代表取締役の変更手続き|登記は2週間以内
株式会社の代表取締役が交代するときに、法務局の変更登記、税務署の異動届出書、年金事務所の届出をどの順で進めるかを説明します。
会社運営の手続き代表取締役が替わると、会社の代表者として登記された事項が変わるため、まず法務局に変更登記を出します。期限は変更が生じたときから2週間以内で、本店の所在地を管轄する法務局に申請します(会社法915条1項)。
取締役の辞任・解任の一般的な流れは取締役の辞任・解任の手続きで扱っています。この記事は、代表者の交代に限って、選定の方法による書類の違いと、登記のあとに回る届出先の順番を整理します。
交代の流れと手続きの順番
代表者の交代は、会社の内部の決議から始まり、登記、各役所への届出の順に進みます。登記が済むと、登記事項証明書を使える状態になるため、後ろの手続きが進めやすくなります。
| 順番 | 手続き | 期限・時期(公式資料で確認できたもの) |
|---|---|---|
| 1 | 新しい代表取締役を決める(株主総会・取締役会などの決議) | 会社の定め方による |
| 2 | 就任承諾、辞任届などの書面をそろえる | 登記の期限までに |
| 3 | 本店所在地の法務局へ変更登記を申請する | 変更が生じたときから2週間以内 |
| 4 | 税務署へ異動届出書を出す | 異動後速やかに |
| 5 | 年金事務所へ届出を確認・提出する | 事実発生から5日以内とされる届出がある |
年金事務所の5日は登記の2週間より短く、税務署は「速やかに」とされるだけで日数の定めがありません。書類は登記の準備と同時にそろえておくと、短い期限に間に合わせやすくなります。
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代表取締役の選定方法と必要な決議
株式会社では、取締役が会社を代表するのが原則です。他に代表取締役などを定めた場合は、定めた人だけが代表します(会社法349条1項)。取締役が2人以上いても、代表取締役を定めていなければ、各自が会社を代表します(同条2項)。
代表取締役の決め方は、取締役会を置くかどうかで変わります。
- 取締役会を置かない会社:定款、定款の定めに基づく取締役の互選、または株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めます(会社法349条3項)。
- 取締役会を置く会社:取締役会の職務として、代表取締役の選定と解職があります(会社法362条2項3号)。
登記に添付する書面も、この選定方法で変わります。法務局の添付書面一覧では、各自代表、定款代表、株主総会での選定、取締役の互選、取締役会での選定を分けて、必要な議事録や印鑑証明書を示しています。自社の定め方に合う列を、申請前に確認してください。
変更登記の期限・費用・書類
会社の登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をします(会社法915条1項)。代表取締役の氏名は登記事項なので、交代のたびに対象になります。
- 登録免許税:取締役・代表取締役などに関する事項の変更の登記は、申請1件につき3万円です。資本金の額が1億円以下の会社は1万円です(国税庁タックスアンサーNo.7191)。
- 主な書類:新しい代表取締役を選んだ決議の議事録、就任承諾書、辞任するときは辞任届などです。具体的な組み合わせは、法務局の「株式会社代表取締役の就任による変更登記添付書面一覧」で確認します。
- 就任承諾書:取締役会を置く会社では代表取締役の就任承諾書、置かない会社では取締役の就任承諾書に押印が必要とされています(法務省の押印の要否の案内)。再任の場合は不要です。
1回の総会で取締役の選任と代表取締役の選定を同時に行う場合も、書類は選定の方法ごとに必要になります。書類の様式や記載例は、法務局の「商業・法人登記の申請書様式」にあります。
辞任届の押印と印鑑の届出
法務省の案内では、登記所に印鑑を提出している代表取締役の辞任を証する書面には、押印が必要とされています(商業登記規則61条8項)。代表取締役を辞める人が会社の実印の届出者であれば、その人の辞任届に押印をもらうことになります。
登記の申請書には、登記所に提出している印鑑を押印するよう定められています(商業登記規則35条の2第1項)。
書面で申請するときは、新しい代表取締役の印鑑を登記所に届け出る場合に、法務局の「印鑑(改印)届書」の様式を使います。印鑑届出が任意になったのはオンライン申請の場合に限られます。範囲は法人の実印・銀行印・角印の準備で整理しています。
税務署への異動届出書
国税庁の「C1-8 異動事項に関する届出」は、代表者の変更をした法人が出す手続きとして案内されています。提出時期は異動等後速やかに、提出先は異動前の納税地の所轄税務署長で、添付書類はありません。
- 提出方法:e-Taxソフトで作成・提出するか、書面を持参または送付します。
- 消費税の欄:届出書の「消費税」の欄にレ印を付けて出した場合は、重ねて「法人の消費税異動届出書」や「適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書」を出す必要はありません。
- 確認される書類:異動事項の内容確認のため、定款などの写しを確認される場合があります。
商号変更のときに同じ届出書を使う手順は会社の商号変更の登記と届出で整理しています。
