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個人事業税を払えないときの猶予制度:徴収猶予と換価の猶予

個人事業税の納付が難しいときに使える「徴収猶予」と「換価の猶予」の要件、申請期限、延滞金の軽減、申請後の注意点を、地方税法と都県の案内で整理します。

個人事業税の納付
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

結論:個人事業税を一度に払えない場合は、地方税法15条の徴収猶予と15条の6の換価の猶予があり、どちらも申請に基づいて原則1年以内の期間で認められます。認められると、期間内の分割納付と延滞金の軽減を受けられます。申請期限は都道府県ごとに違い、東京都は納期限から3か月以内、岐阜県は6か月以内です。

個人事業税は都道府県税で、納期は年2回(多くは8月と11月)です。納期限を過ぎると延滞金がかかり、督促状、差押えへと進みます。その前に、納税通知書を手元に置いて所管の県税事務所(東京都は都税事務所)へ相談するのが基本です。

猶予制度は2種類ある

地方税には、納税が難しい人のための猶予制度が2つあります。個人事業税も対象で、使う場面と根拠条文が違います。

制度根拠主な対象猶予の期間
徴収猶予地方税法15条災害・病気・事業の廃止や休止・事業の著しい損失などがあり、一時に納付できない1年以内(延長を含めて2年以内)
換価の猶予(申請による)地方税法15条の6一時に納付すると事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがあり、納税に誠実な意思がある1年以内

どちらも「申請すれば必ず認められる」制度ではありません。地方団体の長が内容を調査して認めるかどうかを判断します(徴収猶予は同法15条の2第5項、換価の猶予は15条の6の2第3項)。

徴収猶予の要件と期間

地方税法15条1項は、次のいずれかの事実があり、納付できないと認められる金額を限度として、1年以内の期間で徴収を猶予できると定めています。

  • 財産について震災・風水害・火災その他の災害を受けた、または盗難にあった
  • 本人または生計を一にする親族が病気にかかった、または負傷した
  • 事業を廃止した、または休止した
  • 事業について著しい損失を受けた
  • 上の各事実に類する事実があった

法定納期限から1年を過ぎたあとに税額が確定した場合も対象になります(同条2項)。たとえば修正申告や更正で、かなり後になって個人事業税の額が決まった場合です。

猶予した金額は、条例の定めにより、猶予期間内の分割納付になることがあります(同条3項)。期間内に納められないやむを得ない理由があるときは、申請により期間を延長できますが、最初の猶予とあわせて2年を超えられません(同条4項)。

換価の猶予の要件と期間

換価の猶予は、すでに納期限を過ぎて滞納になっている税金について、財産の売却(換価)を待ってもらう制度です。地方税法15条の6は、次の2つを要件にしています。

  • 一度に納付すると、事業の継続または生活の維持が困難になるおそれがある
  • 納付について誠実な意思があると認められる

猶予の期間は1年以内で、分割納付の扱いは徴収猶予と同じ考え方です。滞納している他の地方税があるなど、猶予をするのが適当でない場合は、認められないことがあります(同条2項)。申請がなくても、税務当局が職権で猶予する場合もあります(同法15条の5)。

申請期限は納期限から数か月(自治体で違う)

換価の猶予の申請期限は、法律では「条例で定める期間内」とされ、都道府県で違います。2026年10月に確認できた2例を並べます。

自治体換価の猶予の申請期限徴収猶予の申請期限
東京都都税の納期限から3か月以内原則、納期限まで
岐阜県納期限から6か月以内事業の廃止・休止などは期限なし。1年経過後に確定した税は納期限まで
東京都の換価の猶予は、納期限ごとに申請します。東京都は、個人事業税のように年に複数の納期限がある税は、納期限の都度、申請が必要としています。8月分を猶予してもらっても、11月分は別に申請します。

