翌年2月16日から3月15日までに確定申告と納税をします。

ポイント:出国の準備で見落としやすいのは、納税管理人の届出が「出国の時まで」に必要なことです。出国してからでは、前者の期限(翌年3月15日)の扱いにはなりません。

この「出国の時までに申告書を出す」ルールの根拠は所得税法第127条です。出国年に確定申告が必要になる人(事業所得があって申告が必要な個人事業主など)が、出国の時の現況で申告書を提出する、と定めています。

納税管理人とは・届出のしかた

納税管理人は、確定申告書の提出や税金の納付などを、非居住者に代わって行う人です。個人でも法人でも構いません(タックスアンサーNo.1923)。

国税通則法第117条は、国内に住所も居所も持たなくなる個人が、納税申告書の提出など国税に関する事項を処理する必要があるときは、国内に住所または居所を持つ人の中から納税管理人を定める、と定めています。定めたら、納税地を所轄する税務署長に届け出ます。解任したときも同じです。

  • 届出書:「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」。所得税と消費税の両方の届出書です。
  • 提出先:非居住者の納税地を所轄する税務署長。
  • 届出後:税務署からの書類は納税管理人あてに届きます。確定申告書は、納税地の所轄税務署に提出します。
  • 変更するとき:すでに届け出ている納税管理人を解任する届出をしたうえで、新しい納税管理人の届出をします。
  • 帰国したとき:居住者に戻るなどで納税管理人を置く必要がなくなったときも、解任の届出書を出します。
注意:納税管理人を誰にするかについて、条文は「国内に住所または居所があり、事務の処理に便宜を有する人」としか定めていません。税理士に限る、親族に限るといった決まりはありません。報酬や委任の条件は、頼む人との契約で決めます。

出国年の確定申告で計算する範囲

国税庁は、出国年分の税額計算について、控除の判定日を次のように案内しています(No.1926)。

控除納税管理人あり納税管理人なし(出国の時の申告)
医療費控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除居住者期間内に支払った金額で計算
配偶者(特別)控除・扶養控除・障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除その年の12月31日で判定出国の日で判定
雑損控除・寄附金控除・基礎控除適用できる(非居住者期間の雑損控除は国内の資産の損失に限る)

個人事業主は、青色申告の場合も、出国年分の事業所得を1月1日から出国日までの帳簿で確定する必要があります。帳簿の締め方や青色申告特別控除の扱いは、管轄の税務署か税理士に確認してください。

法人の役員が海外に転出する場合

自分の会社の役員のまま海外へ移る場合は、個人の申告に加えて、会社が役員報酬の源泉徴収をどう扱うかが論点になります。

所得税法第161条第1項第12号イは、給料や報酬のうち、国内で行う勤務その他の人的役務の提供に基づくものを国内源泉所得とし、内国法人の役員として国外で行う勤務など政令で定めるものも含めると定めています。日本の法人の役員として受け取る報酬は、海外で勤務していても国内源泉所得になり得る、という意味です。

非居住者に国内源泉所得を支払う場合の源泉徴収は、所得税法第212条・第213条に定めがあり、第213条第1項第1号は、原則として20%の税率を乗じて計算する、としています。復興特別所得税が加わる期間は、国税庁の案内に20.42%と書かれています(No.1926の不動産賃貸料の例)。

注意:どの報酬が国内源泉所得に当たるか、日本と居住地国の租税条約でどう扱われるかは、役員の地位、勤務の実態、転出先の国で変わります。ここでは条文の枠組みだけを示します。実際の源泉徴収の要否は、会社の顧問税理士か税務署に確認してください。

法人側の手続きとして、役員の住所が変わったときの登記は代表取締役の変更手続き、会社の変更手続き全般は会社の変更手続き早見表で整理しています。

1億円以上の有価証券等がある場合

国外転出の時点で1億円以上の有価証券等、未決済信用取引等または未決済デリバティブ取引を所有している一定の居住者には、国外転出の時に譲渡があったものとみなして含み益に課税する「国外転出時課税」があります(タックスアンサーNo.1478)。

  • 納税管理人の届出をした場合:国外転出をした年分の確定申告期限までに、各種所得にこの制度の所得を含めて確定申告と納税をします。
  • 届出をしないで国外転出する場合:国外転出の時までに、1月1日から国外転出の時までの各種所得にこの制度の所得を含めて準確定申告と納税をします。
  • 納税猶予:国外転出の時までに納税管理人の届出をするなど一定の手続きをした場合、国外転出の日から5年間、納税を猶予できます(延長の届出で最長10年)。

個人事業主が会社を作り、株式を持ったまま海外へ移る場合などに関係します。対象かどうかは、国外転出の時点の保有資産の合計で判定されます。

この記事で扱わない手続き

  • 住民税:市区町村の手続きです。個人事業主の住民税の基本は個人事業主の住民税で整理しています。出国年と翌年の課税関係は、市区町村に確認してください。
  • 国民健康保険・国民年金:市区町村の窓口と年金事務所の手続きです。
  • 消費税:納税管理人の届出書は所得税と消費税で共通ですが、出国後の課税事業者の判定などは別の論点です。全体像は消費税のまとめを参照してください。
  • 引っ越し(国内):国内で転居する場合の納税地の扱いは個人事業主が引っ越したときの届出です。

よくある質問

出国してから納税管理人の届出をしても間に合いますか?
国税庁の案内で、翌年2月16日から3月15日までに納税管理人を通じて申告する扱いになるのは、出国の時までに納税管理人を指定した場合です(No.1926)。届出をせずに出国すると、居住者期間の所得は出国の時までに準確定申告する必要があります。
納税管理人は誰がなれますか?
個人でも法人でも構いません(No.1923)。条文上は、国内に住所または居所を持ち、国税に関する事項の処理につき便宜を有する人です(国税通則法第117条第1項)。
届出書はどこに出しますか?
非居住者の納税地を所轄する税務署長に、「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」を提出します。
帰国したら、どうしますか?
居住者に戻るなどで先に選んだ納税管理人が不要になったときは、納税地の所轄税務署長に、同じ届出書で解任の届出をします。

年間の申告・納付の期限を確認する

出国のない年の通常の期限は、年間のカレンダーで確認できます。

公式情報

本記事について。税理士監修前の一般的な整理です。出国の時期・転出先・保有資産・租税条約で結論が変わるため、出国前に税務署か税理士へご相談ください。

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