個人事業を売る税金|営業権は譲渡所得、消費税は資産ごと
個人事業を他人に譲る(事業譲渡)と、営業権の対価は譲渡所得、商品は事業所得、消費税は資産ごとに課税・非課税が分かれます。国税庁の資料で整理します。
廃業・事業承継店や事業を丸ごと第三者に譲るとき、受け取る代金には所得税と消費税の両方で、資産の種類ごとに別々の扱いがかかります。営業権(のれん)、商品、建物、土地、売掛金のそれぞれで税金の種類も課税の有無も違います。
この記事は、家族への引継ぎや法人への移行ではなく、第三者に事業を売る場面を扱います。家族への引継ぎは個人事業を家族に引き継ぐときの手続き、法人への移行は個人事業から法人への資産の引継ぎを見てください。
所得税は資産ごとに所得の種類が分かれる
国税庁の確定申告書等作成コーナーの解説では、総合課税の譲渡所得の対象に営業権や機械器具、車両などが挙げられています。一方、商品などの棚卸資産を譲渡した所得は事業所得です。
| 譲る資産 | 所得税の扱い |
|---|---|
| 営業権 | 総合課税の譲渡所得(所得税法33条) |
| 機械器具・車両 | 総合課税の譲渡所得の対象として列挙されている |
| 商品・製品・原材料などの棚卸資産 | 事業所得 |
| 貸付金・売掛金などの金銭債権 | 譲渡所得の対象から除かれる |
営業権の対価は、国税庁の質疑応答事例(新聞販売権の事例)で、営業権の譲渡対価として譲渡所得の収入金額になると示されています。
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営業権の譲渡所得の計算
譲渡所得の金額は、譲渡益から特別控除額(最高50万円)を引いて求めます。譲渡益は、収入金額から取得費と譲渡費用を引いた金額です。質疑応答事例の新聞販売権の計算式では、取得費は「有償取得価額-減価償却費の累積額」です。
所有期間によって総所得金額への入れ方が変わります。
| 区分 | 所有期間 | 総所得金額に合計する額 |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | その全額 |
| 長期譲渡所得 | 5年を超える | その2分の1 |
特別控除の50万円は、短期と長期の合計で1年に50万円までです。
消費税は営業権と建物が課税、土地と売掛金は非課税
消費税は、売り手が課税事業者であれば、事業の譲渡も資産の譲渡等に当たります。国税庁の質疑応答事例(消費税法施行令45条3項)によると、営業の譲渡は課税資産と非課税資産を一括して譲渡するものとして、対価の額を合理的に区分して課税します。
| 譲る資産 | 消費税 | 根拠 |
|---|---|---|
| 営業権 | 課税 | 質疑応答事例の事例で課税対象に含まれている |
| 建物・機械・車両などの事業用資産 | 課税 | タックスアンサー No.3240 |
| 土地(借地権などを含む) | 非課税 | タックスアンサー No.6201 |
| 売掛金などの金銭債権 | 非課税 | タックスアンサー No.6201 |
質疑応答事例では、営業権10億円、有形固定資産10億円、土地20億円を一括で譲渡した場合、課税対象は20億円(営業権と有形固定資産)で、土地の20億円は算入しないとされています。
消費税の納税義務は、譲渡する年の課税事業者かどうかで決まります。免税事業者であれば、この譲渡で消費税の申告は発生しません。判定は消費税の基準期間で確認してください。
事業をやめる年の消費税は廃業した年の消費税にまとめています。
架空条件の当てはめ
次の表は説明用の架空条件です。上の表の区分に当てはめた場合の見方を示します。
| 架空の譲渡内容 | 所得税 | 消費税 |
|---|---|---|
| 営業権(のれん)の対価 | 譲渡所得 | 課税 |
| 在庫の商品 | 事業所得 | 課税の対象になる商品の販売。個別の区分は税務署か税理士に確認 |
| 売掛金の引継ぎ | 譲渡所得の対象から除かれる | 非課税 |
| 店の建物 | (この記事では扱わない) | 課税 |
| 店の敷地 | (この記事では扱わない) | 非課税 |
実際の申告は、譲渡する資産の内訳がわかる契約書をもとに、税務署か税理士に確認してください。
次に知りたいこと
廃業するときの届出と手続き(事業を譲った後に出す廃業届など)
土地と建物を一括で売ったときの消費税(対価の区分の考え方)
消費税の課税・非課税・不課税の区分
まとめ
- 個人事業を第三者に売ると、資産ごとに所得税・消費税の扱いが分かれる。
- 営業権の対価は総合課税の譲渡所得。特別控除は最高50万円で、長期(5年超)は2分の1を総所得金額に合計する。
- 棚卸資産(商品など)の譲渡は事業所得で、売掛金などの金銭債権は譲渡所得の対象から除かれる。
- 消費税は、営業権と建物・機械・車両などが課税、土地と売掛金などが非課税。一括で譲る場合は対価を合理的に区分する。
よくある質問
- のれん(営業権)を売った代金は、事業所得になりますか?
- 営業権の譲渡は、国税庁の整理では総合課税の譲渡所得に当たります。質疑応答事例でも、営業権の譲渡対価は譲渡所得の収入金額とされています(出典:国税庁 確定申告書等作成コーナー、質疑応答事例)。
- 譲渡所得の特別控除はいくらですか?
- 最高50万円です。短期譲渡所得と長期譲渡所得を合わせて1年に50万円までです(出典:国税庁タックスアンサー No.1460)。
- 事業を売ると、消費税はどうなりますか?
- 課税事業者が営業を譲渡する場合、営業権や建物は課税、土地は非課税です。一括譲渡では対価を合理的に区分します(出典:国税庁 質疑応答事例)。
- 売掛金も一緒に引き継ぐと、消費税がかかりますか?
- 売掛金などの金銭債権の譲渡は非課税です(出典:国税庁タックスアンサー No.6201)。
- 買い手側の処理もこの記事でわかりますか?
- この記事は売り手の税金を扱います。買い手の取得価額の配分などは国税庁の資料で確認できた範囲を超えるため、税理士に確認してください。
公式一次情報
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー 総合課税の譲渡所得(営業権が対象資産に含まれる。2026-10-24確認)
- 国税庁 質疑応答事例 営業権の譲渡対価と譲渡所得(収入金額と計算式。2026-10-24確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1460 譲渡所得の計算(特別控除50万円・短期と長期。2026-10-24確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.3105 棚卸資産等の譲渡(事業所得・金銭債権の除外。2026-10-24確認)
- 国税庁 質疑応答事例 営業の譲渡の消費税(資産ごとの区分。2026-10-24確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.3240 事業用資産の譲渡と消費税(2026-10-24確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.6201 非課税となる取引(土地・金銭債権。2026-10-24確認)
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