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役員賞与にも社会保険料がかかる|標準賞与額の上限と賞与支払届

役員賞与を支給すると、健康保険・厚生年金保険の保険料がかかります。標準賞与額の計算方法と上限、賞与支払届の提出期限を整理します。

日本年金機構の制度
編集:個人事業主のお金ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

役員賞与は、法人税の損金算入だけでなく、社会保険(健康保険・厚生年金)の対象にもなります。賞与を支給すると、その都度「標準賞与額」を計算して保険料が発生し、事業主は支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出しなければなりません。

毎月の役員報酬にかかる標準報酬月額とは別の仕組みで、上限額や届出のタイミングも異なります。日本年金機構の一次資料にもとづき整理します。

標準賞与額とは(1,000円未満切り捨て)

日本年金機構は、実際に支払われた賞与額(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」とし、これに健康保険・厚生年金保険の保険料率をかけた額が保険料になるとしています。保険料は事業主と被保険者が折半で負担します。

「被保険者賞与支払届」の対象になる賞与は、賃金・給料・俸給・手当・賞与など名称を問わず、労働の対償として年3回以下の支給のものです(結婚祝金等、労働の対償とみなされないものは対象外)。厚生労働省は、法人から労務の対償として報酬を受ける代表者・業務執行者(役員)は「法人に使用される者」として健康保険・厚生年金保険の被保険者になるとしており、役員に対する賞与もこの対象に含まれます。

賞与支払届は支給日から5日以内

事業主が被保険者(役員を含む)や70歳以上被用者へ賞与を支給した場合、支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」により支給額等を届け出るとされています。届出用紙は、日本年金機構に登録済みの賞与支払予定月の前月に、氏名・生年月日等を印字したものが事業所へ送付されます。

賞与支払予定月に賞与を支給しなかった場合は、賞与支払届に代えて「賞与不支給報告書」を提出します。登録された賞与支払予定月の翌月までに届出がないと、翌々月に催告状が送付されます。

標準賞与額の上限(健康保険573万円・厚生年金150万円)

標準賞与額には上限があります。健康保険は年度(4月1日から翌年3月31日まで)の累計額573万円、厚生年金保険は1か月あたり150万円が上限で、同月内に2回以上支給されるときは合算した額に上限額が適用されます。

年度をまたぐ累計に注意:健康保険の573万円は、同一の保険者(協会けんぽや健康保険組合)での被保険者期間中の累計です。累計が573万円を超える月は、573万円に達するようその月の標準賞与額が調整され、その翌月以降に支払う賞与の標準賞与額は0円と決定されます。同一の被保険者期間が継続している通常のケースでは、この調整は届出なしで自動的に行われます。

年度内に転職・転籍等で被保険者資格の得喪があった場合や、育児休業等の保険料免除期間・資格喪失月に支払われた賞与を累計に含める必要がある場合は、被保険者からの申し出にもとづき「標準賞与額累計申出書」の提出が必要です。役員本人の産前産後休業・育児休業で保険料免除の対象になるかは、役員の産休・育休と社会保険料免除の記事で整理しています。

厚生年金保険は健康保険と異なり、年度累計の上限はなく、1か月あたり150万円が上限です。設備投資などで一時的に高額な役員賞与を検討する場合は、健康保険と厚生年金で上限の計算単位(年度累計か月単位か)が異なる点に注意します。

年4回以上支給すると標準報酬月額の対象になる

「被保険者賞与支払届」の対象は、年3回以下の支給のものに限られ、年4回以上支給される賞与は標準報酬月額(毎月の給与と合算した報酬)の対象になります。この場合は算定基礎届・月額変更届の枠組みで扱われ、賞与支払届は提出しません。

毎月の役員報酬の標準報酬月額そのものの決め方・見直し方は、算定基礎届・月額変更届の記事で解説しています。

事前確定届出給与(法人税)との違い

役員賞与を法人の経費(損金)にできるかどうかは、法人税法上の事前確定届出給与のルールで判定します。これは、あらかじめ税務署へ届け出た時期・金額どおりに支給した役員賞与を損金算入できる制度で、ここで扱う社会保険料の仕組みとは根拠法令・提出先・期限が異なります。

事前確定届出給与の届出をしていても、社会保険上の賞与支払届は別途、支給日から5日以内に日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)へ提出する必要があります。損金算入の要件・届出期限は事前確定届出給与とは|役員賞与を経費にする届出の書き方・提出期限で解説しています。従業員への賞与を期末後に払う場合の損金算入は決算賞与の3要件が別の話です。

配偶者を含む役員が「使用人兼務役員」に該当する場合、使用人としての職務に対する賞与は事前確定届出給与を使わずに経費にできます。該当要件は使用人兼務役員の判定で解説しています。

まとめ

  • 役員賞与も、実際の支給額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率をかけて健康保険・厚生年金の保険料がかかる。
  • 賞与を支給したら、支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出する。
  • 標準賞与額の上限は、健康保険が年度累計573万円、厚生年金保険が1か月あたり150万円(同月2回以上支給は合算)。
  • 年4回以上支給する賞与は標準報酬月額の対象になり、賞与支払届は不要。
  • 法人税法上の事前確定届出給与(損金算入の要件)とは別の手続きで、両方の届出が必要になる場合がある。

役員報酬の水準そのものの決め方は役員報酬比較シミュレーターで試算できます。社会保険料全体の目安は社会保険料シミュレーターも参照してください。

公式一次情報

よくある質問

役員賞与にも社会保険料はかかりますか?
かかります。実際に支給した賞与額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に健康保険・厚生年金保険の保険料率をかけた額が保険料になり、事業主と被保険者(役員)が折半で負担します(出典:日本年金機構)。
賞与支払届はいつまでに提出しますか?
賞与の支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出します(出典:日本年金機構)。
標準賞与額に上限はありますか?
健康保険は年度(4月1日から翌年3月31日まで)の累計額573万円、厚生年金保険は1か月あたり150万円が上限です。同月内に2回以上支給する場合は合算した額に上限が適用されます(出典:日本年金機構)。
年4回以上賞与を支給する場合はどうなりますか?
年4回以上支給される賞与は、標準賞与額ではなく標準報酬月額(毎月の給与と合算した報酬)の対象になり、賞与支払届は提出しません(出典:日本年金機構)。
事前確定届出給与を届け出ていれば、賞与支払届は不要ですか?
不要にはなりません。事前確定届出給与は役員賞与を法人税の損金にできるかどうかの制度で、社会保険上の賞与支払届(支給日から5日以内)は別途提出が必要です。
本記事について。税理士・社会保険労務士監修前の概説です。制度・上限額は改正される場合があります。個別の判断は年金事務所または専門家へご確認ください。