年金事務所への届出
日本年金機構は、事業所として登録している内容に変更があった場合の届出として「健康保険・厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届」を案内しています。対象には「事業主の変更」「事業主の氏名の変更」などがあり、提出時期は事実発生から5日以内(諸変更は事実発生後、速やかに)です。提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所で、電子申請、郵送、窓口持参ができます。
本店や社名の変更で使う別の届出書は本店移転・社名変更の社会保険の届出で説明しています。
この案内ページは、株式会社の代表取締役が交代した場合にこの届出が必要かどうかを、はっきり書いていません。法人では事業主が会社そのものなのか、代表者なのかの扱いが、ページの文面からは読み取れないためです。社会保険に加入している会社は、交代の日が決まった段階で、管轄の年金事務所に電話などで要否と期限を確かめてください。
代表者自身の社会保険の扱い(役員報酬が変わるときの月額変更など)は別の手続きです。役員報酬を期中に見直す場合は役員報酬を期中に変えるを参照してください。
銀行・許認可・行政サービスの名義
金融機関の届出、許認可の変更届、各種行政サービスの代表者名義の変更は、窓口や制度ごとに必要書類と期限が異なるため、各窓口に確認してください。
- 銀行:取引先の金融機関ごとに、必要書類と手続きの方法が決まっています。登記が済んだあとの登記事項証明書を求められることが多いため、取得しておくと進めやすくなります。
- 許認可:業種ごとに、代表者の変更を届け出る期限と書類が法令や所管官庁で定められています。許認可を持つ会社は、所管の窓口で確認してください。
- GビズIDなど:代表者を軸にしたアカウントは、代表者が替わると取得し直しになる場合があります。詳しくは法人成りとGビズIDで確認できます。
代表者の自宅住所を登記簿に出したくない場合は、代表取締役等住所非表示措置の申出を、変更登記と合わせて検討します。
まとめ
- 代表取締役の変更登記は、変更が生じたときから2週間以内に本店所在地の法務局へ出す(会社法915条1項)。
- 登録免許税は、資本金1億円以下の会社で1万円、それを超える会社で3万円。
- 書類は、取締役会を置くかどうかと、代表取締役の選定方法で変わる。
- 税務署の異動届出書は異動後速やかに、添付書類なしで、異動前の納税地の税務署へ出す。
- 年金事務所の事業所関係変更(訂正)届は5日以内とされるが、代表者の交代が対象かは窓口で確認する。
- 銀行や許認可の期限は個別の確認が必要で、この記事では扱わない。
商号・目的・本店・資本金などの変更を並べた一覧は会社の変更手続き早見表です。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「会社法」(349条・351条・362条・915条。2026-10-15確認)
- 法務局「商業・法人登記の申請書様式」(株式会社代表取締役の就任による変更登記添付書面一覧)
- 法務省「商業・法人登記の申請の際の押印の要否」(辞任を証する書面・就任承諾書の押印、申請書の押印)
- 法務局「商業・法人登記の申請書様式」(印鑑に関する届出)(印鑑(改印)届書の様式)
- 国税庁タックスアンサーNo.7191「登録免許税の税額表」(役員変更登記の税額)
- 国税庁「C1-8 異動事項に関する届出」(代表者の変更、提出時期、提出先、添付書類)
- 日本年金機構「事業主の変更や事業所に関する事項の変更があったときの手続き」(事業所関係変更(訂正)届、提出時期)
よくある質問
- 代表取締役を変更したら、いつまでに登記しますか。
- 変更が生じたときから2週間以内に、本店所在地の法務局へ変更登記を申請します(会社法915条1項)。
- 代表取締役の変更登記にいくらかかりますか。
- 登録免許税は申請1件につき、資本金1億円以下の会社で1万円、それを超える会社で3万円です(国税庁No.7191)。書類を司法書士に頼む場合の報酬は別です。
- 税務署への届出は必要ですか。
- 国税庁は、代表者の変更をした法人に「異動事項に関する届出」を異動後速やかに出すよう案内しています。提出先は異動前の納税地の所轄税務署長で、添付書類はありません。
- 年金事務所への届出の期限はいつですか。
- 日本年金機構は、事業所関係変更(訂正)届を事実発生から5日以内(諸変更は速やかに)と案内しています。代表取締役の交代が対象になるかは、案内ページに書かれていないため、管轄の年金事務所に確認してください。
- 辞任した代表取締役は、すぐに権限を失いますか。
- 代表取締役が欠けた場合、辞任や任期満了で退任した代表取締役は、新しい代表取締役が就任するまで、代表取締役としての権利義務を持ちます(会社法351条1項)。
次に知りたいこと
取締役の辞任・解任の手続き:代表者に限らず、取締役が辞める・解任されるときの決議と登記を確認する。
代表取締役等住所非表示措置:新しい代表者の自宅住所を登記簿に出さない申出の要件を確認する。
代表取締役の住所変更登記:代表者が交代せず、引越しで住所だけが変わるときの期限と費用を確認する。
会社の商号変更の登記と届出:同じ異動届出書を使う、商号変更の手続きを確認する。
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