一人会社の解散手続き|総会を開かない書面決議・清算人・債権者への公告
株主も取締役も自分ひとりの会社でも、解散と清算の手続きは省けません。総会を実際に開かず書面で決議できる点と、取締役がそのまま清算人になる点だけが、複数人の会社より簡単になります。
会社法・e-Govで確認済み結論から書くと、株主が1人で取締役も1人の会社でも、株式会社の解散には「解散の決議」「解散の登記」「債権者への公告と催告」「決算報告の承認」「清算結了の登記」が全部必要です。楽になるのは、株主総会を実際に開かなくても、株主全員(この場合は自分ひとり)が書面で同意すれば決議があったことになる点(会社法319条)と、取締役がそのまま清算人になる点(同法478条1項1号)です。公告の2か月の期間は、一人会社でも短くできません。
一人会社で省ける手続きと省けない手続き
会社法の条文を、一人会社に当てはめて整理しました。「実際に集まる手間」は省けますが、「やるべき手続きそのもの」はなくなりません。
| 手続き | 根拠 | 一人会社では |
|---|---|---|
| 解散の決議 | 会社法471条3号 | 必要。ただし総会を開かず、書面の同意で足りる(319条) |
| 解散の登記 | 926条 | 必要。解散から2週間以内 |
| 清算人の就任 | 478条1項1号 | 取締役がそのまま清算人になる(定款や総会決議で別の人を決めた場合を除く) |
| 債権者への官報公告と個別の催告 | 499条1項 | 必要。期間は2か月以上 |
| 財産目録・貸借対照表の株主総会の承認 | 492条 | 必要。承認も書面の同意で足りる |
| 決算報告の株主総会の承認 | 507条3項 | 必要。承認の日から2週間以内に清算結了の登記(929条1号) |
| 帳簿資料の保存 | 508条 | 必要。清算結了の登記の時から10年間 |
総会を開かずに解散を決める方法
株式会社が株主総会の決議で解散するときは、特別決議が必要です(会社法471条3号、309条2項11号)。特別決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します。株主が1人なら、その人が出席して賛成すれば成立する計算です。
実際に総会を開く代わりに、会社法319条1項の決議の省略が使えます。取締役または株主が「解散する」という提案をし、議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録で同意すると、可決する決議があったものとみなされます。株主が1人なら、その1人の同意書で足ります。
- 同意書面の保存:決議があったものとみなされた日から10年間、書面または電磁的記録を本店に備え置きます(319条2項)。
- 閲覧の請求:株主と債権者は、営業時間内であればいつでも、この書面の閲覧や謄写を請求できます(319条3項)。
- 株主が複数いる場合:この方法を使うには、株主全員が書面で同意することが条件です。1人でも同意しなければ、実際に総会を開いて特別決議を取ります。
決議の要件や解散の事由そのものは会社の解散決議の要件で整理しています。みなし決議の場合に法務局へ出す添付書類は、登記の前に申請先の法務局で確認してください。登記の期限と費用は株式会社の解散登記・清算結了登記にまとめています。
取締役が1人のときの清算人と代表清算人
解散した株式会社は、清算の目的の範囲内で、清算が結了するまで存続するものとみなされます(会社法476条)。その間の事務を行うのが清算人です。
清算人になるのは、次の順です(478条1項)。
- 取締役(次の2号・3号の人がいない場合)
- 定款で定める人
- 株主総会の決議で選んだ人
取締役が自分ひとりで、定款にも別の定めがなく、総会で別の人も選ばなければ、本人が清算人になります。清算人は会社を代表するため(483条1項本文)、清算人が1人なら、その人が会社の代表です。代表取締役を定めていた場合は、その人が代表清算人になります(483条4項)。
取締役が清算人になった場合の登記は、解散の日から2週間以内に、本店の所在地でします(928条1項)。清算人の職務は、現務の結了、債権の取立てと債務の弁済、残余財産の分配です(481条)。清算人の職務や選び方は清算人の選任と職務で詳しく説明しています。
