個人事業主が従業員を初めて雇うときの届出一覧(4つの提出先)
従業員を1人雇うと、税務署、労働基準監督署、ハローワークの3か所に届出が必要になります。常時5人以上なら、業種によっては年金事務所も加わります。提出先ごとの書類名と期限は次のとおりです。
開業後の手続き個人事業主が初めて従業員を雇うと、給与から所得税を天引きして納める立場になり、労災保険や雇用保険の手続きも生まれます。届出先が役所ごとに分かれ、期限もばらばらなので、雇い入れの日を起点に並べて確認すると漏れを防げます。
いちばん早い期限は、労働保険の保険関係成立届と雇用保険の適用事業所設置届の「10日以内」で、税務署の給与支払事務所の開設届出書は「1か月以内」です。社会保険(健康保険・厚生年金)は、常時5人以上の個人事業所でも業種で加入が義務かどうかが分かれます。
提出先別の届出と期限の一覧
| 提出先 | 届出 | 期限 |
|---|---|---|
| 税務署 | 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 開設の事実があった日から1か月以内 |
| 税務署 | 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(任意) | 期限の定めなし。出した月の翌月末に承認とみなされる |
| 労働基準監督署 | 保険関係成立届 | 保険関係が成立した日から10日以内 |
| 労働基準監督署など | 概算保険料申告書 | 保険関係が成立した日から50日以内 |
| ハローワーク | 雇用保険適用事業所設置届 | 保険関係が成立した日の翌日から10日以内(事業所を設置した日の翌日から起算して10日以内とする案内もあります) |
| ハローワーク | 雇用保険被保険者資格取得届 | 被保険者となった日の属する月の翌月10日まで |
| 年金事務所 | 被保険者資格取得届など(常時5人以上の個人事業所で対象業種の場合) | 事実が発生してから5日以内(日本年金機構の案内) |
たとえば1月15日に最初の従業員を雇い、事務所を開設した日が同じ日なら、税務署の開設届出書は2月15日まで、資格取得届は2月10日までです。労働保険とハローワークの設置届は、1月下旬が期限になります。
この記事の内容を申告書に落とすときの本PR
記事で確かめた内容を、申告書の記入や帳簿の付け方まで一冊で追いたいとき向けです。
税務署:給与支払事務所等の開設届出書と納期の特例
給与を支払う事務所を開設したときは、その事実があった日から1か月以内に、届出書を税務署長に出します。根拠は所得税法230条です。国税庁の手続案内(A2-7)は、提出先を給与支払事務所等の所在地の所轄税務署としています。
法人の場合は法人の給与支払事務所等の開設届出書で扱っています。
あわせて検討したいのが、源泉所得税の納期の特例です。国税庁のタックスアンサー(No.2505)によると、源泉徴収した所得税は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに納めます。給与の支給人員が常時10人未満なら、申請書を出すことで、1月から6月分を7月10日、7月から12月分を翌年1月20日にまとめて納められます。
申請書を出した月の翌月末に承認があったものとみなされ、出した月の翌月に源泉徴収する分から特例の対象です。仕組みの詳細は源泉所得税の納期の特例にまとめています。家族を従業員にする場合の給与の扱いは事業専従者への給与と白色申告の専従者控除を確認してください。
労働基準監督署:労働保険の成立届と概算保険料
労災保険法3条は、労働者を使用する事業を適用事業としています。パートやアルバイトでも、1人でも労働者を使用すれば、事業主は労働保険の手続きが必要です。
厚生労働省の兵庫労働局のページでは、労働者を雇用したときの手続きとして、保険関係成立届を成立した日から10日以内に所轄の労働基準監督署へ、概算保険料申告書を成立した日から50日以内に提出する、と案内しています。
事業主本人は労働者ではないため、労災保険の補償を受けるには、中小事業主等の特別加入という別の制度があります。個人事業主本人の労災は、このガイドの対象外です。
ハローワーク:適用事業所設置届と資格取得届
