ITフリーランス・Web制作者が法人成りするときの判断点|源泉徴収・インボイス・フリーランス新法・社会保険
ITフリーランスや Web 制作者が法人にすると、報酬の源泉徴収、インボイスの登録番号、フリーランス新法の保護、社会保険の4つが変わります。変わるものと変わらないものを、国税庁・e-Govの記載どおりに表にしました。
国税庁・e-Gov法令検索の記載にもとづく法人にすると、取引先から源泉徴収されなくなる一方、インボイスの番号は取り直しになります。フリーランス新法の保護は、1人の法人なら残ります。
このページは、フリーランスの取引まわりで「法人にすると何が変わるか」に絞っています。税額で個人と法人のどちらが有利かは「法人成りシミュレーター」、個人の源泉徴収の仕組みは「フリーランスの源泉徴収」、インボイスの登録判断は「法人成りとインボイス」、社会保険は「法人成りと社会保険」で詳しく扱っています。
判断の分かれ目の一覧
| 項目 | 個人事業主のとき | 法人にしたあと |
|---|---|---|
| 報酬の源泉徴収 | デザイン料などは支払者に源泉徴収される場合がある | 報酬の受け手が内国法人なら、競馬の賞金を除き対象外 |
| インボイスの登録番号 | 個人の番号 | 引き継げない。法人名義で新たに登録申請する |
| フリーランス新法 | 従業員を使用しない個人は保護の対象 | 代表者1人で従業員がいない法人も対象 |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金 | 法人の健康保険・厚生年金に加入が必要 |
この表のうち、法人にしても保護が変わらないのは新法だけです。税の有利・不利は別の話なので、金額はシミュレーターで確かめてください。
源泉徴収は法人宛だと対象外になる
国税庁のタックスアンサー No.2792 は、源泉徴収が必要な報酬・料金の範囲を、受け取る側が居住者(個人)か内国法人かで分けています。個人の場合は原稿料や講演料、弁護士・公認会計士などへの報酬、モデルや外交員への報酬などが並びます。内国法人の場合は、馬主である法人に支払う競馬の賞金だけが挙げられています。
つまり、個人のときに源泉徴収されていた原稿料・デザイン料などは、法人の名義で受け取るなら、通常は源泉徴収の対象になりません。入金額が増え、確定申告で源泉所得税を精算する作業もなくなります。
- 切替日の前後で、請求書の宛名と名義が個人か法人かを取引先に伝えてください。名義が個人のままだと、取引先は個人向けの扱いで源泉徴収します。
- プログラミングなどシステム開発の報酬は、個人のときも源泉徴収の対象に当たらない場合が多く、この点は法人でも同じです。
- 切替前に個人名義で発生した報酬は、個人の所得です。切替日までに源泉徴収された税額は、個人の確定申告で精算します。
インボイスは法人で取り直す
個人事業主と設立した法人は別の事業者です。個人のインボイス登録番号を法人へ引き継ぐことはできず、法人名義で登録申請をして、新しい登録番号の通知を受けます。国税庁によると、法人番号を持つ課税事業者の登録番号は「T+法人番号」です。
登録すると課税事業者になるため、設立1期目・2期目の免税とは両立しません。取引先が課税事業者の企業中心なら、登録が取引の前提になりやすい点は、個人のときと同じです。登録の判断は「法人成りとインボイス」の表で、取引先の種類ごとに確認できます。
個人事業を廃止するときは、登録取消届ではなく事業廃止届出書を出します。切替日の前後の請求書には、実際に取引した事業者と、その日に有効な登録番号を書いてください。
フリーランス新法は1人法人でも対象
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)の第2条は、保護の対象になる「特定受託事業者」を2つ挙げています。1つは従業員を使用しない個人です。もう1つは、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しない法人です。
代表者1人だけの会社は、法人になっても条文上は対象のままです。役員を増やす、または従業員を雇うと対象から外れます。家族を役員にした場合も、他の役員がいることになるので当てはまります。
- 業務委託の対象には、プログラムや、文字・図形・色彩で構成されるものの作成が含まれます(第2条第3項・第4項)。システム開発や Web 制作の受託は、この定義に入ります。
- 発注する側が、業務の内容や報酬の額、支払期日を明示する義務は第3条にあります。
- 報酬の支払期日は、給付を受けた日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に定めなければなりません(第4条)。
なお、この法律の義務を負うのは主に発注する側の事業者です。自分の取引先の契約書が条文どおりかは「フリーランス新法のチェック」で確認できます。
社会保険の切り替え
常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用する法人事業所は、厚生年金保険と健康保険の加入が法律で義務づけられています。個人のときの国民健康保険・国民年金から外れる手続きは市区町村で行い、法人の新規適用は事実発生から5日以内に年金事務所へ届けます。
役員報酬の額で保険料が決まる仕組みと、負担の試算は「法人成りと社会保険」にまとめています。業界団体の国保組合に入っている人は「法人成りと国保組合の適用除外」も見てください。
公式一次情報
- 国税庁 タックスアンサー No.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
- 国税庁 タックスアンサー No.6498「適格請求書発行事業者の登録申請手続」
- e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(第2条・第3条・第4条)
- 日本年金機構「新規適用の手続き」
確認日は2026年10月9日です。
よくある質問
- 法人にすると、取引先から源泉徴収されなくなりますか?
- 国税庁のタックスアンサー No.2792 では、報酬を受け取る側が内国法人の場合の源泉徴収の対象は、馬主である法人への競馬の賞金だけです。デザイン料や原稿料を法人の名義で受け取るなら、通常は対象になりません。
- 個人のインボイス登録番号は、法人でそのまま使えますか?
- 使えません。個人事業主と法人は別の事業者のため、法人名義で登録申請をして新しい番号の通知を受けます。個人事業を廃止するときは、事業廃止届出書を出します。
- 1人で会社をつくると、フリーランス新法の保護は受けられなくなりますか?
- 受けられます。第2条は、代表者以外に役員がなく、従業員を使用しない法人も特定受託事業者としています。役員を増やすか従業員を雇うと、対象から外れます。