債権者への公告と催告は省けない
清算株式会社は、遅滞なく、債権者に対して一定の期間内に債権を申し出るよう官報に公告し、知れている債権者には別々に催告します。この期間は2か月を下回れません(会社法499条1項)。公告には、期間内に申出をしない債権者は清算から除斥される旨を付記します(同条2項)。
債権者が1人もいないように思えても、取引先、金融機関、リース会社、税金や社会保険料の請求先など、「知れている債権者」がいれば個別の催告が必要です。この期間内は、原則として債務を弁済できません(500条1項)。例外として、少額の債権や担保付きの債権などは、裁判所の許可を得て弁済できる場合があります(同条2項)。
公告と催告の進め方は債権者への公告と催告にまとめています。
財産目録と決算報告は株主の承認が要る
清算人は、就任後遅滞なく、会社の財産の現況を調査して財産目録と貸借対照表を作り、株主総会の承認を受けます(会社法492条1項・3項)。財産目録等は、作ったときから清算結了の登記の時まで保存します(492条4項)。作成の中身は解散時の財産目録と貸借対照表を見てください。
清算事務が終わったら、決算報告を作り、株主総会の承認を受けます(507条1項・3項)。承認があると、任務を怠ったことによる清算人の損害賠償の責任は、不正の行為があった場合を除いて、免除されたものとみなされます(同条4項)。
承認の日から2週間以内に、本店の所在地で清算結了の登記をします(929条1号)。一人会社でも、この2つの承認は、書面の同意を使えば総会を開かずに済ませられます(319条)。決算報告の作り方は清算の決算報告で整理しています。
清算結了後も帳簿は10年保存する
清算人は、清算結了の登記の時から10年間、会社の帳簿と、事業や清算に関する重要な資料を保存します(会社法508条1項)。会社を閉じたあとも、保存の義務は清算人に残ります。
利害関係人の申立てで、裁判所が代わりに保存する人を選ぶこともできます(同条2項)。保存の対象と場所は清算結了後の帳簿の保存で確認できます。
解散すると事業年度が区切られ、法人税などの申告も複数回になります。税務の区切りは法人解散から清算結了までの流れの税務の節にまとめています。個別の税額や手続きの判断は、税務署・法務局・税理士・司法書士にご確認ください。
次に知りたいこと
法人解散から清算結了までの流れ:手続きの全体像と税務の区切り
株式会社の解散登記・清算結了登記:期限・登録免許税・添付書類
清算中の法人の最後の確定申告:残余財産確定の翌日から1か月以内
よくある質問
- 一人会社の解散でも株主総会を開く必要はありますか?
- 実際に開く必要はありません。株主全員が書面または電磁的記録で同意すれば、決議があったものとみなされます(会社法319条1項)。株主が1人なら、その人の同意書で足ります。
- 一人会社なら債権者への公告は省けますか?
- 省けません。清算株式会社は債権者に対する官報公告と、知れている債権者への個別の催告を、2か月以上の期間を定めて行います(会社法499条1項)。
- 一人会社の解散で、清算人は誰がなりますか?
- 定款や株主総会の決議で別の人を決めていなければ、取締役が清算人になります(会社法478条1項1号)。取締役が1人なら、その人が清算人です。
- 同意書面は保存しておく必要がありますか?
- 必要です。決議があったものとみなされた日から10年間、本店に備え置きます(会社法319条2項)。
- 清算結了の登記はいつまでにしますか?
- 決算報告について株主総会の承認を受けた日から2週間以内に、本店の所在地で登記します(会社法929条1号)。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「会社法」(第309条 株主総会の決議、第319条 決議の省略、第471条 解散の事由、第476条 清算株式会社の能力、第478条 清算人の就任、第481条 清算人の職務、第483条 清算株式会社の代表、第492条 財産目録等、第499条・第500条 債権者に対する公告等、第507条 決算報告、第508条 帳簿資料の保存、第926条 解散の登記、第928条 清算人の登記、第929条 清算結了の登記)