お住まいの都道府県の期限は、納税通知書に書かれた県税事務所の窓口か、県の公式サイトで確認してください。

猶予中の延滞金はどうなるか

猶予を受けると、期間中の延滞金が軽減されます。地方税法15条の9は、事業の廃止などによる徴収猶予と換価の猶予については、年14.6%で計算される期間に対応する延滞金の2分の1を免除すると定めています。災害・病気などによる徴収猶予では、猶予期間中の延滞金が全額免除されます。

実際の率は、年ごとの特例の割合で決まります。東京都の案内では、事業の廃止や著しい損失による徴収猶予と換価の猶予の場合、令和8年中の延滞金は納期限の翌日から1か月までが年2.8%、それ以降が年9.1%ですが、猶予特例基準割合を超える部分が免除され、年1.3%分を納めることになります。

割合は年ごとに変わるため、実際の率は申請先に確認してください。延滞金の一般的な計算は延滞税の計算と期限別の考え方でも扱っています。

申請の流れと必要書類

申請先は、所管の県税事務所(東京都は都税事務所の徴収課)です。東京都ではeLTAXによる電子申請もできます。

  1. 納税通知書を手元に用意し、早めに窓口へ電話などで相談する
  2. 口座振替で納付している場合は、申請前に口座振替の停止を連絡する(東京都の案内)
  3. 申請書と財産収支状況書などを出す
  4. 審査のうえ、認められれば分割納付の計画に沿って納める

岐阜県の案内では、提出書類は猶予の申請書、財産収支状況書、担保の提供に関する書類です。猶予を受けたい金額が100万円を超える場合は、財産収支状況書に代えて財産目録と収支の明細書を出します。東京都も、猶予を受けたい金額が100万円を超える場合は担保が必要としていますが、猶予期間が3か月以内などの場合は提供不要です。

徴収猶予は、原則として納期限までに申請します。東京都の案内では、納期限後に申請すると督促状などが送付されることがあるとされています。通知書や督促状が届いても無視せず、窓口に連絡して状況を伝えてください。

督促や差押えの流れは個人事業税の納付時期と延滞金・督促にまとめています。

猶予が取り消されるケース

猶予を受けたあとでも、次のような場合は取り消され、残りを一括で徴収されることがあります(地方税法15条の3)。

  • 認められた分割納付の期限までに納めなかった(やむを得ない理由がある場合を除く)
  • 新たに別の地方税を滞納した
  • 偽りその他不正な手段で申請していたことが判明した
  • 財産の状況の変化で、猶予を続けるのが適当でなくなった

分割納付が苦しくなったときは、期限を過ぎる前に窓口へ連絡してください。猶予の全体像は、国税を中心にした納税の猶予と換価の猶予も参考になります。

次に知りたいこと

公式一次情報

よくある質問

個人事業税を払えないときは、どうすればよいですか?
納税通知書を用意して、所管の県税事務所(東京都は都税事務所)へ早めに相談します。要件に当てはまれば、地方税法15条の徴収猶予か15条の6の換価の猶予を申請できます。
徴収猶予と換価の猶予は、何が違いますか?
徴収猶予は、災害・病気・事業の廃止や休止・著しい損失などの事実があるときの制度です。換価の猶予は、滞納になった税金について、事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがあるときに財産の売却を待ってもらう制度です。
猶予はいつまでに申請しますか?
換価の猶予は、東京都が納期限から3か月以内、岐阜県が6か月以内と、自治体で違います。お住まいの都道府県の案内で確認してください。
猶予の間、延滞金はかかりますか?
かかりますが軽減されます。災害・病気などの徴収猶予では全額が免除されます。事業の廃止などの徴収猶予と換価の猶予では一部が免除され、東京都の令和8年の例では年1.3%分を納めます。
8月分を猶予してもらえば、11月分も自動で猶予されますか?
されません。東京都の換価の猶予の案内では、個人事業税のように年に複数の納期限がある税は、納期限ごとに申請が必要です。
本記事について。専門家監修前の概説です。2026年10月23日時点の地方税法と、東京都・岐阜県の公開情報にもとづく一般的な案内で、個別の税務判断に代わるものではありません。実際の申請は、所管の県税事務所または税理士へご確認ください。