本則課税の消費税申告書の書き方(個人事業者)
簡易課税を選んでいない個人事業者が、消費税の確定申告で提出する様式と記入順、控除対象仕入税額の計算方法を整理します。国税庁の「令和7年分 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き 個人事業者用(一般用)」の設例で、免税事業者からの仕入れの80%控除を含む数字の流れを確認できます。
消費税の申告本則課税の申告書は、売上にかかる消費税額から、課税仕入れにかかった消費税額を差し引いて納付額を出します。簡易課税の申告書に比べて、仕入れ側の集計が必要です。
この記事では、提出する様式、記入の順序、控除対象仕入税額の3つの計算方法を説明します。簡易課税の場合は簡易課税の申告書の書き方を見てください。
提出する様式と記入順
簡易課税制度を適用しない場合に提出する様式は、次の3種類です。標準税率7.8%と軽減税率6.24%の取引だけを行った場合の様式で、旧税率の取引がある場合は付表1-1、1-2、2-1、2-2を使います。
| 様式 | 役割 |
|---|---|
| 確定申告書 第一表(一般用)・第二表 | 納付税額・還付税額と課税標準額を記入する |
| 付表1-3 | 税率別の消費税額と、地方消費税の課税標準となる消費税額を計算する |
| 付表2-3 | 課税売上割合と、控除対象仕入税額を計算する |
第一表の⑧欄に控除不足還付税額がある還付申告では、「消費税の還付申告に関する明細書(個人事業者用)」も提出します。
手引きの記入順は、付表2-3、付表1-3、第二表、第一表の順です。付表1-3の控除対象仕入税額の欄に、付表2-3の結果を転記するため、先に付表2-3を書きます。計算の補助表(課税取引金額計算表、課税売上高計算表、課税仕入高計算表)は、申告書には添付しません。
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売上側の税額の計算
税率ごとの課税売上高(税込み)を、100/108または100/110で税抜きにし、1,000円未満を切り捨てた額が課税標準額です(付表1-3の①)。この額に6.24%または7.8%を掛けて、課税標準額に対する消費税額を出します(付表1-3の②)。
手引きには、インボイスに記載した消費税額等の合計額に78/100を掛ける積上げ計算の方法もあります。売上側を積上げ計算にした場合、仕入側を割戻し計算にすることはできません。仕入側で割戻し計算と積上げ計算を併用することもできません。
控除対象仕入税額の計算
付表2-3では、課税仕入高(税込み)に6.24/108または7.8/110を掛けて、課税仕入れに係る消費税額を出します(⑩)。これに課税貨物の税額などを加減したものが、課税仕入れ等の税額の合計額(⑰)です。
| 条件 | 控除対象仕入税額 |
|---|---|
| 課税売上高が5億円以下で、課税売上割合が95%以上 | ⑰を全額控除する |
| 5億円超、または課税売上割合が95%未満(個別対応方式) | 課税売上げにのみ要するもの+共通して要するもの×課税売上割合 |
| 同上(一括比例配分方式) | ⑰×課税売上割合 |
課税売上割合は、付表2-3の④(課税資産の譲渡等の対価の額)を⑦(資産の譲渡等の対価の額)で割って求めます。一括比例配分方式は、2年間以上続けて適用した後でなければ、個別対応方式に変更できません。割合の詳しい考え方は課税売上割合の記事にあります。
仕入れを3つに分ける基準は個別対応方式の課税仕入れの区分です。
差引税額(付表1-3の⑨)は、課税標準額に対する消費税額に貸倒回収に係る消費税額を足し、控除税額小計を引いて、100円未満を切り捨てた額です。マイナスになると⑧控除不足還付税額になります。地方消費税の譲渡割額は、差引税額に22/78を掛け、100円未満を切り捨てます。
免税事業者からの仕入れの80%控除
手引きによると、インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れは原則として控除できませんが、経過措置として仕入税額相当額の一定割合を控除できます。令和5年10月1日から令和8年9月30日までは80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは50%です。
適用には、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存と、帳簿への適用の旨などの記載が必要です。
付表2-3では、⑪に支払対価の額(税込み)、⑫に控除する税額を記入します。⑨の支払対価の額には経過措置の分を含めません。経過措置の分は、標準税率7.8%のB欄とC欄にのみ記入します。
経過措置の割合は、令和8年10月から変わります。移行の詳細は免税事業者からの仕入れの経過措置の記事で確認できます。
国税庁の設例で数字を追う
設例は、令和6年分まで免税事業者で、令和7年分から課税事業者になった物品販売業です。課税売上は22,380,000円(軽減13,110,000円、標準9,270,000円)に、車両売却280,000円(標準税率)を加えて、標準税率分は9,550,000円になります。売上側・仕入側とも割戻し計算です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 課税標準額 | 20,819,000円(軽減12,138,000円・標準8,681,000円) |
| 課税標準額に対する消費税額 | 1,434,529円(軽減757,411円・標準677,118円) |
| 課税仕入れに係る消費税額(軽減・標準) | 504,746円・545,290円 |
| 経過措置(外注工賃1,650,000円の80%) | 93,600円 |
| 棚卸資産の調整額(免税時代の期首棚卸高1,741,000円) | 123,452円 |
| 控除対象仕入税額(課税売上割合98.3%のため全額) | 1,267,088円 |
差引税額は、1,434,529円から1,267,088円を引いた167,441円で、100円未満を切り捨てて167,400円です。地方消費税の譲渡割額は167,400円に22/78を掛けた47,215円から、47,200円になります。合計の納付税額は167,400円と47,200円を足した214,600円です。
設例では、課税事業者になる前に仕入れた期首商品棚卸高1,741,000円の消費税分(7.8/110)も、仕入税額に加える調整の対象になっています。免税事業者から課税事業者になった年に、見落としやすい点です。
申告書と請求書で端数の扱いが違う点は消費税の端数計算(千円・1円・100円未満の切捨てとインボイスの端数処理)で整理しています。
公式一次情報
- 国税庁 令和7年分 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き 個人事業者用(一般用)(2026-10-16確認)
- 同手引き(PDF)(2026-10-16確認)
まとめ
本則課税の申告書は、第一表・第二表、付表1-3、付表2-3で構成され、付表2-3、付表1-3、第二表、第一表の順に記入します。課税売上割合が95%以上で課税売上高が5億円以下なら仕入税額を全額控除し、それ以外は個別対応方式か一括比例配分方式で計算します。
次に知りたいことは、本則課税の納付額の計算、消費税の確定申告の期限、消費税の中間納付の記事で確認できます。
よくある質問
- 本則課税の申告書は、どの様式を提出しますか?
- 標準税率7.8%と軽減税率6.24%の取引だけの場合は、確定申告書の第一表(一般用)と第二表、付表1-3、付表2-3を提出します。還付申告では、還付申告に関する明細書も提出します。
- どの順番で記入しますか?
- 国税庁の手引きは、付表2-3、付表1-3、第二表、第一表の順に進めます。付表1-3が付表2-3の結果を使うためです。
- 仕入れの消費税は全額引けますか?
- 課税売上高が5億円以下で課税売上割合が95%以上なら、課税仕入れ等の税額を全額控除します。それ以外は個別対応方式か一括比例配分方式で計算します。
- 免税事業者からの仕入れはどう扱いますか?
- 令和8年9月30日までの課税仕入れは仕入税額相当額の80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは50%を控除できる経過措置があります。請求書等の保存と帳簿への記載が必要です。

