ネット物販・ECを法人化する目安|消費税・輸出免税・在庫の引継ぎ
ネット通販や越境ECを個人で続けるか、法人にするかを決めるときに見るポイントを整理します。消費税の免税が切れる条件、輸出取引の免税、在庫と資金の引継ぎ、特定商取引法の事業者表示を、国税庁と消費者庁の資料で確認した範囲で説明します。
法人化(法人成り)ネット物販は、売上が伸びるほど仕入と在庫に資金が固定され、消費税の扱いも変わります。法人化の目安は利益の額だけでなく、消費税の課税事業者になる時期、輸出の有無、在庫の移し方の3つで変わります。
この記事は、物販ならではの確認点を整理します。法人化全体の損得は法人成りのガイド、古物の許可が要る中古品の転売は古物商許可の記事で扱います。
消費税が免除されなくなる条件
消費税は、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務が免除されます。基準期間は、個人事業者ならその年の前々年、事業年度が1年の法人なら前々事業年度です(国税庁タックスアンサー6501)。
次の場合は、基準期間の売上が1,000万円以下でも免除されません。
- 適格請求書発行事業者(インボイスの登録事業者)になっている。
- 特定期間(個人は前年の1月1日から6月30日まで、法人は原則として前事業年度開始の日以後6か月)の課税売上高が1,000万円を超える。給与等支払額の合計額で判定することもできます。
- 課税事業者選択届出書を出している。
新しく設立した法人は、1期目と2期目に基準期間がないため、原則として免除されます。ただし事業年度の開始の日の資本金が1,000万円以上の場合や、特定新規設立法人に当たる場合は免除されません(タックスアンサー6531)。
法人にしたあとの免税の見込みは、資本金、インボイス登録の有無、特定期間の売上で決まります。詳しい判定は法人成りと消費税の免税の記事と、インボイスと法人成りの記事で確認してください。
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越境ECの輸出取引は免税
海外の購入者へ商品を輸出して売る取引は、課税事業者が行えば消費税が免除されます。一方で、その商品の仕入や、輸出に必要な事務用品、広告宣伝費などに含まれる消費税は、申告で仕入税額控除ができます(タックスアンサー6551)。
輸出免税を受けるには、輸出許可書や、郵便で送った場合の引受けを証する書類など、輸出した事実を示す書類を7年間保存する必要があります。郵便物で資産価額が20万円以下の場合の書類は、小包やEMS、通常郵便物で分かれています。
輸出が売上の中心なのに免税事業者のままだと、この仕入税額控除は使えません。課税事業者になるかどうかは、法人化とは別に、課税事業者選択の届出という方法もあります。外貨建ての売上の換算や、海外サービスの仕入の扱いは海外取引の消費税の記事にまとめています。
在庫と仕入資金の引継ぎ
個人から法人へ事業を移すと、手元の在庫、仕入先との取引、事業用の口座を会社の名義に移す作業が出ます。在庫を会社へ移す方法(売買・現物出資など)と、移したときの消費税・所得税の扱いは個人事業から法人への資産引継ぎの記事で説明しています。
資産を移すときの対価は、合理的な時価で設定するのが基本です。時価より著しく高い対価で会社に買い取らせると、差額が税務上の問題になることがあります(上の記事)。移す日の在庫は棚卸をして、数量と金額の記録を残してください。
物販は仕入が売上より先に出るため、法人設立の直後は手元資金が薄くなりがちです。資本金を在庫の仕入に使い切らず、設立費用や社会保険料の支払いも含めた資金繰りで考えます。
特定商取引法の事業者表示
通信販売の広告には、事業者の氏名(名称)、住所、電話番号などを表示する必要があります。法人が電子情報処理組織を利用して広告をする場合は、代表者か通信販売に関する業務の責任者の氏名も表示します(消費者庁の案内)。
法人化すると、販売サイトの表示は個人の氏名から法人の名称に変わります。自分のECサイトの表示は自分で直せますが、出店しているモールの店舗情報や名義の変更手続きは、モールごとの規約で決まるため、各モールの案内で確認してください。
法人化を考える順番
- 事業所得として帳簿をつけているかを確認する。区分の考え方は事業所得と雑所得の記事。
- 課税売上高が1,000万円に近づいているかを、前々年と前年の1月から6月で確認する。
- 輸出が多いなら、課税事業者になった場合の仕入税額控除の見込みを出す。
- 利益と役員報酬で、個人と法人の手取りを比べる。当サイトの法人成りシミュレーターが使えます。
- 在庫・口座・サイト表示・モールの名義を、移す順番と日付で決める。
次に知りたいこと
法人成りと消費税の免税:設立1期目・2期目の判定
資産引継ぎ:在庫・備品を会社へ移す方法
古物商許可の法人成り:中古品を扱う場合
クラウドファンディングの消費税と収入計上時期:購入型で商品を先売りする場合
まとめ
- 消費税は基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら原則免除。インボイス登録や特定期間の売上で外れる。
- 新設法人は資本金1,000万円未満なら1期目・2期目は原則免除。
- 輸出取引は免税で、仕入の消費税は控除できる。書類は7年保存。
- 在庫は合理的な時価で移し、移す日の棚卸の記録を残す。
- 法人化後は特定商取引法の表示を法人名に直す。モールの名義変更は規約で確認する。
公式一次情報
- 国税庁 タックスアンサー No.6501 納税義務の免除
- 国税庁 タックスアンサー No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき
- 国税庁 タックスアンサー No.6551 輸出取引の免税
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「通信販売」
よくある質問
- ネット物販で売上が1,000万円を超えたら法人にすべきですか?
- 売上が1,000万円を超えることだけでは決まりません。消費税は基準期間(個人は前々年)の課税売上高で判定され、法人にしても資本金やインボイス登録の有無で免税かどうかが変わります(出典:国税庁)。
- 法人を設立すると消費税は最初から払いますか?
- 資本金1,000万円未満で、インボイスの登録をせず、特定期間の売上も1,000万円以下なら、1期目と2期目は原則として免除です(出典:国税庁)。
- 海外向けに売ると消費税はどうなりますか?
- 課税事業者が行う輸出取引は免税で、仕入などに含まれる消費税は申告で控除できます。輸出した事実を示す書類は7年間保存します(出典:国税庁)。
- 法人にすると、ECサイトの表示は変わりますか?
- 通信販売の広告には事業者の氏名(名称)、住所、電話番号を表示するため、法人化後は法人の名称に直します(出典:消費者庁)。
- モールの店舗を個人から法人へ変えられますか?
- モールごとの規約で決まります。この記事では確認できていないため、出店先の案内で確認してください。
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