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無報酬の役員と休業中の会社の社会保険

役員報酬を出していない会社や、事業を休んでいる会社の社会保険は、どうなるのか。日本年金機構の公表資料から、被保険者になる基準と、全喪届の対象になる休止・廃止、提出期限と添付書類を整理します。

社会保険
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

役員報酬を出していない期間や、事業を休んでいる期間でも、会社が社会保険の適用事業所であることと、役員が被保険者であることは別々に決まります。日本年金機構の公表資料で確認できる範囲を、手続きの順に整理します。

この記事は一般的な仕組みの紹介です。個別の会社の役員が被保険者に当たるか、全喪届を出すべきかは判断しません。解散・清算の流れ全体は法人を解散するときの社会保険の手続き、休眠中の会社の全体像は休眠会社の扱いにあります。

会社は役員1人でも適用事業所になる

日本年金機構の「適用事業所と被保険者」のページは、厚生年金保険の適用事業所を、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)と説明しています。法人は、従業員がいなくても強制的に適用される事業所です。

同じページは、すべての法人事業所(事業主のみの場合を含む)が、厚生年金保険と健康保険の両制度に加入し、被保険者の資格取得の届出を行う必要があるとも書いています。

役員が被保険者になる基準は労務の対償としての報酬

同じページでは、被保険者を、適用事業所に常用的に使用される70歳未満の方と定めています。その「使用される」とは、雇用契約書の有無などとは関係なく、適用事業所で働き、労務の対償として給与や賃金を受ける使用関係をいうと注記されています。

役員については、日本年金機構が公表している疑義照会回答に、昭和24年7月28日保発第74号通知の趣旨が引かれています。「役員であっても、法人から労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者とする」というものです。

見る点公表資料での位置づけ
法人の経営に参画する経常的な労務の提供判断の材料の1つ
その業務の対価としての報酬を、法人から経常的に受けているか判断の材料の1つ
判断の方法材料に優先順位はなく、複数の材料から実態に基づいて総合的に判断する

報酬が低い・出勤が不定期でも一律には外れない

同じ疑義照会回答には、報酬が「月に数円」のような低額の役員についての問いがあります。回答の要点は次の3つです。

  • 経営状況に応じて役員が報酬を下げる例は多く、今後支払われる見込みがあり一時的と考えられるときは、低い報酬の額だけを理由に資格を喪失させるのは妥当でないとされています
  • 最低金額を決めて、それを下回れば被保険者資格がないとするのは妥当ではありません
  • 定期的な出勤がないことだけを理由に、被保険者資格がないとは判断されません。出勤は経常的な労務の提供を見る要素の1つです

一方で、同じ回答は、1円の報酬しかないなど、業務の内容に相応しいか疑わしい場合があることにも触れています。

確認した範囲に、報酬が0円の役員そのものを取り上げた回答はありません。報酬を出していない期間の資格の扱いは、実際の勤務の状況によって見方が変わりえます。個別の事情は年金事務所に相談してください。

社会保険料の負担が重い場合の見直し方は算定基礎・月額変更、役員報酬を決める時期の考え方は役員報酬の決め方にあります。

全喪届が必要になるのは事業の廃止・休止

適用事業所が、適用事業所に当たらなくなったときの手続きが「適用事業所全喪届」です。日本年金機構の同名の手続きページでは、事業主が全喪届を出す場合として、次の5つを挙げています。

  1. 事業を廃止(解散)する場合
  2. 事業を休止(休業)した場合
  3. 他の事業所との合併により事業所が存続しなくなる場合
  4. 一括適用により単独の適用事業所でなくなった場合
  5. 任意適用事業所が被保険者の4分の3以上の同意により、脱退が認可された場合

法人の休眠では、1番と2番が関わります。提出の条件と書類は次のとおりです。

項目内容
提出時期事実発生から5日以内
提出先事務センターまたは管轄の年金事務所
提出方法電子申請、郵送、窓口持参
添付書類(原則)次のいずれか。(1)解散登記の記入がある法人登記簿謄本のコピー、(2)雇用保険適用事業所廃止届(事業主控)のコピー

登記上は会社が存続したまま事業を休む場合に、全喪届を出せるのかは、今回確認した範囲では原文で確認できませんでした。休業の事実だけを理由に出す場合の添付書類や、被保険者が0人の法人の扱いは、年金事務所に確認してください。

解散・清算に進む場合の労働保険や源泉の手続きは、労働保険の廃止手続きと給与・源泉の手続きを見てください。

公式一次情報

まとめ

法人は役員1人でも社会保険の適用事業所で、役員は労務の対償として報酬を受ける使用関係があれば被保険者です。日本年金機構の疑義照会回答は、低い報酬や不定期な出勤だけで一律に資格がないとはしておらず、実態からの総合判断としています。

全喪届の対象になるのは、事業の廃止(解散)や休止(休業)などで、期限は事実発生から5日以内です。報酬0円の役員や、登記上は存続する休業中の法人の扱いは、年金事務所で確認します。社会保険以外も含む年間の棚卸しは役員報酬0円のひとり法人に残る手続き、関連する制度は休眠会社の整理通知と非常勤役員の報酬と社会保険も合わせて見てください。

よくある質問

役員報酬を払っていない役員は、社会保険の被保険者ですか?
被保険者になる基準は、法人から労務の対償として報酬を受ける使用関係があるかです。報酬0円の役員を直接扱った回答は確認できなかったため、勤務の実態を踏まえて年金事務所に確認してください。
役員報酬が少額なら、被保険者から外れますか?
日本年金機構の疑義照会回答は、最低金額を決めて、それを下回れば資格がないとするのは妥当でないとしています。今後支払われる見込みがある一時的な減額は、低い額だけを理由に資格を喪失させるべきではないとされています。
事業を休止したら、社会保険の全喪届を出しますか?
日本年金機構の手続きページは、事業を休止(休業)した場合を全喪届の対象に挙げ、提出時期を事実発生から5日以内としています。登記上は存続する休業中の法人の添付書類は、年金事務所で確認してください。
全喪届には、どんな書類を添付しますか?
原則として、解散登記の記入がある法人登記簿謄本のコピーか、雇用保険適用事業所廃止届(事業主控)のコピーのどちらかです。
本記事について。税理士・社会保険労務士の監修前の概説です。役員が被保険者に当たるか、全喪届を出す必要があるかは、会社の状況によって変わります。手続きの前に、管轄の年金事務所や社会保険労務士へ確認してください。