雇用保険の対象になる従業員を雇うときは、事業所の届出と、従業員ごとの届出の2段階です。厚生労働省の手続き一覧表によると、次のとおりです。
- 雇用保険適用事業所設置届:保険関係が成立した日の翌日から10日以内
- 雇用保険被保険者資格取得届:被保険者となった日の属する月の翌月10日まで
資格取得届の確認書類は、賃金台帳、労働者名簿、出勤簿、雇用契約書などです。どの従業員が雇用保険の対象になるかの条件は、雇用保険の加入条件で整理しています。
年金事務所:常時5人以上の個人事業所の社会保険
日本年金機構の案内では、従業員が常時5人以上いる個人の事業所は、農林漁業、サービス業などの場合を除いて、厚生年金保険の適用事業所になります。被保険者となるべき従業員を使用している場合は、必ず加入手続きをしなければなりません。令和4年10月からは、法律・会計にかかる業務を行う士業の個人事業所も、常時5人以上なら強制適用です。
常時5人未満の個人事業所や、対象外の業種は、従業員の半数以上の同意と事業主の申請、厚生労働大臣の認可で任意に適用事業所になれます。任意適用の考え方は個人事業所の社会保険の任意適用で扱っています。
従業員の数や業種によって扱いが変わるため、迷ったときは管轄の年金事務所に確認してください。
まとめ
- 税務署には、給与支払事務所等の開設届出書を、開設の事実があった日から1か月以内に出す。
- 源泉所得税の納期の特例は、常時10人未満なら申請でき、納付が年2回になる。
- 労働者を1人でも使うと労働保険の対象。保険関係成立届は10日以内、概算保険料申告書は50日以内。
- 雇用保険は、適用事業所設置届が10日以内、被保険者資格取得届が翌月10日まで。
- 社会保険は、常時5人以上の個人事業所が、農林漁業・サービス業などを除いて強制適用。
給与を払う事務所を移したときの届出は、個人事業主が引っ越したときの届出にあります。
初めて人を雇うときに使える助成金はトライアル雇用助成金(一般トライアルコース)で確認できます。
公式一次情報
- 国税庁 A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出(提出時期・提出先。2026-10-15確認)
- 所得税法 第230条(開設の日から1か月以内の届出。2026-10-15確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.2505 源泉所得税の納付期限と納期の特例(常時10人未満・7月10日と1月20日・承認とみなされる時期。2026-10-15確認)
- 労働者災害補償保険法 第3条(労働者を使用する事業は適用事業。2026-10-15確認)
- 厚生労働省 兵庫労働局 労働者を雇用したとき(労働保険)(成立届10日以内・概算保険料50日以内。2026-10-15確認)
- 厚生労働省 労災保険 特別加入制度(中小事業主等の特別加入。2026-10-15確認)
- 厚生労働省 雇用保険 手続き一覧表(設置届・資格取得届の期限。2026-10-15確認)
- 日本年金機構 適用事業所と被保険者(常時5人以上の個人事業所・適用除外の業種・士業の追加。2026-10-15確認)
よくある質問
- アルバイト1人を雇うだけでも、労災保険の手続きは必要ですか?
- 必要です。労災保険法3条は、労働者を使用する事業を適用事業としています。人数の下限はありません。
- 給与支払事務所等の開設届出書は、いつまでに出しますか?
- 開設の事実があった日から1か月以内です。所得税法230条の定めで、提出先は事務所の所在地の所轄税務署です。
- 源泉所得税の納期の特例は、従業員を雇えば自動で使えますか?
- 使えません。給与の支給人員が常時10人未満で、申請書を出した場合に限ります。出した月の翌月末に承認があったものとみなされます。
- 従業員を1人雇ったら、健康保険と厚生年金にも入りますか?
- 個人事業所は、常時5人以上でも農林漁業やサービス業などを除く業種が強制適用です。5人未満や対象外の業種は、任意適用の認可を受けた場合に加入します。
- 雇用保険の資格取得届は、いつまでに出しますか?
- 被保険者となった日の属する月の翌月10日までです。事業所の設置届は、保険関係が成立した日の翌日から10日以内に出します。

